観客賞スポットライト 室内合唱部門 最終回




同声合唱部門へ出場の香川・monossoさんがこんな連続ツイートをされています。


 

いらすとやを駆使した最高すぎるライブ配信のプロモーション(笑)。
地元が岡山な私も、思わず配信で聴いてしまいそうです。

 

 

 

 

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美星天文台 ©岡山県観光連盟

 


室内合唱部門の最終回。
今回は3団体をご紹介します。


最初は北海道から女声合唱団の登場です。






8.北海道・北海道支部代表

ウィスティリア アンサンブル

https://twitter.com/wisteria_japan

(女声10名・4大会連続の出場・第60回大会から11度目の出場)


藤岡直美先生が指導された枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの合同団体。
今年で結成21年目、以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名でした。

2002年全国大会の演奏は素晴らしく。
「珠玉のハーモニーVol.7」にも選ばれ、私も関連して

 

合唱界のアイドル 枝幸ジュニア合唱団 

という記事を書いております。

 


一昨年出場時には瑞慶覧尚子先生の「なんと なんと なんしょ」から演奏。

 


リズミカルな箇所との歌い分けも良かったです!

曲の良さを捉えた演奏で、遊びっぽい感じも加えてね。

合唱作品としての聴き応えがありながら元の題材の楽しさ、面白さを感じさせる演奏でした。

 

……という感想がありました。


今回の演奏曲は
課題曲F1 O sacrum convivium(Tomas Luis de Victoria 曲)
自由曲は「Medicamina sempiterna(永遠の美容法)」より
「De Facie formosa(1.美しい顔について)」
「De arte faciem colorandi(2.化粧の仕方について)」
「De pulchritudine sempiterna(4.永遠の美しさについて)」
作曲:Petr Eben

チェコの作曲家:ペトル・エベン作曲、ユーモアを感じさせる美容法のテキスト。
美貌は毎日のケアあってこその「1.美しい顔について」。
すっぴんを見せるのはそんなにダメ?!と思わせる「2.化粧の仕方について」。
でもやっぱり内面の美しさこそ重要だよね、な「4.永遠の美しさについて」の3曲。
テキストを読みながらニヤリ、そして軽妙、精巧なエベンの音楽に感心させられます。

一昨年の演奏では声の演技や楽しさがあったウィステリアさん。
今回の自由曲も作品の魅力を十分に伝えてくれることでしょう。

 

ウィスティリア アンサンブル指揮者:藤岡先生からメッセージをいただきました。(11/12付記)

 


今年のウィスティリアアンサンブルについて、お話しますと。

まず、メンバーの退団等で決して多くない団員数がさらに減少し、コンクールはどうかな…と思い、団員に尋ねました。
「無理しなくていいんだよ」の問いかけに「人数は減ったけど一生懸命練習して全国大会に行きたいです」と涙を流しながらの訴えに、もうここからどうしたらよいものか、本当に悩みました。
ただ、ウィスティリアはいつの時代も後輩となる中学生の面倒見もよく、聡明なメンバーの集まりだと私は自負しています。
何とかしなきゃと焦る日々の中、中学3年生担任の私は修学旅行引率と支部大会が重なりました。
指揮なしで若手メンバーを軸に本当によく頑張ったと思います。
大会当日、演奏後に「楽しく歌えました!」とメンバー全員の写メールを見て胸がいっぱいになりました。

今年のウィスティリアは、人数のこと、支部大会に私が不在だったこと、大切なお母さんが他界したメンバーもいます。
これでもか、という怒涛のようなコロナ禍を味わいました。
しかし、それでも元気に歌えること、岡山県で歌えること、ずっと見守ってくれている人たちがいること、応援し続けてもらえること、感謝の気持ちを忘れずに頑張ります。
少人数での全国大会の舞台ですが一生懸命歌います。
皆様どうぞよろしくお願いいたします。

藤岡直美

 

藤岡先生、ありがとうございました。
自分も札幌出身なので、コロナ禍で札幌で合唱活動を続けるのがどんなに困難なことか、少し聞いております。
(昨年出場の北海道大学合唱団が出場辞退というのは象徴的です)

困難の中、それでも歌いたいと思い続ける力はどこから湧き出るのか。
この岡山での全国大会、一番少人数かもしれないウィスティリアさんの演奏を聴いて、それを知りたい。

ウィスティリアさんの「一生懸命」をしっかり受け止められるように、聴きたいと思います。






続いて、先日中学高校の全国大会があった大分県から初出場の団体です。

 



9.大分県・九州支部代表

マトリカリアコール

https://twitter.com/matricaria_chor

(混声18名・初出場



初出場おめでとうございます!
マトリカリア?どういう意味なんだろう?

指揮者のおひとり、新見準平先生からメッセージをいただきました。

 


2021年1月に結成し、大分県ヴォーカルアンサンブルフェスティバルにて大賞を受賞した後。
大分には若い人で合唱を盛り上げよう!という風潮がなく、中学、高校と合唱をやっていた若い人たちが歌う場所もなく散り散りになってしまうことを歯痒く感じておりました。
それにコロナ禍も相まって大学のサークル合唱も風前の灯、なんとかしなくては!と、このような「若い人」の合唱団を作ることになりました。

マトリカリアは花の名前で「集う喜び」という花言葉があります。
コロナ禍にあって、大分の若い人たちがいつでも集まれる合唱の母船のような場所でありたいと考えています。
団員にはウォーミングアップや発声について任せることがあります。
いろんなやり方や価値観を共有できて、将来合唱指揮や指導のノウハウを身につけてほしいと考えているからです。

正直、私たちは今回ビビっております。
初出場、全国っていうのは珍しいことかもしれません。

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マトリカリアカモミール。
小さな花が集まっています。


なるほど、若い人たちの合唱を育て、盛り上げるための団体。
結成したばかりの団体が初出場で全国大会は確かに珍しいです。

マトリカリアコールさんの演奏曲は
課題曲G2 O salutaris  Hostia(Gioachino  Rossini 曲)
自由曲:「ゆめみる」(「季節へのまなざし」より)(伊藤海彦 詩、荻久保和明 作曲)

おー! 荻久保先生の初期作品であり、代表作!
作曲から40年以上経ってもコンクールだけではなく、歌われる機会が多い人気曲ですが、マトリカリアコールさんのような比較的少人数ではあまり歌われないような?

 


自由曲選曲の理由
とても稀なケースのようですが、我が団には指揮者が二人います。
私(新見)とピアニストの後藤秀樹氏です。

今回コンクール出場にあたっては、自由曲に若いエネルギーと後藤氏のピアニストとしてのエネルギーが良い化学反応を起こせる作品を演奏したいという思いがありました。
そこでこの「ゆめみる」は二人の意見が一致、というどころか二人ともこの作品を思い描いていたのです。

九州支部コンクールの講評には「この人数(14名で歌唱)の演奏とは思えません」と書かれていましたが、確かにこの人数で演奏することはあまりない作品だと思います。
この作品の音楽のエネルギーは私たちに一人一人の力量を問うています。
故に声のブレンドや抑えて合わせる合唱という感じではなく、一人一人が圧倒的なエネルギーを持ってこの作品を一生懸命歌ってる…そんな演奏になったらと思います。

私(新見)はこの曲の

  みえないことで みえてくる世界
  夢みるために
  みえないでいる世界

というフレーズが好きです。
昨年からみえないものに怯える日々の中で、目にみえない音楽を通して私たちは繋がっている、ということをこの作品を通して感じるのです。
大分から飛び出てきた向こう見ずな合唱団ではありますが、合唱を愛する合唱人の最高の舞台で歌えること、聴いていただけることに大きな喜びを感じています。
やはり、正直、ビビっていますが…

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全国大会出場が決定し、驚いているマトリカリアコールさん?!



新見先生ありがとうございました。
後藤先生の指揮とピアノは、大分市民合唱団ウイステリア・コールさんの演奏で何度も体験しております。

メッセージを読みながら、指揮者だけではなく声楽家としてもご活躍である新見先生の「現役音楽家としてのエネルギー」をビンビン感じますね。
ピアニスト:後藤先生との化学反応、そして若い団員さんとの化学反応。

未来を見据えた音楽家と若い人たちの「ゆめみる」が、私たちにどんな化学反応を与えてくれるのか。
生まれたばかりで全国大会まで進んだ、マトリカリアさんの圧倒的なエネルギーが楽しみです!


 




室内合唱部門、最後の団体です。
おなじく九州から、揺るぎない実力と人気の女声合唱団!

 




10.佐賀県・九州支部代表

女声合唱団ソレイユ
https://www.facebook.com/soleilsaga/

(女声24名・15大会連続出場・第59回大会から15回目の出場)


一昨年も最後の出場だったソレイユさん。 

 

 

声楽的に余裕があり、課題曲「飛翔―白鷺」は言葉の良いニュアンスがあった。

自由曲「Prayer Before Birth」(MACONCHY, Elizabeth)は難易度が高い現代曲だが表現力の高さと説得力が凄かった。

「When Daisies Pied」(J.Rutter)ではリズム取って踊るわ、広がってフォーメーションを作るわ(笑)。
タイプが全然違う3曲だったから、ひとつの演奏会みたいでした!

 

 

……という感想がありました。
一昨年で7年連続文部科学大臣賞受賞(1位)ということから
「10年目には審査対象から外れて『ソレイユオンステージ』をやってもらった方が良いんじゃ?」なんて声も(笑)。


ソレイユさん、今回の演奏曲は
課題曲F3 夜来香(「花の四季」から)(江間章子 詩 池辺晋一郎 曲)
自由曲「Sinu aknal tuvid (窓辺の鳩)」(Gustav Ernesaks 曲)
「Ⅴ.Gisvres-Conti(ジーブル埠頭)」( [Cinq Refrains(5つのリフレイン) op.132]から」)(Florent SCHMITT 曲)

エストニアの作曲家らしい透明感がある1曲目。
そしてもはやお得意となったシュミット作品。

ソレイユ団員さんからメッセージをいただきました。

 


私たち女声合唱団ソレイユは、今年の4月4日に一年延期していたコンサートを無事に開催することができました。
また、姉妹合唱団佐賀女子高校合唱部との2枚目のCD『Au Soleil』も発売しています。

 

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まだ購入可能ですのでよろしければポチッとお願いします(笑)。

自由曲1曲目、エストニアの音楽の父エルネサクスの『窓辺の鳩』は、国状に苦しみながらも平和を祈り続ける作品に心を打たれ、選曲しました。
曲の後半の6声からなるハーモニーは、その美しさに感動します。
合唱でしかできない表現ができればと思います。

2曲目シュミットの『ジーブル埠頭』は、フランスのセーヌ川近辺の景観を歌っており、混沌とした時代に振り回されながらも自然は変わらず美しくあり続けるということを、繊細かつダイナミックに、そしておしゃれに歌い上げられたらと思います。

2年ぶりのコンクール、出場してみんなで歌い合えるだけでも夢のようです。
感謝しながら楽しんで歌います! 

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佐賀県合唱コンクールの写真とのこと。

 

 

 

団員さん、ありがとうございました。

課題曲の「夜来香」ももちろんソレイユさんならではの表現力が楽しみ。

自由曲「窓辺の鳩」の詩を読ませていただいたんですが「あなたの窓辺の鳩は、長い間待っていた」と始まり、微笑みを待つ窓辺の花や窓辺の雪、そして通り過ぎるしかない自分……。
詩は「抑圧された厳しい状況の中で愛しい人を待ち侘びる気持ち」だそうですが、エストニアの悲しい歴史も重ねてしまい。
エルネサクスの葬儀でも演奏されたというこの作品、ソレイユさんの「合唱でしかできない表現」を期待しています。

ピアノが入る「ジーブル埠頭」はきっとソレイユさんの真骨頂を発揮。
セーヌ川の他にもスタンダール、ヴィクトル・ユーゴー、アブサン…等、フランスの作家や芸術家、酒の名前を並べていて面白い。

一聴すると演奏時の難しさを考えてしまいますが、それでもソレイユさんならおしゃれにフランスを香らせていただけるでしょう!




(室内合唱部門のご紹介は今回で終了です。
 明日の同声合唱部門に続きます)