北房コスモス広場 ©岡山県観光連盟
混声合唱部門、前半の5団体が演奏終了後の15:37から休憩。
約20分の休憩後、16時から後半の団体の演奏開始です。
一般部門で最大人数の団体が登場!
6.大阪府・関西支部代表
淀川混声合唱団
https://twitter.com/yodokon
(66名・4年ぶりの出場・57回大会以来12回目の出場)
淀川混声合唱団、通称「よどこん」さん。
室内合唱部門に出場のアンサンブルVine指揮者:伊東恵司さんが指揮をされます。
4年前の感想では
課題曲「子どもは……」はサウンドがとても美しい。
自由曲Ingvar Lidholm
「De profundis(深き淵より)」
構成とその要素が優れているなあ。
音量とバランスそしてクラスターも
がっちりハマっていましたね。
これだけの大人数でもまったく破綻せず
綻びが無い、凄いです・・・。
……という感想がありました。
淀川混声合唱団さんの今回の演奏曲は
課題曲G3 うたをうたうのはわすれても(「うたをうたうのはわすれても」から)(岸田衿子 詩、津田 元 曲)
自由曲:「Cloudburst(雷雨)」(Eric Whitacre 曲)
淀川混声合唱団団員の村田さんからメッセージをいただきました。
こんにちは。
「よどこん」こと淀川混声合唱団です。
望外にもしばらくぶりに全国大会の舞台に立つことができることとなり、団員一同意気が上がっております。
昨年はコンクールや演奏会等がことごとく中止、延期となる中、オンラインと会場とのハイブリッド練習を早期に取り入れ、歌う機会を失っている学生等の受け皿になるなど、団としての活力の“充電”に努めておりました。
そして今年は不安定な情勢の中なんとか演奏会を開催し『東海道四谷怪談』(混声版)をはじめとした個性豊かな作品たちを歌い上げることができました。
そのことが今回の結果に繋がったのではないかと思います。
オンライン練習!
歌う機会を失っている学生等の受け皿になるなど、オンライン練習を前向きに捉えられているのがとても良いですね。
よどこんさんは関西発の新しい合唱イベント「Osaka Chorus MICE」にも京都大学音楽研究会ハイマート合唱団さんと合同で出演もされていました。
課題曲『うたをうたうのはわすれても』は詩も曲も実にエモーショナルで、筆者も個人的に大変気に入っています。
コロナ禍の下、ともすれば「うたをうたうのをわすれ」そうになる日々の中で、この歌は大きな心の支えとなりました。
合唱における日本語の扱いに定評がある指揮者伊東と、老若男女ありとあらゆるバックグランドを持つ団員たちとが、この素晴らしい“素材”に如何に向き合い“料理”したのか、是非ご一聴いただきたく存じます。
自由曲『Cloudburst』は他の団体による名演も既に数多く、よどこんにとっては非常に大きなチャレンジとなる選曲でした。
E.Whitacre作品の多くに共通する魅力である色彩感豊かな和音の移ろい、シンプルでありながら劇的な変化を見せる楽曲構成などの要素をこの曲も存分に含んでおり、歌い手として日々楽しく練習に取り組んでおります。
また、実演を目にする機会が極めて稀少な楽器の1つ、サンダーシートが大暴れするというのも見どころかと思います。
岡山シンフォニーホールという素晴らしい舞台で、天から降り注ぐエネルギーが生命力の発露たる大驟雨となり、そして再び天へと帰っていく大いなる循環のさまを余すところなく表現できるよう、団員一同、最後まで磨き上げてまいります。
関西合唱コンクール後とのこと
村田さん、ありがとうございました。
「Cloudburst」は村田さんが語られるように名演も多く、全国大会でも例えば、室内合唱部門へ出場の混声合唱団Pangeさんも過去に演奏されていたり。
それでも希少なサンダーシート、楽器以外でも口や手を鳴らすことで表わす雨音、大自然のスペクタルは実演に接すると心を動かされます。
構成の巧みさに定評がある伊東さん、高い技術のよどこんさんなら
>天から降り注ぐエネルギーが生命力の発露たる大驟雨となり、そして再び天へと帰っていく大いなる循環のさま
見事に表現し尽くしていただけることでしょう。
続いて聞き手を成長させる?!東北の合唱団です。
7.宮城県・東北支部代表
グリーン・ウッド・ハーモニー
https://twitter.com/gwharmony
(43名・22大会連続出場・第2回大会以来38回目の出場)
自由曲に海外の現代音楽を選ぶことが多く、その度に聴く側が「今回はわかる!」「俺たち成長したのかも?!」などという声が上がるグリーン・ウッド・ハーモニー(GWH)さん。
一昨年の感想では
自由曲:Paul Hindemith「Messe」より「Kyrie」
「12 Madrigals」より「Kraft fand zu Form」
「Lieder nach alten Texten(古い詩文による歌)」
良かったですね。
発声が純度を増してキレイになった気が。
曲の輪郭が前よりずっとわかるようになりましたよね。
「音楽としてどんなふうに面白くできるか?」
作曲の狙いを演奏者がちゃんと掬っている。
GWHはヒンデミットがとても良かったです。
音の硬軟や鋭さで表現に勢いとメリハリが感じられ、
作品の面白さが伝わってくる演奏でした。
……という感想がありました。
指揮者はコンサートマスターの渡辺まゆみ先生。
グリーン・ウッド・ハーモニーさんの今回の演奏曲は
課題曲G1 Ehre sei dir, Christe(「Die Matthäus-Passion」から)(Heinrich Schütz 曲)
自由曲:「Palmsonntagmorgen(枝の主日)」
「Der Mensch lebt und bestehet(人の生きる時は短く)」(Max Reger 曲)
団員の瀬成田さんからメッセージをいただきました。
今年、全国大会に出ることができたこと大変うれしく思っています。
今回初めてグリーン・ウッドの団員として全国大会に出場する団員が大学生から定年後の団員まで9人もおり特に嬉しいことです。
いつもは練習後にご飯をしたり、芋煮会をしたり、飲み会をしたり、合宿でもまさに密になって活動していたのですが、今は純粋に音楽だけでも繋がれることに感謝しています。
課題曲はシュッツです。
ドイツの30年戦争で音楽活動の休止を余儀なくされていたシュッツがその再開後に作った作品と学びました。
そのような厳しい環境で生まれた曲ですから、こんな時にふさわしい曲と考えて歌います。
自由曲「枝の主日」は、聖週間の初日、3月から4月の春の朝の光景とイエスの到来が重ねられています。
前半は調性が浮遊し、半音階を複雑に多用することにより朝のもやや、すみれの花が次第に咲く谷の様子、イエスがエルサレムの城門に入る様子などが表現されています。
後半はフーガ形式となりイエスの入城を褒め称えます。
2曲目の「人の生きる時は短く」は、レーガーが客死した際にその楽譜が枕元にあったと言われています。
人の一生は短いが主は永遠であるという内容について、後半が長調となり、主の永遠を表すために全てのパートの歌詞が一致するコラール形式で締めくくっています。
以上のことは今井邦男先生を講師として開催されたGWHオンライン講座で学んだことからご紹介しました。
レーガーについては北條加奈先生からもその中で貴重なご講演を頂きました。
今回は参加できない団員も多く、42名での参加となりますが精一杯演奏いたします。
宮城県大会出演前の風景とのこと
瀬成田さん、ありがとうございました。
自由曲は混声合唱部門の一番初めに出場のESTさんと同じMax Regerなんですね。
「Palmsonntagmorgen(枝の主日)」、書かれるように「調性が浮遊し、半音階を複雑に多用すること」から難解な作品に思われるかもしれませんが、聴くと実に美しい作品。
後半の5声の旋律が主張するフーガは優美かつ華麗、同時に「歌うの大変だろうな~」と思ってしまいます。
2曲目の「Der Mensch lebt und bestehet(人の生きる時は短く)」は重々しく「人間はわずかな時間しか生きられない」と繰り返した後、長調での旋律が救いと感じられます。
格調高く、壮麗な美を感じさせる作品。
現代作品では無く、ロマン派作品のことから、尖ったGWHさんを期待した人にはもしかしたら物足りないのでは?
いえいえ、得意なのは現代作品だけでは無く、過去に課題曲G1での名演も数多く残されているGWHさん。
2009年にはRegerの「Abendlied」を演奏し、とても素晴らしかった記憶があります。
きっと観客の期待を裏切らない、良い演奏になることでしょう。
続いては毎回インパクト抜群の演奏をされるこちらの団体です。
8.東京支部・東京都代表
CANTUS ANIMAE
https://twitter.com/cantus_animae
(45名・10大会連続出場・第52回大会以来17回目の出場)
観客賞では毎回上位の常連のCANTUS ANIMAE(通称:CA)さん。
一昨年の感想では
課題曲G4「雪」は
雨森先生、CAのみなさんの創造性が
出ていた演奏だったと思います。
高校一般含めて、1番すきな演奏でした。
降り積もって行く雪の自然さとその空気が醸し出されてました。
自由曲:三善晃「歌集 田園に死す」
これこそCAの真骨頂!
「あなたたちのためにある曲なんじゃないか?」
そんな風に聞こえました、本当に。
三善はただの楽曲に止まらない寺山ワールドがそこにあった
……という感想がありました。
選曲も毎回注目の団体なのですが、今年も凄い曲らしいですよ?
CA団員のさやぽんさんからメッセージをいただきました。
皆さまこんにちは、CANTUS ANIMAEです。
音楽を愛する者にとっての忍耐の時を過ごし、こうしてまた全国の皆さまの前で演奏させていただけますこと、そして他団との接点が例年より制限される中このような発信の場を与えていただきましたこと、深く感謝申し上げます。
全国的に演奏の機会が少しずつ復活してきた今年5月、私たちは「信長貴富作品展 生誕五十年碑」と銘打ち、信長貴富先生の50歳のお誕生日を祝う演奏会を開催いたしました。
その際に委嘱を依頼し初演されたのが、今回の自由曲「異界の門」です。
テキストは宮沢賢治の詩や短歌からの抜粋をコラージュする形となり、その中心になるのが「疾中」中の代表的な詩[丁丁丁丁丁]。
熱にうなされる賢治が生死を彷徨う中で生まれた世界が、コロナウイルスによって死というものが他人事ではないと皆が気付かされた現代とシンクロします。
高熱に苦しみ、異界を目にした賢治が最後にたどり着くものは、希望なのか、絶望なのか。
目まぐるしく変化していく信長×賢治ワールドに浸っていただけましたら幸いです。
演奏会では照明と字幕を取り入れることにより、さらに象徴的な、合唱も素材の一部となった総合芸術的な舞台となりました。
それを今回は音と自身の存在のみでお伝えするということで、また新たな「異界の門」をご案内できることと思います。
「異界の門」に合わせる課題曲には、G2のロッシーニ「O salutaris Hostia」を選びました。
練習の中では、ロッシーニがこの旋律を流用したという歌曲にも触れ、これまでこの作品に抱いていたイメージとはまた違った魅力を見出すことができました。
サービス精神に溢れ軽妙洒脱なロッシーニらしさと、10代から70代までの幅広い年齢から生まれるシンフォニックな音響をお届けします。
なお、今回は短縮版、照明や字幕もなしで演奏いたします「異界の門」ですが、来年6月には信長先生の個展第2弾での再演が決まっております。
前述の総合芸術としての「異界の門」を体験しに、ぜひご来場ください。
さやぽんさん、ありがとうございました。
言及されている「信長貴富作品展生誕50年碑」、6月に配信で聴かせていただきました。
なんと4年ほど前から委嘱され、完成したのが今年の2月だとか。
CAさん側から「2台のピアノで」という委嘱条件があり、「コロナ禍の世界で何を表わすべきかと考え、宮沢賢治を選んだ」そう。
書かれているように照明とスクリーンへの文字投影、歌というよりも言葉を次々に発する箇所など、何度視聴しても圧倒されるばかり。
今回の宮沢賢治のテキストの提示は、作品に近づくためかなり役立つと感じます。
「疾中」は青空文庫で読めますね。
疾(やまい)いま革(あらた)まり来て
わが額に死の気配あり
コロナウイルスによって世界が死に覆われているイメージ。
そのイメージの中には異なる世界の門を開いたあと、決して戻れない世界への視点や、変わってしまった自分自身があるかもしれません。
信長先生は被爆2世であることを公言され、それゆえマイノリティーや戦争に対し、ずっと作品で関わってきた方でもあります。
今回高知大学合唱団も演奏する、主に戦争を扱ったテキストに作曲した「廃墟から」について、こう記しています。
「私の作曲は身勝手な行為かも知れないが、しかしそれでもやはり逃れられずにいるのは、生き続けるために問い続けなければならないと思うからである。」
http://www.shigekinishioka.com/chorus/2008/in_the_ruins_nobunaga.html
戦争で決して避けて通れない「死」というもの。
私たちがコロナウイルスによって直面している「死」と宮沢賢治の「死」。
>異界を目にした賢治が最後にたどり着くものは、希望なのか、絶望なのか。
信長貴富という作曲家が現状を見据え、「生き続けるために問い続けなければならない」作曲行為として出された作品。
4年という年月を待ち、満を持して演奏されるCAさん。
見逃せないステージになることは間違いありません。
(明日に続きます)