観客賞スポットライト 大学ユース部門 その1

 

 

今年で4回目となる「観客賞スポットライト」というこの企画。


観客賞とは…?

7年前から当ブログで始めた観客賞。
各部門の、全団体を聴かれた方の投票で決定する賞です。

この観客賞の意義を説明しますと。
音楽のプロフェッショナルたる審査員による順位、賞の決定は、それぞれ真剣に誠実に演奏へ向かわれ出された結果であり、尊重すべきだと思います。

しかし、
「傷はあったが凄く良かった!」
「コンクールに向いてない選曲はわかるけど涙があふれた!」
…などという声を多く聞いていた自分は、
「観客による投票を行ったら 演奏への新しい価値観が生まれるのではないか?」と考えました。

さらに「この団体が銅賞だったから私は投票する!」…のような判官贔屓を無くすため、投票は審査結果前に締め切っています。

この観客賞に関連付ける形で、団体にスポットライトを当て、ご紹介するのがこの「観客賞スポットライト」という企画です。

 



それでは始めましょう!
今年の全国大会は京都。
ロームシアター京都コンサートホールにて11月23日、24日に行われます。


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ぴかーどさん撮影。



今年も合唱倉庫さんから全国大会へ何回出場されたかというデータをお借りしております。
http://choral.nusutto.jp/
毎回ありがとうございます!

 

 

 1日目、11月23日土曜日。

 

 

(※入場券は売り切れ、当日券のみだそうです)


10:00開場で10:30からオープニング。
最初の部は大学ユース部門10団体。
トップバッターは、南の明るい声を持つこの団体です!

 



1.福岡県・九州支部代表

九大混声合唱団


(混声86名・4年連続出場・第40回大会から18回目の出場)


昨年、課題曲のシューベルトには「音楽の構えが大きくて良い意味でガチガチと固まっておらず、好感」という感想が。
自由曲の千原英喜「Agnus Dei=空海・真言・絶唱」ではダイナミクスの幅広さにソリスト、楽器との壮大な音響に感銘を受けました。

さて九大混声さん、今年の演奏曲は?
団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

こんにちは、九大混声合唱団です。
昨年、私達は北海道で行われた全国大会に出場し、銅賞をいただくことができました。
今年度も、先日行われた九州大会にて全国大会への出場権をいただくことができ、九州の代表としてさらに高みを目指し練習に励んでいるところです。

今年度は、コンクール課題曲としてG3「蜂が一ぴき」(宮沢賢治作詩 林光作曲)、そして自由曲としては、信長貴富先生に委嘱を依頼し書いていただいた、”混声合唱のための「あめ・樹木」(山田今次作詞)を演奏させていただきます。

“私達の世界に潤いを与え恵みをもたらす雨。
その空間全てのものを平等に、時には無慈悲に、うち濡らす。
掘建て小屋が立ち並ぶ、戦後の焼け野原にも、雨は強く降り注ぐ。立ちすくむ大きな樹木を見上げ、彼らは何を思うのか。”

自由曲では、絶え間なく打ち付ける雨を表現した山田今次氏の独特な詩のリズムと、激しく変化するその表情を、豊かに表現します。
今回このような貴重な機会をいただき、これらの曲を全国大会で演奏できるということに感謝しながら、先生が曲を通して社会へ映し出す想いを伝えられるよう、またお客様一人一人に詩の独特な世界観を楽しんでいただけるような演奏を目指していきたいと思います。

 

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熊本で行われた九州大会の写真ということ。



ありがとうございました。
自由曲に信長貴富先生の委嘱作品!
山田今次氏の詩も送っていただいたのですが、ひらがなで書かれ、打ち付ける烈しい雨のリズムを感じさせる「あめ」から、荒れる自然へ対抗する自身を樹木に喩えた「樹木」という2つの詩。
いったい信長先生はどんな音楽を書かれたのか。
そして九大混声さんはどんな演奏をしてくれるのか?

人気作曲家の新しい作品が朝イチで聴けるというこの大会の始まり。
自分たちの曲という誇りと想いの強さが九大さんの演奏をさらに輝かせますように。

みなさん、遅刻は厳禁ですよ!


 

 


続いて3年ぶりに出場の、端正な演奏をされるこの団体です。





2.福島県・東北支部代表


福島大学混声合唱団
https://twitter.com/fukukon41

(混声28名・3年ぶりの出場・第55回大会より15回目の出場)


3年前はモンテヴェルディのポリフォニー的な掛け合いや男声の上手さ、自由曲のラインベルガーの丁寧さが印象に残っている福島大さん。
基礎力が高い印象があるのは、やはり「合唱王国福島」だからでは?などと考えてしまいます。
団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

こんにちは!福島大学混声合唱団です。
福混は現在団員35名で活動しており、そのうち出場メンバーは28名になります。

福混では例年、課題曲にG1を選択しています。
今年もそれにならい……というわけではありませんが、団員の意思によりG1のVictoria「Ave Maria」を選択しました。
ルネサンス時代の著名な曲ですが、だからこその難しさがあるように思えます。
この時代の音楽への造詣が深い常任指揮者の伊藤勲先生と私たちの世界観を融合させ、ルネサンスポリフォニーの美しい祈りの響きを表現したいと思います。

 



そして自由曲。
福島大さんは3年前はラインベルガー、それ以前はプーランクなど海外作品を演奏されていたのですが、今年は違うようです。
今年はなんと谷川俊太郎詩、三善晃作曲「五つの願い」より「3.願い 一少女のプラカード」「4.若さのイメージ」「5.空に小鳥がいなくなった日」!
なぜ、この選曲になったのでしょう?

 

 

自由曲は2年前の東北大会で鶴岡土曜会さんの「五つの願い」に感銘を受けた団員による提案により選曲されました。
谷川先生による非常にメッセージ性が強く考えさせられるテキストを、三善先生による音楽に乗せていかに表現するかということを団員全員で考えてきました。
委嘱された「混声合唱団 ローレル・エコー」さんは大人の合唱団ですが、私たち大学生という若い世代でこの音楽を表現するということは非常に意義があることだと考えます。
谷川先生と三善先生が感じ生み出したものを自分たちなりに表現し、皆様の心にも響くような演奏をしたいと思います。

 



おお! 2年前の鶴岡土曜会さんの演奏はとても好評でした。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/31/144324
鶴岡土曜会さんは「1.春だから」「2.子どもは……」「3.願い 一少女のプラカード」という選曲だったので、「願い 一少女のプラカード」が重なる、大人から福島大の若者たちへのリレーという捉え方もできそうです。

 

 

 

今年度はコンクール曲へかける時間は例年と比べるとそれほど多くはありませんでした。
その分一回一回の練習の時間を大切にし、悲願である全国の舞台へ戻ってくることができました。
しかし、出場メンバーは前回からほぼ入れ替わり、活動の主体となる1~3年生は福混での全国大会出場は全員初めてとなります。
初心にかえり、新たな気持ちで本番に臨みたいと思います。
ここまで活動を続けてこられたこと、全国大会という素晴らしい舞台で歌えることに感謝しつつ、しっかりと楽しみ、最高の演奏を皆様にお届けいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

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東北大会の閉会式後の写真ということ。



数年でメンバーがほぼ入れ替わる学生合唱団。
そして団員さんが選ばれた、福島大さんでは初めて聴く邦人作品の名曲。
演奏側も、聴く側も、新鮮な気持ちで音楽に向かうステージになりそうです。
新生・福島大さんの演奏に大きく期待します!


 




(明日に続きます)