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「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2013」(その6)

 

 

 

さて、今日は2団体をご紹介します。

それぞれの力のこもった、真摯な文章を

是非お読み下さい。

 

 

 

 

8.栃木県・関東支部代表


ルックスエテルナ
(混声20名・第65回大会から2年連続2回目の出場)



課題曲はG1

Victoria作曲「O magnum mysterium」
自由曲はG.Dufay作曲
"Missa L'homme arme"よりGloria


昨年もDufayを選曲されたルックスエテルナ。
この時代の楽曲を専門にしている団体らしく、
今年の自由曲もDufayです。


山本 昨年は残念ながら聴けてない団体なんやけど
   ハーモニー誌の全国大会座談会でとても評価が高かったね。


そうそう! 審査員の指揮者:三澤洋史先生が
ご自身のブログで絶賛されていましたよ。
最高点を付けられたそうで。
http://cafemdr.org/RunRun-Dairy/2012-3/MDR-Diary-20121126.html


山本 Dufayなどの時代になると
   旋律の模倣じゃないよね。
   各パートが散文的に動いたものが重なって
   立派な音楽になっているようなもんやんか?
   こういう曲を演奏するには相当習熟せんとアカン。
   積み重ねあってこその演奏だと思うよ。
   Dufayが最後に課題曲に選ばれたのも
   13年前だしね、貴重だよね。


さて、指揮者の内田等さんに選曲の理由をお訊きしました。

 


自由曲は今年もDufayの音楽を選曲しました。
Dufayは、皆川先生がいくつかの著書でも書かれているように、
彼以前の時代の音楽を集大成させた上、
独創的で広大な新世界を産み出した巨人です。
われわれアマチュアがDufayの曲を演奏するのは、
とっつきにくいし、解釈が難しいし、
それ以前に出版楽譜を探すことすら困難です。
そんなDufayの音楽を、下手の横好き集団であるわれわれが
楽しく演奏している姿を見て感じ取っていただき、
ぜひたくさんの方々に共感していただきたいと思っています。

Dufayの音楽は、ゆったりとして平明な音楽が続いたかと思ったら、
いきなり飛び跳ねるようなシンコペーション部分があらわれ、
時には2倍速・4倍速のパッセージが現れ、
かと思ったらまたのんびりした部分に突入したりと、
聴く人を飽きさせません。
またこの時代の特徴でもありますが、
パートによってリズムが異なる
(たとえば、現代風に言うと、あるパートは2拍子を歌っているのに
 別のパートは3拍子を歌うと言った)部分もあって、
そういう部分は、何か空間がゆがんだような錯覚に陥ります。

Dufayを演奏しているときにいつも感じる四字熟語は「温故知新」。
それほど興味を持っていない方にも、
「古い時代の音楽かと思っていたら斬新じゃん?」と
思っていただけたら嬉しいですね!

 

 

 

山本 うん、個人的な考えだけど
   Dufayを聴いていると現代音楽に近いような気がするね。
   重なることを予定していないような重なりを作ろうとしている。
   チャンス・オペレーション的な
   重なりを想像させると言うか。

   この音が来て、次に5度で入って、また5度で入ってくる…
   みたいな人間の期待感にはめて納得させるんじゃなく、
   フワフワ~と表れてくるようなものを音楽にしているような。
   リズムのあえて合わせないところや、
   トーンもクリアでモノトーンな感じが

   現代音楽っぽく聴こえるなあ。
   だから内田先生の「温故知新」、わかる気がする!

 


15世紀の作曲家の音楽に現代音楽を連想したり、

斬新さを感じられるとは面白いですよね。

そしてこの全国大会に対する意気込みがありましたら…には

 

 

今年度から「室内合唱の部」が新しく創設されました。
われわれはこれまで、
少人数アンサンブルにこだわって活動してきましたが、
このジャンルが創設されたことはまさに、
「我が意を得たり」といった気持ちです。
聴衆の皆さんに「これぞ室内合唱!」と
言ってもらえるような演奏ができるよう、
しっかりと準備して臨みたいと思います。

 

 

 

その他、聴く人に伝えたいことがありましたら、という質問に

内田さんから真摯に答えていただきました。

みなさん、是非ともお読みください。

 

 

私たちが2000年にはじめてコンクールに参戦したときは、
県大会で銅賞でした。
翌年、なんとか県を抜けて
はじめて支部大会(関東大会)に出場したときは最下位でした。
その翌年はまた、県大会で銅賞。
そんな私たちですが、志を高く持ち、
もっといい音楽を演奏したいと努力を続けることができたのは、
コンクールにチャレンジし続けてきたからだと思います。

コンクールに参戦しているけれど、
なかなか結果が出せない団体の方々へ。
コンクールは賛否両論ありますし、
結果が出せないとモチベーションも低下するものですが、
ぜひ勇気を持って継続してください。
必ず、少しずつ力がついていくはずです。
力がつくと、もっとたくさんの音楽にチャレンジできるようになりますし、
演奏活動もより意味のあるものになっていくと思うんです。
つい10年ほど前までは、県を抜けるかどうかすら危うかった
私たちの演奏を聴いていただき、勇気を持っていただけたら幸いです。

 

 



山本 これは間違いのない言葉やね。
   …合唱団ってさ、人間と一緒やから
   生まれた時は赤ちゃんなのよ、歩けない。
   そのうち、もぞもぞしてるのが
   2本足で立って歩けるようになる。
   自転車だって何回もコケながら乗れるようになる。
   でも、コケるのが嫌で乗らないんだったら
   一生乗れないままの人生。
   チャレンジせん者には技術は習得できないということやね。

   文吾くんはルックスエテルナさんの演奏聴いたんだよね。
   どうやった?


ルックスエテルナさんの演奏…。
やっぱりそのジャンルが本当に好きで、
ずっと歌い続けてきたことは力を持つな、と思いました。


山本 「ひたむき」なんや。


「ひたむき」…そうですね。
あの時、聴いていたら不思議に涙があふれたのも
その「ひたむき」さに打たれたからかも知れません。


山本 それは演奏曲、つまり宗教曲としての音楽が
   本来持っている祈りに通じているのかもね。
   だけど、団員さんが心酔し切っているものが
   聴けるというのは凄いことだよ。
   なんかさ、気まぐれに入った喫茶店のマスターが
   ジャズがメチャメチャ好きでこだわりがあってさ。
   「これもいいんだよ!これもいいんだよ!」って勧めてくれて。
   俺、ジャズ聴いたことないんやけど、
   でも、ジャズって凄いかも・・・なんて思ってしまう。
   そういう出会いがあるかもね。
   ルックスエテルナさんが作ってくれる
   「出会い」があるかもしれない。


ああ、良い言葉ですね。
ひたむきに、その音楽にこだわり続けた人たちだけが
聴く人へ渡すことができる「出会い」。

 

 

 

 

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ルックスエテルナさんの演奏で
「Dufayに出会える」かもしれませんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





9.京都府・関西支部代表

アンサンブルVine
(混声24名・2年連続出場・57回大会以来9回目の出場)

(※上の団名リンクは伊東さんのHP

「~目をひらく 耳をすます つぶやく~」内のものです)

 


課題曲はG1

Victoria作曲「O magnum mysterium」
自由曲はJaakko Mäntyjärvi作曲
「Herr Olof」(ウーロフと人魚)
David Azurza作曲「Ave Virgo Sanctissima」

(めでたし、いとも聖なる乙女)
Josu Elberdin作曲「Segalariak」

 

 

指揮者の伊東恵司さんからのメッセージです。

 

コンクールに「ユーモアとリラックスを」ということが、

常にアンサンブル VINEのコンクール出場の目的です。

技術至高の選曲ではありません。

それぞれに表情の異なる3つの小さな曲を

演奏会のようにセンス良く

歌い分けられたら良いなあと思っています。

 

 

 

…とのことです。楽しみですねえ。



山本 今回のVineはどういう選曲なの?


自由曲の「Herr Olof」(ウーロフと人魚)は
2006年にもVineが演奏した
軽やかなリズムとメロディの繰り返しが楽しい曲。
そして1968年生まれのスペインの作曲家、
David Azurzaの「Ave Virgo Sanctissima」
現代的な響きと美しい旋律が印象的な宗教曲。
「Segalariak」、通称「セガラリ」は
今大変人気のある曲で
バスク地方の伝統的な牧草刈りがモチーフ。
リズムに乗った民族音楽風のとても愉快な曲ですね。


山本 ということは今年も「Vineの世界」やね~。


そうですね! 


山本 こういうVine独自の演奏スタイルというものも   
   室内合唱のひとつの形として
   ありだと思うんだよね!
   指揮者の伊東恵司さんならではの切り口と言うか、
   合唱をわかりやすく噛み砕いて
   ちゃんと聴衆にアピールする。

   やっぱり伊東さんはそういうところを
   制する力が凄いね。


Vineのモットーとして上でも伊東さんが語られている言葉は
コンクールに「ユーモアとリラックスを」。
知人にVineの感想を尋ねると

・やっぱり「自由」な感じがしていいなあ〜。
・私たち、ああなりたいっていつも思うんです!
・聴いてても、見てても楽しい。
・上質のヴァラエティ・ショーを観ているような・・・。

なんて言葉が出てくる稀有な団体です。
今年の「Vineの世界」、もちろん私も楽しみたいと思います!

 

 

 

 

さて、Vineの紹介文とは別に

日本の合唱コンクール、合唱界について

伊東さんから力のこもったご提言をお送りいただいております。

是非ともお読みいただき、

考えるきっかけにしていただきたいと思います。

 

 

 

私個人としては、幸運にして

この15年間全国大会に出続けておりますが、

コンクールは好きではありません。

それでも出続けてきたのは、コンクールに背を向けるのではなく、

出続ける中で常にコンクールに対する提言をしやすいように

ということでもありました。

意気込みではなく意見があります。

 

例えば、今回のカテゴリー改定が、

誰にとって有利になったり不利になったりしたか

というような問題は意味が薄く、問い詰めるものでもないと思います。

むしろ、その先にどんなビジョンを持って改革をしたのか、

ということを問いたいと思うのです。

大学カルチャーではなく

ユースの合唱団を育てたいという意思があってのことなのか、

女声、男声という合唱団のカテゴリーを

日本音楽シーンの中で位置付けをどのように考えていきたいのか、

…そういうことが語られなければなりません。

例えば、ユースというカテゴリーを開発していくためには、

教会や地域ごとの取り組みではなく、

学校教育や大学カルチャーに依拠してきた日本の合唱活動に対して、

Jリーグ初期のような抜本的改革を

伴わなければならなかったのではないでしょうか。

また、一般と室内について、人数だけで区分けし、

課題曲も同一であるならば、

カテゴリーを分けた意味合いを確認するために

審査ポイントをどのように捉えるかという見解が示されたでしょうか?


批判や文句を言うつもりはありません。

参加者も組織の一員なのですから、今回のルール変更については、

ともに考えていくべきポイントが多数あると思います。

なんでも一長一短あるものですから、

デメリットをことさら強調する必要はないと思うのですが、

私としては何より連盟組織として、

コンクールをすることの意義や、

ルール改正の意図とその先のビジョンが

示されなければならないのではないかと思うのです。

ちなみに、私は、ゲームとしてのルール改正には

特段の興味はありません。

それよりも、各地で見られる中高校のコンクールにおける

連盟とNHKコンクールとの逆転現象について、

小学校での合唱の取り組みについて、

地域による合唱指導者の不足について、

教育行政と合唱連盟の関係性について、等が気になります。


全国大会のレベルばかり見ていると

何の遜色も問題点も考えられないことですが、

出場枠数や結果に一喜一憂して気を取られているうちに

最も大切な音楽の方向性を見失ったり、

裾野の広がり等に目配りすることを忘れないようにしたいものです。

→陰でこそこそした批判などはいたしません。

私の考えは10年前から表明しております。 http://www.yumemirusakananoabuku.jp/chorus/suggestion/21century.html

私は、たくさん議論し合唱の場を

よりよいものにしていきたいと思っているのですがね。


※この場を借りて、一つ宣伝をさせていただきます。

年末に毎年300人もの大学生を全国から集め、

ためになる指揮者指導者合宿(大阪:12月 29-30)を行っているのです

(随分浸透してきてくれました)。
次年度からは、その取組からスピンアウトする形で発想し、

指揮者協会の主催で合宿型の「大学生コンペティション」を開催します。

大学カルチャーを信じ、 そこを活性化させるための

楽しい取組にするつもりです。


学生指揮者限定にすることで

合唱連盟の「大学・ユース部門」とは差別化が図られるでしょう。

大学生たちが大学のプライドをかけて

知恵と工夫の結晶としての取り組みを見せてくれること、

戦うのではなくともに学び分かち合い

仲良くなってくれることを意図しています。

そして、(審査員を工夫しているのですが)、

何といっても大学生にとっての合唱活動が

就職活動に有利になるというような

アピール場面を作っていきたいと思うのです。

合唱活動は、全員がレギュラーであり、

各自がばらばらに持っているバックグラウンドや

個性を言葉による コミュニケーションを通して

一つの方向に合わせ他者に対して表現していく芸術活動です。

社会人としての基礎素養につながるのは言うまでもないことなのです。

http://jcda-kansai-youth.jimdo.com/大学合唱コンベンション/

審査員は松下耕、清水敬一、千原英喜、伊東恵司、

某大手リース会社役員(合唱経験者)、

某大手食品関係者役員(合唱経験者)

発案者の一人としての私の究極的な狙いは、

「大学で合唱を頑張ってやっていることで

 就職活動が有利に働くこと」です。

発表はバーベキュー大会席上でと思っていましたが、

某食品会社の好意からカレー400食分をご寄付いただきますので、

「カレーパーティをしながら」という

楽しいコンクールにするつもりです!!

 

 

 

 

 

 

(明日に続きます)