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第29回宝塚国際室内合唱コンクール感想 その6


<近現代部門>
13団体が出場。


賞外で印象に残った団体は
TWILIGHT BELLS(大阪・9名)


ミシュキニスのGloriaと
レーガーのPalmsonntagmorgenを演奏。


もはやアイコンタクトすらいらない一体感!
呼吸だけでアンサンブルが開始され、
さらにテンポの緩急が自在で
切れ目のない音楽となって伝わってきます。
ただ、あれだけ歌えるなら楽譜を持たないほうがスマートかも?
かなり体を揺らしていたので
手の動きも解放した方が見た目はよろしいのでは。


長年、培った音楽がこのような演奏を生みだすのだなあ、と感心しきり。





合唱団senza Nome(新潟・13名)
仁階堂孝先生の指揮で
佐藤賢太郎(Ken-P)のKyrie、
パミントゥアンのPater nosterを演奏。


Ken-Pの心にスッと入る旋律を
柔らかな流れで演奏。
優しい空気に満ちあふれている!
特に男声の音色が良かったと思います。


難を言えば「響きの核」とでも言うようなものがあまり感じられず
それぞれのパートの響きが全体の響きとして
機能されないような印象になってしまったのが残念でした。


ただ、心地良い温泉に浸かるような演奏。
団員さんの視線は指揮者より上にあり、
それが高みを目指すこの合唱団の姿勢として

いかにも合っていたのです。




銅賞は2団体。
女声合唱団ALITO(岐阜・17名)は
平田誠先生の指揮で信長先生の
「万葉恋歌」を演奏。
・・・申し訳ありません。
よく練習を積んだ演奏というだけが記憶にあります。



銅賞もう1団体は
THEATRE EN VOIX(東京・16名)
2008年、都内の音楽大学で学ぶ、
声楽、ピアノ、作曲の各専攻生を中心に結成。
という初出場の団体。


う〜ん、この団体はいろいろと難しい!
期待しているのでちょっと厳しめな感想を書きますね。


指揮者がいない団体だったのですが
演奏曲はRavelのTrois Chansonsより"Ronde”を
男女男女男女と並び。
若々しく、良く練られた発声で過不足無い表現なものの、
リフレインを多用するこの曲では変化があまり感じられず
後半にはやや飽きを感じてしまうことに。
表現のヴァリエーションがもう少しあったら。


2曲目の鈴木輝昭「源氏幻奏」より「夕顔」では
女声と男声別に並びを変えて。
輝昭サウンドが立ち昇る!
また前述の練られた発声と確かな音程が
そのサウンドを引き立てます。
ただ、音色変化もあまり感じさせず、
「常に決まった良い発声だけ」を使っているという印象。
女声と男声の音量バランスや
1曲を通してのテンション調整などにも
やや疑問を感じてしまいました。


この団体で考えてしまったのは「指揮者なし」には
どういう利点があるのか、また短所はなにか?ということ。
個々人の自発的な表現や
指揮に頼らない細かなテンポ感、アンサンブルなどは
指揮者がいないことで得られる、または目標としたいところでしょう。
しかし、音量バランスやテンションの加減、
1曲の構成、統一された技巧的な表現は
指揮者の存在、少なくともある程度は歌い手から離れて
指導する人間が必要なのではないでしょうか。


そして今回演奏の2曲は、
そんな「指揮者の力」を必要とする曲だったのでは?


THEATRE EN VOIXで検索すると
過去の演奏会では指揮者を擁して演奏をしていたよう。
このコンクールでの内情はわかりませんが、
指揮者はいなくてもひょっとしたら
離れて指導する人がいたかもしれません。
そして今回はその人の
「音楽の外枠を作る力」が及ばなかったかもしれない…
などと想像してしまいました。


まあでもこんなことを考えるのは
このTHEATRE EN VOIXという団体の潜在能力が
間違いなく高いからです。


次回は指揮者なしの演奏でも「なるほど!」と
思わせるだけの演奏をしてくれると期待しています。




(つづきます)