MODOKI ☓ CANTUS ANIMAE joint concert in Tokyo感想 3

休憩の後、合同合唱のステージ。
岩谷時子詩、石井歓作曲
混声合唱「風紋」。
指揮は山本啓之さん。



舞台上手から女声が、下手から男声が現れ、
中央で合流するという入場は
この曲のテーマである「男女の出会い」を表現しているのか…
と思ったら単に時間節約のためだけとか!


さすがに80人ほどの人数がステージに並ぶと壮観。
第一章「風と砂丘」、山本さんが手を振り下ろすと
一音! その重さと強さ!
「風が来る」 「風が飛ぶ」


その響きはふたつの合唱団の演奏とは思えず、
全くひとつの合唱団の響きに聴こえて。


「風紋」という曲は4曲を通し
それほど劇的な変化がある作品では無い、と思う。
しかしこの演奏は長いフレーズにもリズムを内在させ、
さらに男女の出会い、想いの交錯というテーマを
言葉と歌でこれ以上無いほど表現する。


例えば男声の「私は百万本の手をあげてひた走る」の旋律が強い決意を。
例えば女声の「ああ闇のなかで」の後の休符が吐息と間違うほどに。



シンプルな作品故に合唱団、指揮者の地力が現れる。
第2章「あなたは風」で軽快なリズムと言葉を密接なものにし、
第3章「おやすみ砂丘」では歌はたっぷりと
優しく柔らかく眠りへ誘う。
曲ごとの性格をくっきり細部まで表現するその演奏は
「おやすみ砂丘」の眠りの余韻が耳に染み込んだと同時にアタッカで
最終章の「風紋」へ。
始まりの「風と砂丘」を思い返させながら
結末にふさわしく一層の熱さを伴い、力強く、前に迫ってくる!



4章を通し、風の男を待つ砂丘の女、一瞬の逢瀬と別離。
そしてまた繰り返される出会い・・・というドラマを
緊張感を保ち、
思慕、会えない淋しさ、出会った刹那の甘さ、別離の悲哀。
生きているものの間によぎる様々な感情を
説得力あるものとして演奏で描く名演奏だった。


客席を見回しても歌詞が書かれているプログラムに
目を落とす人がほとんどいない。
身じろぎせずにステージのドラマに集中している。
その様子が、この演奏の質を証明していた。



入場は上手と下手、男女が別々だったのが
退場では出会った男女がひとつになり去っていく。
勝手な思い込みなのだが、
これも曲の性格を表現した心憎い演出と思ってしまった。



(続きます)