合唱団訪問記:雨森文也先生へのインタビュー最終回

 

 

合唱団訪問記の再掲。

最終回はCAの未来、委嘱活動について。


(文豪の部屋HP掲載時 2002.7.17)



合唱団訪問記の続きは
文豪の部屋HP内の「訪問記」から
http://alpin.lolipop.jp/
松下耕先生が指揮者の
「Brilliant Harmony訪問記」をどうぞ。

(公開日2003.2.10)

 

 

 

 

 

合唱団訪問記 

 

第27話

 

 

 

千年後も残るもの

 

 


 

「合唱団訪問記」

 

 『雨森先生へのインタビュー』

 

その7(最終話)

 



<合唱団の“個性”として>



雨森先生「CANTUS ANIMAEはこれまで
     4回演奏会を開いているんだけど。

     1回はルネサンス・バロックの曲だけ、とか
     あるいは近現代の合唱曲だけ、
     そして邦人作品だけ、とかね。

     こういうプログラム構成は
     アマチュアの合唱団では、あまり考えないよね」

文吾  「考えないですねえ~」

雨森先生「アマチュアの演奏会だったら、やっぱり

     『あれもこれも!
      お客さんが楽しんでくれるようなステージも!!』

     …とかさ!
     そういう枠で考えるじゃないか。まず最初に。
     “形” から入るだろ?
     『4ステージ構成』…とか。
     ・・・それはイヤだったから。

     だから
     『自分たちが何をやりたいのか』

            …という方向から入った。

     『これをやりたいんだったら、
      まずこの曲をやって、
      そして、これだけの演奏会を!』

     …それだけでも、やった価値はあると思うよ。

     アマチュアで、そういうテーマを掲げて
     連続シリーズで演奏会をしている所は、
     多分無いと思うから」

文吾  「無いでしょうね・・・」

おやびん 「…不思議な合唱団だねえ」
さん

文吾  「(笑) 不思議ですね」

I さん 「私はあのプログラミングに興味をひかれて
    入団しましたしね。
    2年間で『こういう事をする!』…という
    目標がプログラムに出ていたでしょう?」

雨森先生「I くんみたいな人は、
     CAがそういう合唱団な事を『分かって』
     入団してくれるわけだよね。

     『広く深くやっていくために』は
     その思いに賛同する人が、ぐっと固まらないと
     できないわけだから、絶対に!
     それもかなり熱い思いを抱いてね。

     ・・・やっぱり、そういう人を、
            言い方は悪いかもしれないけど
     『大事』にしたいなあ」

文吾  「『合唱団の方針』に同意する人、と言うか・・・」

雨森先生「うん。
     合唱団は星の数ほどあるわけで
     自分に合った合唱団を探せば良いわけだから。

     大事なのは、
     “個性”…を持っていないとダメだと思うんだな。

     だから僕は“個性”を前面に打ち出して、
     それで団員が減るなら構わないと思っているから」

文吾  「うぅむ・・・」

雨森先生「…良くいるじゃないか。

     『人を集めなければいけないから
     できるだけ辞めない運営をするべきだ!』

     ・・・と言う人が。
     でも合唱団は会社じゃないんだからね(笑)」

文吾  (笑)。

miffyさん「(突然) 『運営』は、タイヘンなんです!」

一同  (苦笑)。

miffyさん「ものすごぉぉおく、大変なんですからっ!!」

雨森先生「や、まあそれは良く分かっているんだけど(苦笑)。

     でも運営のために、
     合唱団のポリシーを曲げるようになったら
     その合唱団は“個性”を持てなくなるな、多分。

     すべてが同じ色のような合唱団になってしまう。

     …だからイイんだよ!
     ひとつぐらい
     こんな “ヘン” な合唱団があっても!!」

文吾  「(笑)。CAみたいな合唱団が
     あったっていいじゃないか!…と(笑)」

雨森先生「うん(笑)」



 <CAのこれから、そして委嘱活動について>


文吾  「2年間に3回の演奏会を開いて。
     そして10月、

            韓国での『合唱オリンピック』の前に
     8月に演奏会がありますが。

     ・・・これがいままでの“集大成”、

            と言うことで?」

雨森先生「や、“集大成”…と言うほど、何も・・・。

    『集成』も『大成』も、
     全然してないからさあ(苦笑)」

一同  (苦笑)。

文吾  「とりあえず『広げた』と?(笑)」

Mariさん「『現状』 ですよ!(笑)」

雨森先生「そ。
    “現状”の枠の中では一番取り組みやすいから(笑)。

    今までやってきたことが、
    どれくらい世界の舞台で通用するか、
    まず見極めるのも悪くないな、と。

    例えば間宮先生の「コンポジション」とか
    三善先生の「五つの童画」や、武満先生の「風の馬」。

    ・・・これが、どう外国の人々に受け止められるのか。


    これからCAがやろうと思っている委嘱活動にしても。
    要は作品を生み出さないとアピールできないわけで。

    いくらCAがね、ヨーロッパのポリフォニーとか、
    ロマン派の音楽を、自分たちがいくら
    『スゴイ演奏をした!』…と思っていても。

    彼ら(ヨーロッパの人々)にしてみたら

    『あいつらはオレたちの音楽を

            猿マネしてるだけだ』…ってね。

    本場の音楽は絶対コッチだ!

         …というのがあるわけ(笑)」

文吾  (苦笑)。

雨森先生「例えばドイツの人にしてみたら
     ブラームスやベートーヴェンでも

     『日本人が良くやっているけれども。
      …でもやっぱりオレたちには敵わないな』

     って絶対言うに決まってるんだからね。

     それを乗り越えるなら、
          こちら側から新しい作品で。
      スタイルは西洋から来た和声や12音階を、
     一応、基礎にした所からスタートしているけれど。
     それに日本独自のものが加わった作品を
     日本の合唱団が演奏してこそ、
         初めてヨーロッパの人たちも。

     『オレたちの文化から出たものが
      こういう形で違うものに
           生まれ変わったんだなあ』…と。

     そこで初めて “文化” として、
          本気で受け入れてくれる。
     …と思うんだ」

文吾  「はい」

雨森先生「・・・そういう想いを自分たちに抱えていたら。
      作曲家に委嘱をする時も、
     『自分たちは、こういう曲が欲しい!』
     と、言えるわけじゃないか。

     本当は、そういう委嘱活動、と言うのは
     “プロフェッショナル”の領域なんだけれども。

     でもアマチュアの委嘱だとしても、
     作品に手を抜かない作曲家に委嘱をすれば良いんだから。

     作曲家がどんな作品を、
           器楽曲等も含めて過去に書いているか。
     どういう想いで作曲活動をしているか。
     どういうテキストに興味を持っているか、とかね。
      それを調べ、研究して。

     ・・・やっぱり “いい作品” を

            書いてもらおうと思ったら
     相手をちゃんと知った上で。

     『あなたのこういう所を自分たちは魅力に感じた』

     そして
     『あなたが現在、
              こういうテキストに興味を持っている事を知って、
      私たちもそれらのテキストを読み込んだ。
      ・・・それを踏まえた上で、こういうテキストで、
      こういうイメージの作品を書いて欲しい』…ってね。

     そこまでこちらが踏みこんだら、作曲家も
     そりゃ本気になってくれる、と思うんだよな。

     それが例えば
     『お金出すから、書いてくださ~い』
     ・・・だったら、

             その程度の作品しか書いてくれない、と思う」

文吾  「うぅむ・・・」

雨森先生「そう。
     せっかく書いて頂けるなら。
     言い方は悪いかもしれないけれど
     作曲家を “触発” したい。

     アマチュアでも、
     “作品を生み出すことに対して、

              ここまで真剣に思ってる”
     …と言う事を伝えたいんだな。

     例えばCANTUS ANIMAEの演奏は
     千年経ったら、絶対残らないけれども。

     CANTUS ANIMAEが

            働きかけて出来た文化、曲は
     千年後にも残るよ。
     ・・・それが、いい曲であれば。

     そういう作品に携われたら、
     そんな素晴らしいことはないよね。


     ・・・合唱活動をしていく上で、
     そういう “楽しみ” は持ち続けていきたいなあ・・・」

文吾  「はい。

     先生、今回は長い間、お話を聞かせて頂いて
     本当にありがとうございました!」



              (おわり)