雪の思い出


 岡山に降った雪は少し積もったと思ったらすぐ溶けてしまった。


 本州に来て10年ほどになるのだがそれでも
冬に雪が積もらない、という事に不思議を感じる。
 1月なのに普通に自転車に乗れるんだよ?不思議だなあ。




 「北海道の雪って凄いんでしょうね」と聞かれ
1日に膝までなんて余裕で積もるのだ、とか
朝に雪かきをしないと外に出られないのだ、とか
降る雪よりも除雪車が残す硬くて重い氷の塊が大変なのだ、とか
雪の大変さを説明して驚く顔に満足するのも慣れてきた。


 そして北国の雪を知らない人たちは、
道路脇に高く積み上げられた雪がどれほど音を吸い込むのとか、
夜に染まる前に、雪は白でも黒でもなく、ほの蒼く光ることとか、
野原に積もった雪に風が吹くと
表層の雪が吹き上がり砂漠の嵐のように見える、
…というのも知らない事実に改めて驚く。



 自分は札幌では1年を通し、7月が一番好きで、
帰省する時は必ずこの月に帰るようにして、
観光する人にもこの時期を薦めているのだけど、
もし、他の時期を挙げるとしたら真冬、
そう、今を薦める。


 そして薦め通り冬の札幌に着いて、雪が静かに降っている深夜。
 できれば一人で、街中ではなくちょっとした裏の路地を
歩いてみてほしい。


 新雪を踏みしめる感触を。
 コートに染みこまず滑り落ちる雪を。
 そして立ち止まり目を閉じ、耳をすましてほしい。


 ・・・雪の降る音を聴いてほしい。


 自分という存在の儚さと、
世界というものの広さを感じられるはずです。







 写真は「ヒロノブログ」から。