
- 作者: 平松剛
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/06/10
- メディア: 単行本
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面白かった!
少し筆が滑りすぎ、というかフザけ過ぎの箇所もあったけど
磯崎新という前衛?建築家が師匠:丹下健三ら名うての建築家や、
大手の建築設計事務所と東京都庁のコンペを戦う、
その戦略が事細かに、生き生きと描かれる。
そして磯崎新だけではなく、丹下健三ら
「建築家志望の青年が建築家になるまで」という本でもある。
ひとつの建築物が具体的な像として結ばれるまで
どれほど幅広く、深く、抽象的な概念を吸い上げ、咀嚼できるか。
その後「建築」として具体的な形で自分のものとして表せられるか。
このコンペで描かれる時代は1980年代なので
磯崎新の「都庁」の背景として
荒俣宏「帝都大戦」や大友克洋「童夢」・「AKIRA]
村上龍「コインロッカーベイビーズ」、フィリップ・K・ディックの小説群。
そして村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
(地下世界の「やみくろ」!)などにインスパイアされる姿も面白い。
この都庁コンペの結果は、皆さんご存知のとおり
磯崎新の師匠:丹下健三のものに決まったのだが
この本で描かれる説明、イメージ図などを見ると
(もちろんこの作者、平松氏のヒイキ目もあろうが)
「・・・磯崎氏の『都庁』、見たかったなあ・・・」という気になる。
内部の巨大空間。
谷崎の陰影礼賛、マジックアワー、コルビジュのロンシャンの教会・・・。
「闇を胚胎させるのだ」・・・磯崎氏の言葉。
壮大であやふやで抽象的なイメージを“建築”という
具体的でこれ以上無いほど現実なものへ結実させる
多種多様なプロフェッショナルな人々の姿にシビれました。
そして日本の建築家は海外でも高い評価を得ている人が多いこと。
(日本人には独創性が無い、なんて言ってるのは誰だ?!)
これからは建築家の狙いやイメージを想像し、
建造物を観る時の目が変わりそうです。
「なぜあのデザインを依頼主に納得させられるか分からない」
…とも言われる独創的な磯崎氏の建築物は、氏が大分出身であるため
大分に多いそうだけど、調べてみると岡山にもあった!
1997年に改築された現庁舎の設計者。ギリシャのパルテノン神殿を思わせるデザインが特徴であるが、そのぶんデッドスペースが多いため、完成直後は警察署として機能的かどうか賛否の議論が巻き起こった。
・・・今度、見に行ってきます(笑)