『ぼくはこうやって詩を書いてきた』


『ぼくはこうやって詩を書いてきた
谷川俊太郎、詩と人生を語る―』



長年の交友のある編集者:山田馨氏と
詩人:谷川俊太郎氏のいちばん最初の詩から
2009年の最新作まで、自作と人生を語る対談集。


かなりぶ厚い本だが、これはかなり興味深く、
なにより楽しく面白い本!
語られる詩は合唱人としても馴染み深いものが多く、
それについての背景や山田氏の率直な感想など、
吹き出してしまう箇所がいくつもある。


例えば詩集「はだか」での
「小学生のゲイ」と題された章の「きみ」という詩では

山田 「きみ」は佐野(洋子)さんのことだと思ったんですよ。


と驚愕する山田氏が面白かったり。
「女に」では佐野洋子さんの絵は挿絵ではなく
無関係に描かれた絵の中から谷川さんが選んだものとか、
谷川さんご自身の「女に」発表朗読会で
客席にいた佐野洋子さんが
(あまりに現実に即した内容だったため)
いたたまれなくなって途中で出てしまったエピソードとか
いちいち面白い!



あ。「シャガールと木の葉」で

谷川 うん、ぼくはね、シャガールって別にそんなに好きじゃないんだけどね。みんなこれを読むと「谷川さんはシャガールがお好きなんですねー」って言うの。


…などという発言も飛び出し、どうすればいいの(笑)。
「詩は嘘八百!(笑)」と谷川発言もあり、
作品と制作者を同一視することの危険性も
教授してくれる本です。



もちろんそれだけではなく、
自分の詩は言葉ではなく自然への観察から生まれたもの、
などという発言や
佐野さんによる批判の後、詩人として沈黙した数年間の後の変化など、
谷川俊太郎という偉大な詩人の作品、
それを生み出した人生との関わりを丁寧に記した本とも言えます。



慣れ親しんだ友人との会話ということで
かなりくだけた印象の対談なのですが
口当たりはやわらかくやさしくとも
谷川俊太郎さんのひらがなの詩と同じように
やはりその奥には非常な深さがある内容でした。



出版をしたナナロク社のHPで
「第2章 青春の詩」が丸々読めるので(太っ腹!)
http://www.nanarokusha.com/books/bokuha.html
是非とも開いてみて下さい。
「二十億光年の孤独」「かなしみ」「はる」「六十二のソネット」…
詩の解釈と、
詩が生み出された谷川さんの人生も興味深いですよ。



ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る

ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る