いま、「春に」




日にちが経ってしまいましたが、コント日本一を決める番組「キングオブコント2021」の決勝。
「ザ・マミィ」のネタで木下牧子先生の「春に」が流れ、ちょっとした話題になっていたんです。



公式さんがYouTubeに上げていたので観てみると……

www.youtube.com


……おぉ~、こういう題材を扱ったのか!
演者の当惑とまた違う、観客としての当惑と腹の底から湧き出るような「この気持ちは何だろう?」。
「笑い」とズレるような重なりあうような、複雑な感情を湧き起こした「ザ・マミィ」に大きく拍手をしてしまったのでした。


作家の岸田奈美さんはツイッターでこう語られています。

 


どっか“おかしく”て、だけどその“おかしさ”に優劣は存在せず、自虐でもいじめでもなくフラットな関係で好きなときにボケ&ツッコミを入れられるってこんなに平和なことなのかと感激してしもうた。

 

「自虐でもいじめでもなくフラットな関係」。
かなり難しいことだけど、現実の行動を少し変えてみたくなる、そんなコントでした。




さらにこのタイミングで【音楽教育ヴァン vol.47】の 巻頭は「合唱曲『春に』にこめられたもの」!

 

 


誰でも見ることが出来るpdf版、詩人:谷川俊太郎さんと木下牧子先生の対談で、「春に」の詩が生まれたきっかけや、作曲された時のお話など、司会も坂元勇仁さんだけあって、深いところまで触れられ実に読み応えがあります。


谷川さん:1つの作品に、相矛盾する感情が入っていることがあんまりなかった。でも僕は、人間の感情の中には、常に矛盾したものを含んでいると思っていて、それを詩として書きたいと考えていました。


木下先生:最近は合唱でも、日本語の歌詞を大事にしていますね。ただ最初に歌詞の分析をしたり意味を確かめたりするのに、音楽を仕上げる段階でだんだん歌詞の存在を忘れてしまい、最終的に歌詞が沈んで聞こえない状態になってしまうことが案外多いです。出来上がった音楽に対して、最後にもう一度言葉の意味や流れを再確認して、乗せ直す作業が大切ですね。





ちなみに私の手持ちの音源で一番好きな「春に」の演奏は、「新選・中学生の演奏会用混声合唱曲集~海によせて/時・ときめく」CDに収録されている「春に」。

 

30年以上前の千葉大学合唱団の「春に」。
今聴いても瑞々しい、心にさまざまな感情があふれる名演だと思います。
(西村朗先生の「猫が海へ」も良い意味で西村作品とは違った、魅力的な曲)

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名曲は、触れるたびに新しさを感じさせます。
「春に」という名曲。
初めて聴く人はもちろん、そして何十回聴いた人でも時を経て、また新しくさまざまな想いを抱かせることでしょう。