「コンクール出場団体あれやこれや:出張版」2010(その8)

風邪はどうやら通り過ぎたようです。ありがたや。
さて、今日明日でいよいよ終わりますよ!
今日は5団体です!!




8. 山形県・東北支部代表
鶴岡土曜会混声合唱団
(混声53人・2年ぶりの出場)



今年で創立59年の伝統ある合唱団です。
前回は比較的大人数でも男声女声、
お互いを聞きあい声を呼応させる演奏。
特に三善先生の「嫁ぐ娘に」が誠実な演奏で
曲の雰囲気がよく出ていたのですが。


今年の課題曲はG1
そして自由曲はPizzetti「Messa di Requiem」から
Dies irae (怒りの日)」!


ほぉー。
こういう評価の高い名曲を自由曲に選び、
そして全国大会で披露してくれるのは嬉しいですね。
妻を亡くしたピツェッティが1922年に作曲。
グレゴリオ聖歌Dies irae」の一節を繰り返し、変奏し、
背後に流れる切なげで空虚さも感じさせる
ヴォカリーズが印象的な曲です。
弱声の繊細な表現、
そして中間部の絶叫とも言うべき迸りとの対比。


前回は全国大会1週間前に演奏会を開いていた鶴岡土曜会。
今年は6日後の土曜日に演奏会だそうで(笑)。


真摯に、誠実に楽曲へ向かう姿勢が
充実したステージになり、
その勢いがそのまま演奏会へ繋がりますように!






19分の休憩後、B部門最初の男声合唱団の出番です。









9. 東京都・東京支部代表
合唱団お江戸コラリアーず
(男声77人・2年連続の出場)



11年に及ぶ苦闘の末、昨年悲願の全国出場を果たしたおえコラ。
「私たちの宝物」と呼ぶ
信長貴富先生への委嘱曲「ラグビイ」を引っさげて。
その演奏、
まるでラグビー試合をパノラマのように眼前へ繰り広げる演奏で、
個人的に
「一般部門最優秀新人賞はおえコラだ!」と叫んだのですが。


今年の課題曲はM3:木島始詩、三善晃作曲
「だれもの探検」から「まっさかさまなまさかのうた」
そして自由曲は男声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」より
「くちびるに歌を」。
4曲から成る曲集の最終曲で
ドイツ語の詩と日本語訳の言葉、両方をつけた
信長貴富先生の曲です。


なんでも東京都大会では
「コンクールを忘れさせる演奏」という感想も出たとか。
団内指揮者・ピアニストの村田さんにお話を伺いました。

課題曲は発表されてから1年間ほど取り組むことになるので、
M2〜M4まで全部歌ってみて選曲しました。
えっ?M1はどこに行ったか? 察してくださいw
その結果M2かM3かなぁと。
で、今のおえコラの音に最も合っているのがM3かなと。
(ちなみにM2は夏の演奏会でプログラムに組み込んでいます。)
前に路標のうたを取り上げてから
結構メンバーも入れ替わってますので、
また三善作品に取り組みたいというのもありますしね。


縦の和音も純正調ではなくちょっと工夫を凝らしてますので
そのあたりも聴いていただければ。。。
ちゃんと表現できれば の話ですけどね……


ほう、課題曲全曲をまず全部歌ってみる、というのが凄いですね。


>えっ?M1はどこに行ったか? 察してくださいw


やってみないとわからないことってありますよね!(笑)
さて、自由曲についてですが。

自由曲については、
コンクールで選曲するには
いささか賭けっぽい側面がある選曲かもしれません。
去年選曲した「ラグビイ」と同じく信長先生の曲ですが
去年とは真逆の方向です。
4群合唱で楽譜ヅラもいかにも
「コンクール向け」だったラグビイと違って、
楽譜ヅラは音が難しいわけでもなく
リズムが難しいわけでもなく
「コンクール向け」な曲ではありません。
しかし、こういう単純なメロディーを
真に上手く歌うのは実に難しい。
ドイツ語をドイツ語らしく、
日本語を日本語らしく聴かせるのは実に難しい。
発音と発声を両立させるのも実に難しい。
詩を、曲を、聴いている方に伝わるように歌うのも実に難しい。


自分達は、何を、誰に、歌っているのか。
何のために歌っているのか。


うたを うたう とは一体どういうことなのか。


その答えがこの曲の中にあると確信しています。


 嵐が吹こうと
 吹雪が来ようと
 地上が争いで満たされようとも
 くちびるに歌を持て



難しい音やリズムを完璧にこなすのは、それは うた なのですか?
それはもちろんとても大事なことですが、うた とは何なのですか?
合唱って何ですか?
コンクールという場で歌うのは、
ある意味、そういったメッセージなのかもしれません。

慣習や日常というものの強制力に逆らい、
優れた問いを持ち続けることは非常に困難なことですが
問い続けること自体が答えなのかもしれない、と
考えさせる村田さんの文章です。
さらに続きます。

ここから、回答者の個人的な考えですが。
音楽は 「理」と「感」 の融合 だと思っています。
「理」だけだと上手いけどどこか遠い、それだけの演奏、
「感」だけだとただのオ●ニーwww


都大会の演奏は「感」に傾きすぎた演奏でした。。。
確かに全員一丸となって曲に入り込んだ熱唱でした。
それ自体には全く後悔はないですし、
だからこそ聴いてる方に伝わるものも多く、
「コンクールだと忘れさせる演奏」
との感想にも繋がったのだと思いますが、
それまで練習で積み重ねていた「理」の部分が吹っ飛んでしまい
録音を聴くと…… とほほほ……


全国大会では「感」の部分はそのままに
「理」の部分ももっと追求し、
今度こそ 理×感 な演奏をしたいものです…


でも、また吹っ飛んでしまうんだろうな…
まぁそのへんは平均年齢20代ということである程度は…(^^;)

村田さん、ありがとうございました!
まァ「若さゆえの暴走」もオツなものです。
最初から開き直ってやられるとブーイングしちゃいますが(笑)。


さて、村田さんからおえコラの写真を送っていただきました。
・・・ハジけてますねえ。これも「感」に傾きすぎた?





写真は、今年夏の演奏会での写真ですが、
飛び跳ねてる写真は、
大島ミチル先生の「御誦」の3曲目
「蓑踊」での最中の様子です。


御誦は男声合唱では割と古くから演奏されてきた作品ですが、
今回は照明と動きを付けてみました。


これまでの慣習にとらわれることなく
常にいろんなことにチャレンジしていきたい
という思いの表れと… 見えますかねぇ…


なんでもかんでも動きを付けたり
意外性を追求したりしてるわけではないんですが、
やりすぎて「それはないやろ…」と言われることもしばしば。
そういうのもぜーんぶひっくるめて「おえコラ」です。

なるほど、そういう思いの表れとは予想外でした。
ちゃんと「理」もあったんですね、納得です。
本番のステージ、理×感の演奏を楽しみにしています!















10. 愛知県・中部支部代表
HIKARI BRILLANTE
(女声76人・初出場)



初出場おめでとうございます!
なんでもHIKARI BRILLANTEは
聖カタリナ学園 光ヶ丘女子高校合唱部のOG団体のようです。


課題曲はF4「五月のうた」
自由曲は瑞慶覧尚子、
淵上毛錢の詩による女声合唱組曲「約束」から「約束」。


この曲は熊本県立第一高等学校合唱団の委嘱作品で
こちらの楽譜購入HP
熊本県立第一高の大変素晴らしい演奏が全曲聴けます。


「約束」は5曲の最終曲で唯一ピアノが入る曲のようですね。
ダイナミックな盛り上がりが魅力的です。
そしてなんと、今回は一般Aで「合唱団まい」を指揮された
雨森文也先生が指揮をされるそうです。えー?!



中部大会を聴かれたTさんの感想によると

「HIKARI BRILLANTE」
こちらも雨森先生が振られました。
光が丘女子高校のOGに現役も交えた総勢78名、
かなりの大人数ですね。
要はそこからどんな音楽が表出されるのか、期待が集まりました。


課題曲は、その昔の山形西高校ばりの、
体をうねらせるような動きから
聴き手を包み込むような演奏。
ちょっとおとなしめかな、
よく言えば端正な品のある女声合唱という感じでした。


自由曲は言葉もはっきり聞こえて、
出だしはこちらも「端正な演奏だなあ」と感じました。
そこからだんだん指揮者の本領発揮。
「まい」のときと同じ、音楽の持続が途切れず、
聴き手を飽きさせません。
素直で伸びやかな若い声を
先生がうまくコントロールしている、という印象から、
歌い手たちも「もっともっと前へ」
という動きが感じられてきます。
そしてフレーズの粘りが聴き手の心をどんどん揺さぶり、
最後には二者の共同作業で彫像が完成されていくようなさまを
見た気がしました。(それも美女の像を・・・爆)

Tさん、ありがとうございました!
なんでもHIKARI BRILLANTEは平均年齢18歳だとか。
この若い年代で大人数の女声合唱を
雨森先生が指揮する演奏を聴くのは私も初めてで楽しみですし、
大学生なら割合そんな機会がありますが
高校生ぐらいの年代と
プロフェッショナルの指揮者が組み合わさるあまり無い機会。
一体どういう演奏になるか、という点でも楽しみです。













11. 徳島県・四国支部代表
徳島男声合唱団「響」
(男声38人・3年ぶりの出場)



課題曲は合唱団お江戸コラリアーずと同じM3
そして自由曲も同じ
男声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」より
「くちびるに歌を」!


この曲の選曲理由、思い入れに対しては「響」HP内
[色者(しきしゃ)のぼやき] 第37回の
「第50回 四国合唱コンクール」をご覧になられれば
充分、読む人の心に染み渡ると思いますが、
さらに指揮者の白神さんに伺ってみました。

今回の選曲については・・・
これといった理由はなく、
とにかく「くちびるに歌を」を歌いたい!
課題曲の中からは「まっさかさま」を歌いたい!と、
わたしが思っただけのことでした。


なぜ、そう思ったのでしょう?自分にもわかりません。


ただ、最近とくに思うのですが
自分たちが、合唱で人のためになにか役に立つことができないか?
もし自分たちの音楽で、人を幸せな気持ちにさせたり、
人を勇気づけたりすることができれば、
それは自分たちにとってもとても素晴らしいことではないか
と思えるのです。
自分たちが楽しんで歌う・・・それが目的なら、
わざわざ舞台に立つ必要はないわけで、
やはり舞台に立つからには、
なにか聴く人の気持ちを動かしたいわけです。
それはコンクールであっても同じなんだと
最近思えるようになってきました。


ちょうど1年前に、
信長貴富先生がわざわざ「響」の練習に来てくれました。
そのときは定期演奏会で歌う「新しい歌」をみていただきました。


僕はそのときから、「くちびるに歌を」の楽曲も知っていて、
先生にその話をすると
信長先生は「あの組曲の中でも、
とくにあの終曲は男性を強くイメージして作りました。」
とおっしゃっていました


僕は、そのときは、
まだ淀川混声合唱団が歌っている音源しか
聴いたことがなかったので、
信長先生のその気持ちをなんとか表現したい!と思い、
「この曲に取り組もう!」と思いました。


ひょんな話しで、いつもコンクールに出る時は、おえコラの山脇さんと
「今年は何の曲やるの?」ってメールで話しをするのですが、
2年ほど響がコンクールからはなれていたので、
なんだか今年突然彼にメールするのもはずかしく、
そのままそっとコンクールに出たら、
おえコラさんと全く同じ選曲で、びっくりしてしまいました。


響が四国大会を突破したときは、
まっさきに山脇さんはお祝いメールをくれました。
ぼくもおえコラが東京大会を突破したときは、
とてもうれしくすぐにメールを入れました。
「素晴らしい曲が、全国へ導いてくれた」というのが、
2人の共通の見解です。


なんだか、うれしいんです。
東京と徳島で、
おなじ気持ちで曲に向かい合っている仲間がいるということが。



この曲は、とくにどこをきいてほしいというのは、ぼくはありません。


とてもメッセージ性の強い曲です。
その言葉の重みが聴く人の心に響き、
その人を元気にすることができれば、
このコンクールにおける「響」の役割は完結です。


「歌にはその人の人生がにじみでる
 ・・・だから大人の合唱は感動する!」
松下先生が以前におっしゃっていたことです。
ぼくもそう思いますし、
自分たちもそんな合唱団でありたいと思っています。


なんのこたえにもなっていませんが・・・
今のぼくの心境を書いてみました。


白神さん、ありがとうございました!
「くちびるに歌を」という曲。
大変素晴らしい曲で私も大好きですが
それ以上に歌う人の心へ問いかける何かを持つ曲のようです。


おえコラ指揮者の山脇さんとの交流も、いいですよね・・・。



白神さんには「響」の写真も送っていただきました。



四国大会終わって、アトリエで撮った集合写真です。

こちらもありがとうございます。
おえコラの、
そして徳島男声合唱団「響」の



くちびるに歌を持て
心に太陽を持て



そのメッセージが届くのを楽しみにしたいと思います。












12. 大阪府・関西支部代表
豊中混声合唱団
(混声80人・2年連続の出場)



一般の部で最大人数の豊中混声。
課題曲は一般の部で唯一の
G3:「風」(「三つの無伴奏混声合唱曲」から)
北原白秋詩・柴田南雄作曲)
そして自由曲は
新実徳英混声合唱とピアノのための「宇宙になる」より「宇宙」。
豊中混声の委嘱作品であるこの曲。


…なんだか「最大」「唯一」「委嘱」
今年はえらい景気のイイ感じです豊中混声。
そんな景気のイイ合唱団の団内指揮者:山本さんに
お話を伺いました。

「各曲を選曲された理由、曲紹介や聴きどころなど」


G3については、音楽監督の西岡が得意とする柴田作品の、
その精髄である〈風〉ということで
是非この機会にきちんと取り組みたいと選びました。
また、来年には「柴田南雄とその時代」のCD/DVDシリーズに、
当団女声が「冬の歌」にて
レコーディング参加することが決まっておりますので、
それに先立っての勉強、という意図もあります。
いまいち旋律仕事が苦手な男声に
強制的にパートソロをやらせて
矯正を図るという目的もあるのですが…
こっちは目下大苦戦中というところですね(苦笑)。


自由曲の〈宇宙〉については、
まずはこれほどの素晴らしい作品を何としても
全国の合唱ファンに紹介したいという想いが第一です。
混声合唱+ピアノという一見何でもない編成なのですが、
他の作品にはない
独特の手触り・強力なエネルギーを内包しています。
2008年の初演から何度も歌っていますが、
その度に新たな発見があり、
今更ながら作曲家・新実徳英の底知れぬ凄みを感じています。
聞き所としては、終盤の男声・女声・ピアノが
それぞれ独立したリズムで絡み合う壮絶なカオス、でしょうか。
時々男声が本当にカオスになってしまっていますが、
そのギリギリ感も演奏の魅力ということで、ここはひとつ(^^;)
そんなわけでカオスな音楽からダイレクトに味わうのは
ちょっと難しいかも知れませんが、
和合亮一さんのテクストも本当に魅力的です。
我々凡庸な合唱人はついつい言葉の些細な意味に拘ることで
「解釈」できた気になってしまうのですが、
和合さんの詩はそんなちっちゃいアプローチを良い意味で
粉々に打ち砕いてくれます。
怒り・喜び・悲しみといった感情以前の諸々が混然となった、
その先にあるものは何か。
新実先生はこの作品に
「三つの愛のかたち」というサブタイトルを与えていますが、
そこに答の一端があるように思います。

おお、丁寧な解説、ありがとうございます!
課題曲の選択理由にも納得ですし、
何と言っても新実先生への委嘱曲「宇宙」は
ほんとスゴイ曲みたいですね!
和合亮一さんの他の詩も少し見てみましたが
吉増剛造を連想させるような頭を刺激する詩でした。
カオスが火花を散らし、ぶつかり合って爆発するような
宇宙誕生のような曲を勝手に想像してしまいますが
いったいどんな作品なんだろう。実演が楽しみです。

「今回の全国大会に対する
 意気込み(もしくは目標や志)がありましたら」


地元支部での開催ということで、例年以上に気合が入っています。
演奏をきっちりやり遂げるのはもちろんですが、
全国から歌いに/聞きに集まってくださるたくさんの仲間たちに
少しでも良い思い出を作っていただけるよう、
お出迎えする側としてできるだけのことをさせていただければ
と思っています。

そうそう、豊中混声は某2次会の幹事団体でもあるんですよね。
あの大変な宴会を仕切って下さるというだけでも、
もう合唱連盟は豊中混声へ金賞を与えていいんじゃないかと
個人的には思うんですが(笑)。

「聴く人に伝えたいことがありましたら」


出演団体の皆様へ:
一緒に歌えることを嬉しく思っています。
個人や団、いろんなレベルで「繋がり」ができていくのが
毎年、楽しみです。


客席においでの皆様へ:
今度はこちら側で一緒に歌いませんか。
特に男声で
高い声の出る人出そうな人これから出るような気がする人、
切実に募集中ですよろしく!!

はい、関西在住(そして近辺)のみなさま。
資格は「入団時18歳〜45歳 歌うことが大好きな人」だそうですよ!


さて、写真も送ってくださいました。
これは豊中混声東京公演の写真で
子供たちと一緒に写っているのは
三善先生の「葉っぱのフレディ」という曲のためだそうです。






山本さん、本当にありがとうございました。
ホストという大変な役目とステージの演奏、
せめて私なりにエールをおくりたいと思います。







がんばれトヨコン、宇宙になろう!



(…すいません、BBSを見てこのフレーズが気に入ったもんで・・・)







(つづきます。明日が最終回!)