※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております
知人へ訊く
「出場しないのに富山へ行くお目当ては?」
この企画最終回は愛知県にお住まいのちーさんです。
え?
富山へ行くお目当てですか?
そんなこと決まってるじゃありませんか。
そりゃもちろん、
文吾さんに会うことですよ!!!!!
こんなんで、良いですか?(笑)
いや〜、モテる男はツライね!
・・・さて、仕込みが終わった所で続けましょう。
ちーさん、続きをお願いします。
中部地区(愛知県)に住んで
合唱と関わっている者として、
同じ地区で開催されるコンクールですもの。
毎年各地を転々とされている
合唱コンクールを聴ける数少ないチャンスなんです。
今回は土曜日だけ、
しかも午後あたりからしか聴けないのですが、
全国から選ばれた、日夜切磋琢磨されている
合唱団の生の演奏はどれも楽しみです。
日々のなにか悶々としている私に活力をください。
ちーさん、ありがとうございました。
日々の活力!日常への刺激!
なんだかドリンク剤のCMみたいになってきましたが、
うん、でもそういう姿勢って大事ですよね。
いつもと違う体験が予想外の気づきを得たりするかも。
ちーさんはじめ、悶々としている方はぜひ富山へ!
ゴールが近づいて来ました。
今日も2団体をご紹介します!
12.神奈川県・関東支部代表
湘南はまゆう
(女声40人・2年ぶりの出場・第61回大会以来4回目の出場)
湘南はまゆうはおかあさんコーラスの大会でも
優秀な成績を収められている団体です。
指揮は一般A部門4番目に出場された
Combinir di Coristaの指揮者:松村努先生。
課題曲はF3
川崎洋:詩 新実徳英:作曲
「やさしい魚」より「天使」
自由曲は信長貴富:作曲
「万葉恋歌」より「君待つと」
西村朗:作曲
「花紅」より「くろ髪の」
私も何度か素敵な文章を引用させていただいた
ブログ「湘南はまゆう 練習のーと」の書き手muffさんから
メッセージをいただきました。
各曲の選曲の理由、曲の紹介、魅力、聞かせどころなど
コンクールの選曲は、
自分たちの持ち味を活かせるものということで、
ピアノ伴奏つきの邦人作品を中心に選んでいます。
課題曲は『天使』。
新実先生の曲には、
きちっとハーモニーが決まった時にだけ
感じられる歓びがたくさん詰まっていて、
とてもやりがいがあります。
特に最後の“まなざしだけがみえる”のところで、
天使のまなざしが倍音になって
光の筋のように射し込んでくると涙が出そうになります。
関東大会で
「天使というより天女のたたずまいでしたが、
それもみなさんならではで素敵でした」と
書いてくださったのは雨森先生で、
若い方たちが歌うのとは違った趣きが出せたのかと、
とてもうれしく感激しました。
『君待つと』は額田王の和歌がテキストになっています。
恋しい人の訪れを待ちながら、
一瞬の風の気配にも繊細に揺れ動く万葉びとの心模様を、
吹き上がる一陣の風のような
クラスターに乗せて表現しています。
『くろ髪の』は与謝野晶子の「みだれ髪」から選んだ
10首の短歌で編まれています。
大胆で情熱的、官能的な表現が切々と迫ってくる内容で、
声に出して歌うのに少々ためらわれることもありました。
取り組むに当たりいろいろと調べていくうち、
絢爛豊饒な作品が生まれる背景に、
鉄幹と晶子のお互い磨滅することのない
緊張度の高い関係があったこと、
また一方で極貧の中12人の子どもを育て上げ、
立派な教育者でもあったたくましい母としての姿に、
共感をおぼえるようになりました。
激情あふれる場面から
深いため息の漏れるような表現のコントラストなどを、
情感豊かに歌いたいと思います。
全国大会への意気込みなどありましたら…
何よりものびやかに
自分たちらしい演奏をしたいということが一番ですが、
昨年は出場を逃して返り咲きを果たしたので
嬉しさも格別、CDに演奏を残すことが目標です。
聞く人に伝えたいことは?という問いには
使い込んできた声に信頼という糸を撚り合わせ、
霧を吹き糊付けをして、丁寧にアイロンをあてて、
はまゆうの作品を仕上げました。
心通う仲間たちと息長く歌い続けていくことの
しあわせのようなものをお伝えできたらと思います。
コンクール部門編成の改革については?
部門編成が変わっても選択肢があるわけではないので、
あまり自分たちに影響があるという実感はありません。
関東などは出場数が多いですが、
分母の少ない地方は大変かもしれないですね。
職場合唱団というカテゴリーがなくなると
どうなっていくのかは興味があります。
muffさん、ありがとうございました!
さて、関東支部と言えばこの方、
名レポーター鱸さんに再度のご登場をお願いします。
湘南はまゆうさん
もう「ママさんコーラス」といった団体ではないでしょう
出場4回目の堂々とした関東代表です。
この夏の「おかあさんコーラス全国大会」にも出場しました。
講評がハーモニー秋号に載っています。(p87)
はまゆうさんの演奏については、
その文を参照するとよく分かります。
「末廣:高度なテクニックをすぐに見せた。実力十分の演奏。
深い響きを持っているので、音色の変化が充分にできます。
ピアニストも素晴らしい。
個々のトレーニングによって、さらに音の密度は高まるはず。
横山:中高生のコンクールで歌われるのとは
まるで違う趣あり。すごい。
ロングトーン一発の中の、この情念ワールド、脱帽です。」
曲目は少し変えてきているようですが、
おかあさん全国大会から2ヶ月あまりたった関東でも、
より深まった演奏を聴かせてもらいました。
信長先生、西村先生の曲は中高生の定番曲ですが
はまゆうさんの作り出す世界は、
経験値の差からでしょうか。
その一歩も二歩も先を行っています。
松村先生の日本語のニュアンス処理を
よく消化して曲にのせているので。
はまゆうワールドを堪能できる楽しみなステージです。
鱸さん、関東2団体のレポートありがとうございました。
なるほど、人生の経験値による深い世界・・・。
鱸さんが書かれるように
中高生の演奏との違いもはまゆう演奏の楽しみですね。
写真は関東大会後の練習日に撮った喜びの写真です。
横断幕は地元茅ヶ崎市役所前の
横断歩道に掲げられています。
おお、市役所前に横断幕とは!
地元の応援も嬉しいですね。
過去のはまゆうの演奏は
松村努先生の音楽性に加え、
言葉と心を伝えることに一心、という印象があります。
心通う仲間たちと息長く歌い続けていくことの
しあわせのようなものをお伝えできたらと思います。
と語られた、muffさん、
はまゆうのみなさんの想いがかなうことを願っています。
さて、同じ神奈川県・関東支部の団体が続きます。
13.神奈川県・関東支部代表
小田原少年少女合唱隊
(女声37人・3年連続出場・第52回大会以来9回目の出場)
お〜、13番目に小田原少年少女とは!
以前から自分はこの団体を
「極上の口直しシャーベット」と喩えていて、
「成人した男女の熟したステーキのような声に耳が疲れた頃、
小田原少年少女のコンクールを意識しない、
涼やかな声に浸ることができたら、
口直しのシャーベットを舌に乗せるように
耳も新しくなって、次の団体を聴けるのでは?」
などと書いていたのですが
この小田原少年少女合唱隊、毎回出番が早くてですね。
前回は2番目、前々回は5番目、前々々回は1番目!
お口直しが直す必要の前に出てくる!!
別にどの順番で聴いても良いものは良いんですけど、
ちょっと残念だなあ、と思っていたのでした。
それが今年は13番目。
まさにお口直しの位置!
・・・えー、前の団体である湘南はまゆうさんに
何ら含むものはないことをお断りしておきます。
バカなことを書いてないで、この辺にしておきましょう。
さて、マルベリーファミリーの母体である
小田原少年少女合唱隊。
マルベリーと言えばこの方。
それでは今回もお呼びしましょう。
音楽監督である桑原春子さん、お願いします!
全日本合唱コンクールには1976年から
37回続けて参加しています。
全国大会への出場は9回目になります。
来年、創立50周年を迎えます。
課題曲はF1です。
自由曲は日本のわらべうた3曲です。
1.烏かねもん勘三郎
広島のわらべうた 作曲:間宮芳生(1929- )
「からすの勘三郎、おまえの家が火事になってるぞ。
早く帰って水をかけろ。柄杓がなければ貸してやるよ」
という内容の、わらべうたです。
夕焼けで空が真っ赤になったころ、ねぐらへ急いで帰る烏を
子どもたちがからかって歌います。
2.てぃんさぐぬ花
沖縄のわらべうた 編曲:信長貴富(1971- )
「てぃんさぐぬ花」はホウセンカのことです。
昔、沖縄では女の子たちがホウセンカの花の汁を
爪先に塗って遊んでいました。
それは装飾的な意味だけでなく、魔よけのためでもありました。
赤は悪魔の目をつぶすと考えられ、
娘たちの身を守る術としての風習だったようです。
この歌は「ホウセンカの花は爪先に染めて、
親の教えは心に染めなさい」という1番から始まり、
以下、心を磨きなさい、親を大事にしなさい・・・と
教訓が続きます。
3.ことばあそびうた
和歌山のわらべうた 作曲:松下耕(1962- )
和歌山のわらべうた3曲が組み合わさって、
一つの合唱曲に仕上がっています。
最初の曲は「寒川村(そうがむら)の村長さんが
ソーダ飲んで死んだそうだ、
葬式まんじゅう旨かったそうだ」と、
あっけらかんと楽しく歌います。
2曲目の「住蛇池(じゅうじゃいけ)に」は、
「根来(ねごろ)山のふもとにある池に大蛇がでると聞くが、
雄か雌かわからない」と歌います。
この地方には「昔、桂姫という美しい娘の嫁入り行列が
池にさしかかったところ、大蛇があらわれて姫をさらい、
しばらくすると仲良く泳ぐ二匹の大蛇の姿があった」
という悲しい物語が伝わっています。
桂姫は小野小町の、大蛇は小町に思いを寄せて叶わなかった
深町少将の生まれ変わりと言われています。
最後の曲は「べろべろの神様は正直な神様じゃ」と
酒席のゲームでよく歌われる愉快な歌です。
松下先生に振り付けも教えていただきました。
ところで、昨年も書きましたが、アルトにいる父兄のような
大きな体格の少年は、正真正銘の高校2年生です。
県大会のときに「なんだ、チェンバーの大人が混ざって
手伝ってるじゃないか」と言われたのですが、逆なんです。
「小田原の子どもが、チェンバーの大人を手伝って」います。
コンクールの部門再編については?という問いには
地元以外の方たちに聴いていただくチャンスがないという理由で
大人の合唱団に混ざって参加しはじめ、37年が経ちました。
(故)関屋晋先生に、「音楽に大人も子供も関係ない」と
励ましていただいたのを、昨日のことのように思い出します。
春子さん、今年も3団体もの紹介文と写真、
本当にありがとうございました。
しかし、自由曲が「日本のわらべうた」で統一とは。
コンクールを意識しないどころか
「え?これってコンクールだっけ??」と
客席で不思議に思いながらも楽しめるステージとなりそうです。
少年少女の写真は、今年4月イタリアのリヴァ・デル・ガルダの
コンクールで歌ったあとに、会場の庭で撮ったものです。
その国際合唱コンクールで
小田原少年少女合唱隊は
同声ユース部門にて1位を獲得したんですね。
今回で「大人の合唱団に混ざって」の参加は
最後になるのかもしれませんが
今まで全国大会で聴かせてもらった、
涼やかで素敵な演奏をきっと忘れないことでしょう。
小田原少年少女合唱隊、
今年も演奏会の1ステージのような音楽を期待しています!