宝塚国際室内合唱コンクール 無差別級グランプリ大会感想 最終回

 

しばらく間が空いておりました。

もう9月も中旬・・・。

長く続いた宝塚の感想、最終回です。


 



休憩の後、5番目の出場は


5.Ensemble Mikanier(和歌山・混声)

阪本健悟先生の指揮で。
千原英喜先生の
混声合唱のための「十字架上のキリストの最後の言葉」より
「第一の言葉」「第二の言葉」


良いテナーソロから始まる
合唱のリズム感あふれる旋律、その説得力。


「第二の言葉」ではピアニッシモの響きが
厳かな教会の神聖さをイメージさせるほど。
どれだけ練習を積んだのだろうか、
作曲者:千原先生のご指導も受けられたのだろうか…
そう思わせるほど、テキスト、曲への没入感が深い。

もちろん若い団体ゆえ発声面など至らない部分はあるのだが、
それでも、いやそんな不備を越えてこそ聴く側へ届く「祈り」。

あまりに優しく、慰撫するようなその歌に、少し泣けてしまうほど。
観客もみな、身じろぎひとつせずこの演奏に集中していました。






6.女声合唱団ALITO(岐阜・女声)


平田誠先生の指揮で。

Bob Chilcott「Little Jazz Mass」より「Kyrie」「Gloria」

昨日の本選での印象と同じく、
声楽的によく練られた発声で上手な演奏です。
この曲としては一生懸命が見え過ぎなので
遊びがもう少しあったらなあ…。

中田喜直先生の「夏の思い出」
ピアノが現代風に華麗に盛り上げ、
幻想的な雰囲気も感じさせる面白い編曲。
高三さんのお話では「これもChilcott氏の編曲では?」ということ。

基礎力の高さをとても感じさせる団体でした。







7.愛知高等学校(愛知・女声)

吉田稔先生の指揮で。

Josef Karai 「Éjszaka(夜)」

もう、最初の一音から会場中の耳と視線が
ステージへ集中してしまう。
冷気まで漂うような研ぎ澄まされた表現、凝縮された音。
ハンガリーの作品なのに時間の濃密な流れ、いざ動くときの緊迫感に
日本の「能」を連想してしまう不思議さ。

音のさまざまな変化、ダイナミクスの幅など
愛知高校お得意の表現であり、
独壇場という思いを強くさせる演奏でした。



そして中島みゆきの「糸」

今回、初めてこの曲の演奏を聴く私。

いろんな人から
「愛知高校の『糸』は泣けるよ!」という評判を耳にしていて。
「泣ける」という前評判へ好んで群がっていくのは
いろいろ疲れた30代OLに生まれ変わってからにしよう…
などとヒネくれた自分は思うのだけど、それはそれとして。
歌い始めるのをなんとなく緊張して身構えます。



・・・圧巻。

「縦の糸はあなた 横の糸は私」

あなたと呼びかけられ、
私へと還っていく言葉のなんという強さ。
想いの強さゆえ、音の震えや幅はありましたが
それが彼女たちの生きてきた人生、
この部活でのそれぞれの思い出の深さを感じさせて。

いわゆる正当的な合唱の発声というものからは
少し逸れているのかも。
そういう意味で言葉のわからない外国人審査員や観客は
どんな印象を持たれたのか気になるところですが。

それでも、この曲にふさわしい声を選択したゆえの
表現の説得力は本当に凄かった!
一心に歌うことの力も心に強く刻まれました。
出会いの不思議さと素晴らしさを表したこの曲を
見事な演奏で示した愛知高校。

自分も改めて書こうと思います。

「愛知高校の糸は、本当に泣けるよ!」




 


最後の団体は
8.The Singers Vocal Ensemble(シンガポール・混声)


Wilson GOH氏の指揮で。


「Iddem Dem Mallida(イトネッグ種族の伝統歌)」

うっわあ…やはりこの団体の基礎力はダントツ。
テンポ、音楽の流れ、表現などアイコンタクト無しで
ここまで一体感あるアンサンブルができるものなのか。

あちらの民謡風な旋律が美しく響き、
最後は足踏みもあり昂ぶる!


そしてBob Chilcott「Swimming Over London」

King's Singersからの委嘱作品では?と高三さん。

極上なテナーのソリストが前に出て紡がれる
美しいポピュラーソング。
ジャズ風味な和音の色彩感、たゆたうような音楽の流れ。
洗練された歌い方・・・

この味わいはそこらの団体には決してできないもの。

オシャレで夢のような時間に
「ずっとこのまま聴いていたい!」と願ってしまうほど。

(曲名で検索すると元のKing's Singersの演奏も出ますが
 Houston Chamber Choirの演奏も是非聴いて欲しいな。
 The Singers Vocal Ensembleは人数が少ない分、
 さらにこの演奏より音の透明感がありました) 

いっやあ、堪能しました!
この団体に出逢えたのは今年の宝塚での収穫でした!





さて、全団体の演奏が終わり、
観客が記した審査結果を集計する時間です。
ここで日下部氏が

「観客審査員のみなさん!
 審査を迷う必要は無いんです!
 感動した団体を素直に書けばいいんです!
 そう! か・ん・ど・う した団体をっ!!」

…と、ひたすら「感動」を繰り返すのがウザかったなあ。
審査結果の恣意的な誘導と取られてもおかしくないんじゃ。
余計なお世話だよね。
まあそんな言葉に左右されず最初に決めた団体へ投票しましたが。



審査結果は

第3位 The Singers Vocal Ensemble
第2位 豊田市少年少女合唱団ユース
第1位 愛知高等学校

でした!


副賞として大きな箱に宝塚の記念品を
(手塚治虫作品のグッズなど盛りだくさん!)
たくさん入れていて。
The Singers Vocal Ensembleは持って帰るの大変だろうな…
などと思ったり(笑)。



初めての「観客が審査員のコンクール」でしたが
自分も全日本合唱コンクールで

観客賞なんてのを企画しているだけに、

審査員との評価の違いや
選出する方法などにも興味が湧いた大会でした。
そして8団体、どの演奏も大変良かった!
賞に選ばれた3団体はもちろん、
他の団体にも惜しみない拍手を捧げた「演奏会」でもありました。

交歓会も含めて非常に楽しかったし、
やはり色々と考えさせられる、勉強になる大会だったので
また来年、この時期、宝塚へ来たいと思います。

出場されたみなさま、
大会を運営されたみなさま、ありがとうございました!



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(おわり)