「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2014」(その14)

 

 

 

 

 

<観客賞のお知らせ>


行うのは「室内合唱の部」「混声合唱の部」の2部門です。
多くの方の投票をお待ちしています。


参加資格:「室内合唱の部」と「混声合唱の部」、
     それぞれ全団体を聴いていること。


投票方法は


1)投票用紙

2)ツイッターによる投票

3)メールによる投票

…の3方法。

 


詳しくは

http://bungo618.hatenablog.com/entry/2014/11/17/224347

からどうぞ!
多くの方の投票をお待ちしてます!!



 



さて、11番目に出場のグリーン・ウッド・ハーモニーさんの後、
混声合唱部門はふたたび20分の休憩です。
今日もその休憩を利用して座談会を公開いたしましょう。




第2回は「泣けてしまった演奏」がテーマでしたが
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2014/11/15/171736
最終回はコンクールを引退された団体の名演を中心に

時代の流れによる選曲の変化などを語り合います。

 

 



山本 ・・・ MODOKI指揮者:山本さん
ぜん ・・・ コールサル指揮者:ぜんぱくさん
       CANTUS ANIMAE遠隔地団員でもあります。

 

 





ぜん 30年くらい前までは「大艦巨砲時代」だったね。
   「戦艦は主砲の口径が大きい方が勝つ!」みたいな。
   そこから合唱団MIWOさんだったり
   松下耕先生のVOX GAUDIOSAさんや
   ブリリアント・ハーモニーさんや
   藤井宏樹先生の女声合唱団Juriさんのような
   イージス艦みたいな合唱団が出てきて。
   「密度の高いものが良い!」と
   雰囲気が変わってきた。


山本 一般Aグループができて、
   それが成熟していく過程で変わっていくのが
   変化としては大きかったんやろうね。


Aグループができたのは1984年ですね。


山本 そう、最初の頃は一般A部門も
   「大きい合唱団を目指す過程」みたいな雰囲気があった。
   そこから選曲の方向性が変わっていって
   アンサンブル力を付けていって…。


ぜん そうだね、辻正行先生のコロ・フォンテとかさ。
   1991年岡山大会のモンテヴェルディ
   「Si ch'io vorrei morire」と、
   サンドストレーム「Agnus Dei」の組み合わせとかもね。


山本 モンテヴェルディの後に超現代曲という組み合わせね。
   憶えてます。衝撃的だった。
   「なんなんだ、この組み合わせは?!」と。


ぜん スウェーデンでの合唱シンポジウムに
   コロ・フォンテが行った時
   サンドストレームの作品に出逢い衝撃を受けて。
   団員さんが「この曲をやりたい!」と。
   …でも辻先生はかなり迷っていて。


へぇー。


ぜん だけど団員みんなが「やりたい!」って言うから
   「・・・じゃあやる」って。
   それが金賞受賞でとても評判良かったんで。
   他の人から「サンドストレーム、良い曲ですね!」
   と言われて
   辻先生が「そうでしょ?」って(笑)。



山本&文吾 (笑)。


ぜん その辺りから「選曲の妙」と思われる団体が
   増えてきたように思うな。


山本 そうやね、それ以前はモンテヴェルディか
   他のルネサンス音楽が多かった。
   合唱団MIWOさんが1994年金沢大会で
   ペトラッシ「ナンセンス」を演奏したのも
   衝撃だったね。

   多くの団体が選曲の幅をぐっと広げた、
   新しい曲を探し始めたのは
   1991年の岡山大会ぐらいからかな。
   全日本合唱コンクールにおける
   パナムジカさんの存在は凄く大きい気がする。

   海外の新しい作品を演奏するようになったのは
   80年代後半から90年代はじめ、
   栗山文昭先生が新しい曲を見つけ出して
   演奏し始めたのも大きいんじゃないかな。


「選曲は、千の曲から選ぶから、選曲なんだ!」


山本 そうそう(笑)。
   名言やと思うな。
   ハーモニー誌で読んで感心したもん。
   「自分、千曲知らんし!」(笑)。


百曲ぐらいじゃ「選」曲にならない(笑)。


山本 コンクールでの名演と言えば
   栗山先生が指揮された合唱団は欠かせないなあ。


栗山先生指揮の演奏と言えば・・・
1991年岡山大会、
できたばかりのシンフォニーホールで聴いた
千葉大学合唱団さんの
バディングス「ブルターニュの3つの歌」!
名演でしたねえ~。
学生が演奏しているとは思えないほど
フランス音楽の香りが漂って・・・。


山本 うまかったね!


朝4時くらいに起きてたんで
千葉大さんの時は
夢うつつで半ば寝ながら聴いてましたけど(笑)。


山本 自分はステージ横の指揮者が見える席で
   上から栗山先生の指揮をじーっと見つめてね!


・・・その辺で差が出ますね(笑)。


山本 あの年は合唱団OMPさんが
   三善先生の「田園に死す」でタイムオーバーの年でしょ。
   他にコーロ・カロスさんのヒンデミット、
   女声合唱団るふらんさんの新実先生「をとこ・をんな」
   強烈やったもんね!


ああ、あの三弦、コントラバスを使った!
「愛のコリーダ」の世界!(笑)


山本 でもね、「をとこ・をんな」は確かに凄かったけど
   課題曲の「ティー・カップの春」。
   その頃、ちょっと音楽がわかりかけてきた時で。
   「このリズムの取り方、普通じゃないな!」と。
   「お洒落やな~」って感心したね。

   それ演奏した後で「をとこ・をんな」でしょ。
   なんか「女の二面性」を見せられた気がして
   「凄いな~!」と。
   ・・・今でもあの「ティー・カップの春」は憶えてる。

   栗山先生の演奏、ずっと追いかけていたのは
   課題曲が凄い納得できる演奏をしてくれたんだよね。


ああ、わかります。
栗山先生かあ~。
千葉大合唱団さんの青島広志先生「マザーグースの歌」CDや
「星からとどいた歌」のシアターピースも
多感な時期に触れられて良かったなあ。
特に「星からとどいた歌」は
1989年コーロ・カロスさんの札幌公演で実演に接して
「こんな合唱もあるんだ!」って感動して…。


ぜん コンクールの話じゃないの?(笑)


すいません(笑)。
でも、10代の多感な時期に
栗山先生が指揮される合唱団の
コンクールでの「新しくて凄い演奏」と
シアターピースの「楽しい演奏」を知れたのは
今から振り返ってもとても良かったです。
「合唱って奥が深くて広いんだな!」と思えたきっかけです。


ぜん 名演奏ってさ、
   環境の面、時代の流れが
   新しい名演奏を作っているとも言えるね。


山本 そうやね。
   あと昔は体育館で全国大会をしていた時代から、
   響きの良い音楽専用ホールができて、
   それに合わせて演奏する曲も変わっていったのもあるね。
   響かないところじゃ聴く人も良いと思わんし。


ぜん それを考えるとバブルの時代も
   良かった面があるね。
   各地に音楽専用ホールがいっぱいできた。

   今年の会場の高松アルファあなぶきホールも
   バブルの時代にできたようなもんだし(笑)。


山本 趣味嗜好が細分化されたように
   合唱団も細分化、極小化、バラエティ化されてきて。
   指揮者がいないアンサンブルしかり、ね。
   それと最近ではネットの普及による
   情報スピードの変化が大きいよね。


それはありますね!


山本 いま、そんなに謎の曲というか
   知らない曲って無くなってきたもんね。


…そろそろコンクールの話に戻っていいですか(笑)。


山本 男声合唱部門ではやはりなにわコラリアーズ!


なにコラさんなら
2004年愛媛大会トルミス「古代の海の歌」!
あの表現力の幅広さ!


山本 あれも良かったけど
   2007年東京大会の
   木下牧子先生の課題曲「虹」と
   トルミス「鉄への呪い」ね、別格!
   聴いた男声合唱部門では絶対的に1位やね。


あー!
「虹」はその繊細さと歌心が素晴らしかったですね。
「鉄への呪い」もモノ凄かった。


山本 あと男声で思い出すのは・・・
   1995年高松大会、
   「Don Kusak合唱団」。
   1回きりの出場やったけどメチャ痺れた!


名前は知ってます!
話題になりましたね!


ぜん 何を歌ったの?


山本 新実徳英先生の「ことばあそびうたII」から
   「たそがれ」と「さる」。

   でね、恰好がですよ、みんなもう、私服!
   サッカーのヴェルディのユニフォーム
   着とった人おったもん。


ぜん&文吾 (笑)。


山本 そんな恰好で出てきたから
   「またもう、どんなことやらかすのやら…」と思ったら
   演奏はビシーーーーッ!!!

   「・・・マジかよ?!」


なんと金賞3位の演奏だったそうですね。
私は録音で聴いたんですが確かに上手かったです!
↓ 団員さんが記した文章。
 「俺たち今から歌うんだよね?」が(笑)。
http://www.lagoon.sakura.ne.jp/dk/contest/takamatsu.html


山本 あの年は三重の合唱団「うたおに」さんが
   シェーファーの「Magic songs」を演奏してね。
   凄かった。


うたおにさん!
1997年東京大会でのシェーファーへの委嘱作品
「17の俳句」の演奏も良かったですね。
後に東京の「創る会」で演出付の演奏を聴いて感動しました。


山本 その高松大会では
   合唱団MIWOさんが鈴木輝昭先生の
   「詩華抄」を演奏して、ホント凄かった。
   そして次の年の宇都宮大会で
   バッハの「主に向かって歌え新しき歌を」を
   演奏してコンクールを引退してしまうんやね。


へえー・・・。
しかし、輝昭先生の次の年にバッハで引退って
カッコ良過ぎでしょう!


山本 未だにMIWOさんを日本一の合唱団と思ってるしね、自分は。


MIWOさんは今も素晴らしい団体ですよね。
あ、藤井宏樹先生の
女声アンサンブルJuriさんも思い出深いなあ。
あの発声と歌の素晴らしさ。
2000年札幌大会での
千原先生「志都歌」も名演。
あの年は合唱団ゆうかさんの
細川俊夫「アヴェ・マリア」も凄かった。
身体をギリギリ締め上げられるような緊張感!


山本 藤井宏樹先生を言うなら
   同じ時期にコンクールで活躍された松下耕先生も!

   耕先生の指揮では
   2002年びわ湖ホールでの
   ガイア・フィルハーモニック・クワイアの
   バーバー「Agnus Dei」。
   熱量が凄く高かったね。

 

 

あの演奏も凄かったですねえ。

室内合唱団VOX GAUDIOSAさんでは
自分が県大会から聞いたり
練習を見学に行ったというのもあるんですけど
2001年郡山大会の
コスティアイネン「ヤコブの息子たち」が
記憶に刻み込まれてますね。
あの演出のユーモラスさと洒落た雰囲気!


山本 あれは楽しかったし凄かったね!


ぜん ブリリアント・ハーモニーさんなら
   2002年びわ湖ホールでの
   コスティアイネン「オーロラの戯れ」!
   なんかクルクル回って楽しかった。
   見ても楽しい、聴いても楽しい!


(笑)。
ブリリさんは女性の可愛らしさ、魅力が
演奏に上手く出ていた気がしますね。

…すいません、では最後に。
これまで聴いてきた
コンクールの演奏の中でひとつだけ選ぶとしたら?


山本&ぜん えー?!


難しいとは思うんですがお願いします(笑)。
自分は、生では聴いていないんですが
1987年東京大会での
千葉大学合唱団の自由曲のシュミット
「夜の歌
 フリードリック ショパンに寄す オード作品120」。
ピアノが田中瑤子先生だったと言うのもあるんですけど
ピアノと合唱の素晴らしいファンタジー。
コンクールとは思えない演奏です。


山本 …う~ん・・・どれも選べんけどね。
   自分はやはり一番最初に聴いた全国大会で
   京都エコーさんの
   ブルックナー「TE DEUM」は凄かったね。
   びっくりした。
   初体験物語として、ね。


やはり初体験は忘れられない(笑)。


山本 うん(笑)。


ぜん 自分は、山本さんも挙げていたけど・・・
   なにコラさん2007年東京大会での
   「虹」ですね。


おー。


ぜん 衝撃でしたね。
   あの演奏ほどストン、とシンプルに
   心へ落ちてきた演奏は稀だったので。


山本 あの「虹」と「鉄への呪い」の組み合わせは
   鉄板でしたね。
   あの演奏が終わった時
   「これほどのものは二度と聴けんな」
   と思いましたもん。


ですねえ。


山本 ・・・でも、この前のCAさんの「であい」も
   「二度と聴けん」と思ったし!


私も思いました(笑)。


ぜん そんなに?
   歌っている側はわかんないんだよね~(笑)。


名演奏の、演奏する側はそんな感じなんですか(笑)。
でも、そういうものかもしれませんね。
ぜんぱくさん、山本さん、
長い時間ありがとうございました!




(コンクール思い出の名演奏座談会 おわり)

   

(明日の紹介記事に連載は続きます)