観客賞スポットライト 室内合唱部門 その3

 

 

 

 

全国大会2日目の日曜日、「団の垣根を越えてノーサイドの精神で集まる『史上かつてない2次会』」が開催されます。
今年は奈良の団体:クール シェンヌさんが有難くも、幹事を引き受けて下さいました。

 

 




そういうわけで2日目の同声・混声合唱部門への参加者だけではなく、1日目の大学ユース、室内合唱部門、さらには観客のみなさまの参加も募集されているそうです。
私も行く予定です!
参加ご希望の方は、早めにご連絡お願いしますね。


 

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清水寺へ登る二寧坂からの景色 Photo by いよさん

 

 


室内合唱部門、今回も3団体をご紹介します。
個々が活きた演奏をされる団体と言えば?






7.徳島県・四国支部代表

Serenitatis Ensemble

(混声22名・4年連続出場・第65回大会から5回目の出場)



結成が2005年の「セレアン」とも呼ばれるSerenitatis Ensemble。
Serenitatis (セレニターティス) には、ラテン語で「晴れやかな」「穏やかな」という意味があるそうです。

昨年は西村朗「「死にたまふ母」より「4.かぎろひの」を演奏され。


「大人の市民合唱団」!って感じ。

良い意味で人間臭い団体ですよね。

熱演で、こっちも手に汗握るほど巻き込まれて!

…などという感想がありました。


今回の演奏曲は課題曲G2 Ensam i dunkla skogarnas famn (Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲は「After…」(信長貴富作曲)から「遠くへ」「そのあと」

5番目に出場の合唱団「い~すたん」さんも選ばれている曲集から3、4曲目。
谷川俊太郎氏の、東日本大震災後に発表された詩に作曲された無伴奏作品です。

「遠くへ」は「希望よりも遠く/絶望をはるかに超えた/遠くへ」
「前章を経て歌われる『絶望』の語は、むしろ『希望』よりも生の実感を伴った力強い響きとして出現する。」
終曲の「そのあと」は「静かに、自己内部へと着地する終章。旋法による祈り、魂の鎮め。」…と書かれています。

毎回、力のこもった演奏をされる印象のセレアンさん。
今回も作品の力をさらに増す演奏をされることでしょう。


 



続いて軽やかなリズム、華やかな音色の女声合唱団と言えば?

 





8.東京都・東京支部代表

杉並学院・菊華女声合唱団

(女声24名・3年ぶりの出場・
 杉並学院・菊華混声合唱団としては
 第64回大会以来5回目の出場)
(菊華アンサンブルとしては第59回以来7回目の出場)
(※リンクは菊華アンサンブルHPのもの)


3年前は課題曲に、なかにしあかね「木のように」 、自由曲にRihards Dubra「Ave Regina Caelorum II」「Laudate Dominum」を演奏され。

オシャレでしたよねー。

課題曲、言葉の扱いも良かったです。
自由曲もピアニッシモからの歌い分け、
OG合唱団らしくパートごとの統一感も良い。

透明感のある声は好み!

…などという感想がありました。

 
今回の演奏曲は課題曲F2 Kantat till ord av W. von Konow(Walter von Konow 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲Ēriks Ešenvalds「LUX AETERNA」
Joan Szymko「HODIE」

エセンヴァルズは穏やかな流れから徐々に盛り上がる、この作曲家特有の美しさを湛えた作品。
ジョアン・シムコーの作品はリズミカルな旋律が魅力です。
きっと杉並学院・菊華さんに合っているのでは!


東京支部大会を聴かれた方の感想では 

 杉学菊華、とっっっても良かったですよ!
今回はまず選曲が良くて、特にエシェンヴァルズのLUX AETERNAは温もりある響きが広がって作品の幻想的な世界観にホール全体が包まれるようでした。
今年は菊華アンサンブルの演奏会にも行ったのですが、その時の雰囲気をコンクールでも再現したような印象です。
良い意味で例年のコンクールっぽさがないというか、ミニコンサートのようでした。

勿論統一感あるアンサンブル力や豊かな響きを生む発声などの基礎力は相変わらずの高さで。
それが表現の方向に最大限に活かされたような演奏だったなと思います。

 

ほうほう。このエセンヴァルズの作品、ちょっと聴いてみましょうか。



なるほど、良い曲!
「ミニコンサートのよう」との感想から、今回の演奏にも期待が高まります!




 



昨年、圧倒的票数で観客賞1位!
いつも観客の心に響く演奏の団体と言えば?


 

 

 

 

 


9.長野県・中部支部代表

合唱団まい

(混声23名・11年連続出場・第49回大会から17回目の出場)


昨年、課題曲G1、自由曲に信長貴富「不完全な死体」から「IV.歌曲」「V.不完全な死体」、「ヒスイ」を演奏され、投票や座談会でも熱い感想が並んだまいさん。


泣いちゃいましたよ。
もう、「まい劇場」開幕!

魂を鷲掴みにされました。
何故か、涙が溢れました。

ソリストさんがもう合唱とか歌以前に、しんとしみる優しい優しい声で、何時間か経ったけど思い出すとまだ涙腺が弛む

…などと絶賛が並びました。
さて、今回の選曲は?
団員さんからメッセージをいただきました。

 

 


課題曲G3「蜂が一匹…」(「無声慟哭」より 宮澤賢治詩/林光 曲)
作曲家、林光は自他ともに認める「ケンジニアン」であったといいます。
彼の「無声慟哭」は賢治の最愛の妹トシの死の直後に書かれた「無声慟哭」の5編の詩から「松の針」「白い鳥」「永訣の朝」の3つを選び大幅に刈り込み、更に3編の詩からなる「オホーツク挽歌」の「鈴谷平原」から採ったこの「蜂が一匹…」を加えた4曲で構成されています。
「オホーツク挽歌」はトシの死後、賢治が旅にでた時のことを書いた作品です。
蜂が青空に飛び去る何気ない風景から始まり、解放され和らぐ心と後悔や哀しみが入り混じり揺れている。
飛んでいった蜂はトシだったか。
そして、この曲はこの言葉で終わります。
「こんやはもう標本をいっぱいもって/わたくしは宗谷海峡をわたる」
賢治は旅を経て、日常へ戻って行く心の節目を見つけたのでしょう。
生きていることで感じられるあらゆるよろこびと、喪ったことによるうれいや哀しみ、後悔が混在し、それらを受け入れて生き続けていく。
それでよいのだと。
作曲家の賢治への愛で曲が結ばれていると思っています。

自由曲 混声合唱によるうたの劇場「不完全な死体」より「Ⅰ 書物の私生児」「Ⅵ〈終曲〉流れ星・流れ星」(寺山修司 詩、信長貴富 曲)
東京室内歌劇場の委嘱で2013年に10人の声楽アンサンブルのために書かれたこの作品は、ピアノ、三味線と歌い手で「寺山修司の肖像」を創り上げていくものです。
特に、今回取り上げた2曲は三味線が加わっていることで、独特な寺山修司の空気感が際立ちます。
完全な形で演奏されるのが望ましいですが、コンクールでは時間の制約もあり短縮版でお届けします。
三味線の演奏は、京都出身の三味線奏者 野澤徹也先生。
その艶やかな音色にも是非ご注目ください。

 さ〜て、お立会い!
 三味線の音色に誘われ浮かれた合唱団まいは一体どのようなことになりますやら。
 信長貴富の音楽により鮮やかに描き出される「寺山修司の肖像」と劇団まいの熱演を、しかと御覧くださいませ!!

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2018年3月4日に行われた、CANTUS ANIMAE with 合唱団まい アンサンブルの饗宴 の楽屋裏にて撮影されたものとのこと。




ありがとうございました。
昨年のバードもそうでしたが、毎回まいさんの課題曲は自分たちの歌として自由曲のように演奏される印象なのですが、今回の「蜂が一匹…」もそれが期待できますね。
そして自由曲は昨年好評だった「不完全な死体」から、昨年は演奏されなかった第1曲と終曲の2曲。
しかも三味線との協演!
別の団体の演奏で聴いたところ、三味線とピアノの音色に導かれるように、寺山修司の妖しい世界が広がりました。
「書物の私生児」は「いろは四十八文字を紙に書き/鋏で切ってならべかえてみる」と始まる、シュールレアリスムな詩。
一見、無秩序な羅列の中に、寺山修司の人生が垣間見え。
さらに音楽も歌舞伎、いや、謡いのようなソリストから昭和歌謡、いや演歌?と音楽的にも幻惑されてしまいます。

 


寺山の詩や戯曲の台詞などをテキストにし、「寺山修司の肖像」を立ち現せることをもくろんだ意欲作です。
サブタイトルの「うたの劇場」は、歌を舞台芸術の中で相対化する意図が込められて付けられています。

 

個人の表現力が非常に要求される作品なのですが、昨年のまいさんの演奏からすると、それは保証されたも同然。
「うたの劇場」と題されたこの作品。
みなさん、劇団まいさんの公演を見逃してはいけませんよ!




(明日に続きます)