観客賞スポットライト 大学ユースの部 その1

 

 

マスクを付けて演奏する、しないが活発に議論されるようになり、有観客でのコンクールや演奏会も増えてきていますが、まだまだコロナ禍以前に戻ったとは言えない現状。
それでも暗い話題しか無かった中、少しずつ明るいニュースが耳に入ってきているように思います。

今年で6回目となる「観客賞スポットライト」というこの企画。

 


観客賞とは…?

 

10年前から当ブログで始めた観客賞。
各部門の、全団体を聴かれた方の投票で決定する賞です。

この観客賞の意義を説明しますと。
音楽のプロフェッショナルたる審査員による順位、賞の決定は、それぞれ真剣に誠実に演奏へ向かわれた結果であり、尊重すべきだと思います。

しかし、
「傷はあったが凄く良かった!」
「コンクールに向いてない選曲はわかるけど涙があふれた!」
…などという声を多く聞いていた自分は、
「観客による投票を行ったら コンクールの賞とは違う、新しい価値観が生まれるのではないか?」と考えました。

さらに「この団体が銅賞だったから私は投票する!」…のような判官贔屓を無くすため、投票は審査結果前に締め切っています。

この観客賞に関連付ける形で、団体にスポットライトを当て、ご紹介するのがこの「観客賞スポットライト」という企画です。

 

それでは始めましょう。
今年の全国大会は三重県・津市!
三重県総合文化センターにて11月19日、20日に行われます。
ちなみに三重県津市での全国大会、大学職場一般の部は2003年(平成15年)以来、19年振り。

2003年の全国大会・・・はい、私も行ってます。
「インターネット老人会」の昔話が今年も語られるかも?

三重県総合文化センター 広場より大ホール中ホール Photo by Nodaさん

第1日目、最初の部は大学ユースの部。
練習するにも厳しい環境の中、はじめましての団体が2団体。
ちょっとお久しぶり、常連さんが計10団体揃いました。

 

 


それでは2022年三重全国大会。
最初の団体は昨年チャンピオンのこの団体です!

 

 


1.山梨県・関東支部代表

 

都留文科大学合唱団

https://twitter.com/tsurubun_chorus

(混声42名・14大会連続出場・第51回から15回目の出場)

 

昨年は金賞・文部科学大臣賞(第1位)を受賞。
当ブログ観客賞でも第1位と実力と人気を兼ね備えた団体です。

昨年は

 

言葉、日本語のさばき方が凄く上手い

 

歌心がとてもあり、課題曲含めた3曲の1ステージと感じさせる構成力

 

全体を通して洗練された大人な演奏に感動しました

 

……という感想がありました。

 

都留文さん、昨年は64名と人数が多かったのですが、残念ながら今年は団員数が少なくなっています。
しかし自由曲1曲目、スロヴェニアの作曲家アンブロジュ・チョピ。
天におられる我らが父(Our Father)への敬虔な祈りのなかに熱い感情があふれ、とても聴き応えがある曲なんですが、なんとダブルコーラス・2重合唱の作品!
男声の人数も減ってしまった中、なぜこの作品を選ばれたのでしょうか?

団員さんからメッセージをいただいています。

 

 

こんにちは!都留文科大学合唱団です。
今年度もこのような機会をいただき大変嬉しく思います。

 

コロナ禍が始まった頃に入団した学年が幹部学年となり、対面での練習が全く許されないもどかしい時期を乗り越えて、今も多くの制約が残る中、ここまで活動を続けられることができるのは、多くの方々の支えがあるからこそなのだと、改めてこの場で感謝申し上げます。

 

今年の文大合唱団の課題曲はG3「草原の別れ」です。
この作品はかつての愛唱歌ともいえるべき作品で誕生は随分前となりますが、未だ多くの心を捉える作品であり、都留文が演奏すると流石に違う、と聴衆の皆様にご納得いただけるまでの仕上がりを目指し曲と向き合ってきました。
シンプルではありますが、美しく仕上げるのは並大抵ではない作品であることも魅力的な作品です。

 

自由曲は、

「Otche nash (Our Father)」作曲:Ambrož Čopi 
「Alleluia」作曲:Elaine Hagenberg

の2曲を演奏いたします。
今年度の当団は昨年に比べ、全体の人数と男声の数が減っています。
しかし、自由曲1曲目で2群合唱を取り入れたのは、顧問・常任指揮者の清水雅彦先生の「皆なら、皆となら、やれる、やりたい」というお言葉があってこその決断でした。
コロナ禍の終息が見られず制約があり続けることへの、また今まさに戦禍にある地が存在することへの怒り、そして平和、平穏への祈りを込めるに相応しい作品が今年度の自由曲2曲であります。

 

私たちが歌っている今この時間も、コロナ禍による辛さや苦しみ、戦禍における想像できないほどの悲惨さが現実にあります。
私たちにできることはやはり、歌を歌い続けることなのだと思います。
歌える環境にある幸せに感謝し、応援してくださる皆様、支えてくださる多くの方々に感謝し、世界中の平和を願い演奏いたします。
今年の文大サウンドをどうぞお楽しみください!

 

関東支部大会後の写真ということ。


ありがとうございました。
清水先生の「皆なら、皆となら、やれる、やりたい」というお言葉、とても心に響きますね。
都留文さんは昨年は大学ユース部門のトリ、最後の出演順だったのですが、今年は最初、1番目です。
でも心配はしていません。
4年前の札幌での全国大会、朝10時代に最初の団体である都留文さんがステージに出られて。
それでも朝10時とは思えないほど澄み切った声を冬のキタラホールに響かせてくれ
「都留文さんが朝一で良かった!」と仲間内で喜び合った思い出があります。
そのときの団員さんはもう在籍されていらっしゃらないとは思いますが。
先輩に続き、津のホールに祈りのこもった歌声を、そして最後に美しく「アレルヤ!」を響かせていただきたいと願っています。

 


続いては初出場の団体です。

 

 

 


2.東京都・東京都代表

 

中央大学混声合唱こだま会

https://twitter.com/ChuoKodama

(混声33名・初出場

 

初出場おめでとうございます!

 

「こだま会」と改名されたのが1955年(昭和30年) と歴史ある団体。
YouTubeのチャンネルで演奏を聴かせていただいたのですが、若々しい生命の躍動と、知性に基づく端正な音楽が同居する魅力的な演奏と感じました。

こだま会さんの演奏曲は

 

●課題曲
Gaude virgo, mater Christi
作曲:Josquin des Prez

●自由曲
混声合唱組曲「鳥のために」より
「木」
作詞:山崎佳代子
作曲:松下耕

「木」は旧ユーゴスラビアの内戦を記したテキスト。
現在の世界情勢と重なる箇所が多いと思われる作品です。
団員さんからメッセージをいただきました。

 

 

コロナ禍で多くの団が苦しんでいる中、私たちは多くの新入会員や演奏機会に恵まれ、ついにこだま会史上初となる全国大会出場となりました。
これは、日々森永先生と共に音楽を追求してきた我々の努力を認めていただいた結果であり、とても喜ばしく光栄なことだと思っております。
大会当日に向け、さらなる研鑽を積み、皆さんにその成果をお届けできたらと思います。
以下、常任指揮者である森永淳一先生より、演奏曲につきましてコメントを頂きました。

 

課題曲は、盛期ルネサンスを代表する作曲家ジョスカン・デ・プレの作品。
ルネサンス期の作品は譜面からは想像できないくらい深く、高い技術を必要とするもので、経験のない合唱団で選曲するには勇気と覚悟が必要です。
我が団も音取りまでは比較的すんなり。
でもその先が案の定厳しい期間が続きましたが、作品に寄り添い、向き合った末、大会の2回前の練習でようやく作品が自分たちの音楽として感じられるようになりました。

 

自由曲。邦人アカペラ作品に挑戦してみたい、そう考え、曲を思案していたとき、ヨーロッパ東部で痛ましい争いが勃発しました。
日々伝えられる凄惨さ、理不尽さ、怒り、悲しみ。打ちのめされながら、頭に浮かんだのが「木」。
そしてそれが収められている「鳥のために」という作品。
この曲をこだま会の学生たちといま演奏したい。そう思い選曲しました。
音取りは決して楽なものではありませんでしたが、乗り越えた先にある音楽は、やはりいま取り組むべきだったと確信しています。
この大きな挑戦が認められて、全国大会に推薦していただいたことはとても大きな励みになりますし、大きな舞台で発表できることを心から楽しみにしています。

 

 


ありがとうございました。
常任指揮者の森永淳一先生。
実は20数年前に松下耕先生の合唱団を訪問したとき、コンサートマスターとしていろいろお話を聴かせていただいた思い出があります。
当時から森永先生は松下先生や団員さんから信頼が篤く、団内指揮者としても非常に優れた能力を示されてました。
松下先生はコンクールを引退されましたが、その薫陶を受けられた森永先生が、松下先生の自由曲で全国大会初出場というのは、とても感慨深いですね。

なかなか大学の部では演奏されないG1:ジョスカン・デ・プレ。
そして難曲の「鳥のために」と森永先生が「大きな挑戦」と語られる作品。
何かに挑む姿は、精一杯伸ばした指の先を、未来を見せてくれると信じています。
初出場の勢いのまま「こだま会ここにあり!」と存在の大きさを示して欲しいと願っています。
がんばってください!

 

 

(次回に続きます)