観客賞スポットライト 大学ユースの部 その3

 

 

 

 

飯南高校のハナノキ(松阪市)
提供:三重フォトギャラリー


青森で行われている全国大会の配信を観ながらこの記事を書いているんですが。
(高校生、みんな上手いなー!)
演奏中のマスク、着用か否かの議論はさておき、着用したときのマスクのズレが気になりますよね。

この記事で「マスクがずれない工夫」という文を書きました。


「おんがく広場」の第191号、加藤良一さんが書かれた方法。

https://www.facebook.com/photo/?fbid=5672121672876967&set=a.111355925620264


 

 

 

○平面型では無く、立体型のマスクを使用

 

○絆創膏の接着面を表にし、輪にしてマスク内側中央の鼻に当たる部分に貼る

 
両面テープより、絆創膏は肌に優しいし適していると思います。
マスクのズレに悩まれている方は是非とも試してみて欲しいですね。
転載をご承諾下さった加藤さん、ありがとうございました。

 

 

今回は連続出場の名門男声合唱団さんからです。

 

 

 

 

5.兵庫県・関西支部代表

 

関西学院グリークラブ
https://twitter.com/Glee_Kwansei

(男声44名・13大会連続出場・第59回大会から15回目の出場
 第1回大会からは29回目の出場)


11回の連続金賞受賞、コンクール以外の活動も活発でまさに「名門」という名にふさわしい男声合唱団です。
昨年の感想では

 

 

第一声から洗練され磨かれた声に参りました!


自由曲:間宮芳生「艫」「引き念佛」。
何度もこのコンポジションを演奏してきた伝統の力と
今回演奏することで生まれた新鮮さが上手く噛み合っていて。
全体にスマートな魅力ある演奏でした。


背景の音色が鮮明でこれまでに聞いたことがないコンポⅢ。
古典のこの曲から新たな魅力を引き出した。

 

……などととても好評でした。

 

 

関学さん、今年の演奏曲は?
部長の森さんからメッセージをいただきました。

 

 

皆様はじめまして!関西学院グリークラブ部長の森と申します。
このような場を提供していただき誠にありがとうございます。

昨年度に引き続き、関西の代表として全国大会に出場できますことを大変嬉しく思います。

さて、我々が演奏する曲を紹介いたします。
課題曲:M2 Frühlingsglocken(「6 Lieder」から)/Robert Reinick 詩 Robert Schumann 曲

関西学院グリークラブは課題曲でM2を選ぶ風習があるのでしょうか、今年も何年か連続でM2を演奏いたします。
技術顧問をしていただいております広瀬康夫先生曰く「我々に合っている」のだそうです。
今年のM2はドイツ語ということで、とにかく言葉の子音とフレーズ感を意識して練習に励んできました。
課題曲の中では比較的長い方ですが、皆様を退屈させない魅力的な演奏をお届けいたします。

自由曲:Agnus Dei=空海・真言・絶唱/千原英喜 曲

我々の学生指揮者がこの曲の初演を聴き、自分の団でも演奏したい!と思ったのがこの曲を選んだきっかけです。今年の「東西四連」にて初めて演奏し、さらに磨きをかけてコンクールに持っていきます。
この曲の男声版を聴くのは初めてという方が多いと思います。男声の響きに多くの楽器が加わり、我々にしか出せない混沌とした世界観を表現いたします。ぜひご期待ください。

以上が演奏曲となります。
コロナの影響等で年々部員数が減り、数年前までの関学グリーが持っていた大人数での合唱の魅力というのは薄れたかもしれません。しかし、一人一人が役割を持ち全員が全力で歌い上げる、今の人数でしかつくれないハーモニーもあるはずです。
コロナ禍を経て進化した、新たな「関学トーン」を楽しんでいただければ幸いです。

関西合唱コンクールの本番直前に舞台裏で撮影したものということ。

 

 

森さん、ありがとうございました。
課題曲はM2のシューマンと、3番目に出場の北海道大学合唱団さんと同じなので聴き比べも楽しそう。
3年前の京都大会でも課題曲シベリウスが重なり「総合力の北大さん、素材の良さが光る関学さん」などという感想も。
関学さんからは一聴して唸ってしまう、良くブレンドされ鍛えられた発声の力を感じます。

自由曲のAgnus Dei=空海・真言・絶唱。
混声版は2010年に作曲され、この全国大会でも何度か演奏されたことはあるのですが、男声版の全国演奏はこれが初めて。
2019年、立命館大学グリークラブさんと明治大学グリークラブさんによって委嘱初演されたそうです。
たまたま合唱連盟の機関誌「ハーモニー」秋号、「新刊楽譜」というページで指揮者:清水敬一先生がこの男声版を紹介され、こう記されていました。
(前略)私は今年(2022年)6月関西学院グリークラブ(指揮は広瀬康夫さん)の演奏で聴きました。素晴らしい演奏で、もともと男声のために書かれたと思わせるものでした。(後略)」と賞賛。
虚空蔵菩薩真言、光明真言、Agnus Deiをテキストにし、男性の語りから始まり、鳴り物も入る演奏効果が高い曲です。
清水先生は作品について、こうまとめられていました。
最後の部分では安息と幸福と平安へのグローバルな祈りとしてAgnus Deiが歌われます。
森さんが書かれたように

「一人一人が役割を持ち全員が全力で歌い上げる、今の人数でしかつくれないハーモニー」

進化した新たな「関学トーン」で、全力の祈りを歌い上げて欲しいですね。

 

 

 

 

 

続いては東北からこちらの団体です。

 

 

 


6.宮城県・東北支部代表

 

ジュニア&ユースコーラス“Raw-Ore”
 https://twitter.com/raworechorus

(混声42名・4年ぶりの出場・第72回大会から3回目の出場)


2006年創団、仙台市南材木町小の合唱団団員や卒業生で結成されたというロー・オーレさん。
「原石」という意味を持つこの団体。

4年前の出場時には自由曲で千原英喜「牡丹圏」を演奏され

 

小学生から大学生までの幅広い年齢層のメンバーが、それぞれの声の持つ「良いところ」を結晶させた豊かなハーモニー、素晴らしかったです。


声に芯があり、魅力がある。
男声も若いのになんであんなに深い声が出るのか?!


課題曲は一番歌詞に合った声質・表現力。
自由曲は感動のあまり演奏直後に水を打ったような空気感。
素晴らしい演奏でした。

 

……など、とても好評でした。

 

今年の演奏曲は?
Raw-Ore団長さんからメッセージをいただきました。

 

 

こんにちは!
ジュニア&ユースコーラス"Raw-Ore"(ロー・オーレ)です。
今回もご紹介していただきありがとうございます。

私たちは宮城県仙台市を拠点に活動している、下は中学生、上は大学生や社会人と、幅広い年齢の団員が所属する混声合唱団です。年齢層は幅広いですがみんな音楽や歌うことが大好きで、曲と真摯に向き合いながら楽しく練習に励んでいます。

課題曲であるG3「草原の別れ」は、歌えば歌うほど新しい発見がある歌い甲斐のある曲です。都会を離れ故郷に戻ってきた主人公を、また新しい未来へ踏み出せるよう豊かな自然たちが後押しするような応援歌。1番と2番での音程の変化が少ないため、平坦にならないよう歌い分けるのに苦労しました。団員の年齢層が幅広く声質もさまざまなので、声色をまとめる練習をみんなで工夫しながら行いました。情景を表す詩がたくさん使われているので、それを聴いてくださる皆様が容易に思い浮かべられるよう歌います。

自由曲である「Ⅱ.新しい風のように、爽やかな星雲のように」(混声合唱とピアノのための組曲「わたくしという現象は」より)は、宮沢賢治が晩年に学生諸君へ宛てた文章を千原英喜先生が作曲したものです。『諸君よ 更にあらたな正しい時代をつくれ』と、時代に新しい風を吹かせる存在になってほしいと熱く綴られた文章が詩に使われています。畳み掛けるように言葉が羅列している後半では、日本語ラップからインスピレーションを受けようと試行錯誤したり、日本語の抑揚を確認するためにみんなで詩を読み合わせたりしました。また、曲への解釈を深めるために、宮沢賢治の故郷 岩手県にある宮沢賢治記念館に代表が足を運び、観たものや感じたことを団員に還元してくれました。熱血教師を彷彿とさせる詩と旋律に気持ちを乗せ、力強く繊細に丁寧に歌います。曲冒頭の熱い朗読にもぜひご注目ください。

今年は4年ぶりの全国大会出場ということで、団員一同やる気に満ち溢れています。3度目の全国大会、聴いてくださる皆様に感動を与えられる演奏をしたいです。

宮城県大会後に撮影されたものということ。

 

 

団長さん、ありがとうございました。
課題曲「草原の別れ」の奥深さを感じられる演奏になりそうで楽しみですね。
ハーモニー誌での「名曲シリーズへのアプローチ」で作曲家の新実徳英先生が
1番の歌詞の色彩性、いずれも明るいイメージ。
 2番では、見えるものから見えないものへと模写が転じます。つまり風景が外から内へと移っていきます
と書かれているのですが、そのような繊細で生き生きとした演奏が期待できそう。

「わたくしという現象は」は一橋大学津田塾大学合唱団ユマニテさんが2012年に委嘱初演された作品です。
全3曲からなる作品で、団長さんが書かれるように「Ⅱ.新しい風のように、爽やかな星雲のように」は男性の朗読から始まり、背後に爽やかなヴォカリーズが流れます。
3曲中の2曲目というと、穏やかな雰囲気の作品が多いのですが、この作品は朗読が終わると、合唱が畳み掛けるような言葉でどんどん熱く盛り上がって行きます。

「下は中学生、上は大学生や社会人と、幅広い年齢の団員」
まさに宮沢賢治の言葉のように「この颯爽たる諸君の未来圏」を感じさせるロー・オーレさん。
賢治の熱いメッセージを、千原先生の魅力的な音楽が彩るこの作品。

 

ああ諸君はいま
この颯爽たる諸君の未来圏から吹いて来る
透明な風を感じないのか

「生徒諸君に寄せる」より 宮沢賢治

 

ロー・オーレさんの演奏がホールを吹き抜ける「透明な風」になりますように。

 

 

(次回に続きます)