観客賞スポットライト 大学ユース部門 その3




今回も2団体をご紹介します。





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五重塔 Photo by 超国家主義の論理と心理さん


 


最初の団体は、昨年のチャンピオンの登場です!




5.兵庫県・関西支部代表

関西学院グリークラブ


(男声72名・11年連続出場・第59回大会から13回目の出場
 第1回大会からは27回目の出場)



昨年も金賞、そして1位相当の文部科学大臣賞も受賞され、さらに今年、なんと創団120周年という伝統ある関西学院グリークラブさん。
日本最古の男声合唱団です。
昨年は「課題曲のシューベルトが柔軟でとても良い演奏だった」
「ノーブルなトップテナー」
「パートの継ぎ目が無いような優れた男声のハーモニーに魅了されました」と好評でした。
さて、今年の課題曲と自由曲は?

学生指揮者の石川さん、部長の林さんからそれぞれメッセージをいただいています。


関西学院グリークラブです。
このような機会をいただき誠にありがとうございます。  

今回私たち関西学院グリークラブが課題曲に選んだのは、M2「Ne pitkän matkan kulkijat(はるかな旅人たち)」です。
最初に合唱名曲シリーズNo.48に収録されている男声の課題曲を聴いたときに、我々が歌えるのはこの曲しかないと運命のようなものを感じ、歌うこととなりました。
しかし、練習の道のりはまるで「はるかな旅」でした。
特にウムラウトは奥が深く日本語で説明することが非常に難しかったのですが、部員一人一人が主体的に考えながら一丸となってフィンランド語の発音と向かい合ってきました。
練習を重ねれば重ねるほど改善点が多く出てきましたが、困難を乗り越えた先に表現されるフィンランドの情景を、我々関西学院グリークラブが京都ロームシアターに鮮やかに映し出したいと思います。(120代学生指揮者 石川龍太)

無数にある曲の中で、なぜコンクールで『Duhaupas』なのか。
その問いの答えは、「我々にしか奏でることができない世界観がそこにあるから」です。
この曲集を関西学院グリークラブが全国大会で演奏することは、金賞1位を超える価値があると思っております。
譜面の音符を音として奏でるだけでなく、様々な人の想いが詰まったこの楽曲には、弊団でしか表現することができない世界観があります。
コンクールで演奏する演者として、譜面の音や指示を忠実に再現し、作曲者の想いを正確に聴衆に届けることはもちろん大切なことですが、それだけでは「今」この瞬間に、我々がこの音楽を演奏している意味がありません。
この時代に演奏する人の心が、当時の作曲者の想いと共鳴することで、永遠に語り継がれる芸術作品が誕生すると思っています。
弊団が本邦初演してから約70年。
「今」この時代だからこそ奏でることができる『Duhaupas』はどのような音楽か。
譜面の音を超えた、令和の関西学院グリークラブが奏でる芸術作品をお楽しみください。
(120代部長 林浩平)

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関西支部大会での写真ということ。

 


石川さん、林さん、ありがとうございました。

男声合唱と親しいシベリウスの演奏ももちろん楽しみですが、なんと言っても自由曲のDuhaupasに注目です。
19世紀の作曲家Albert Duhaupasが作曲された“ MESSE SOLENNELLE”(荘厳ミサ)は男声合唱の名曲と知られています。
この曲を調べているうちに↓のサイトに当たりました。

関西学院グリーさんがこの作品を日本で初演されてからの歴史は、そのままこの全日本合唱コンクールや男声合唱の歴史と言い換えても良いくらいです。
なんと、全日本合唱コンクールの第1回で、関西学院グリーさんはこの「MESSE SOLENNELLE」から「Kyrie」を演奏し見事優勝!
その後年代を経てもさまざまな指揮者と多くの名演を残されています。

選曲の理由に林さんが「我々にしか奏でることができない世界観がそこにあるから」と記された言葉に重みが増します。

「Gloria」という典礼文、神を賛美する華やかな音楽から始まり、後半の切ない優美さなど、今でも聴く者の心を離さない名曲と言えるでしょう。
伝統を尊重しながら今を生きる関西学院グリーのみなさんが、私たちに永続する芸術音楽の素晴らしさを味わわせてくれることを期待しています。









25分の休憩後、毎回観客賞では上位のこちらの団体です!








6.山梨県・関東支部代表

都留文科大学合唱団


(混声50名・12年連続出場・第51回から13回目の出場)



昨年は朝1番の出演にも関わらず、ハンデを感じさせない澄み切った音をホールに響かせた都留文さん。
「音を大切にしている合唱」
「悲しい表現でも発声は美しく、悲しい感情だけが伝わってくる。そこが素晴らしい」などの感想がありました。
男声の割合が毎年少なめなのですが(今年はなんと9名!)それを感じさせない精緻なアンサンブルと知性を感じさせる団体です。
今年は何を選曲されたのでしょう?

団員さんからメッセージをいただきました。

 


都留文科大学合唱団です。
今年もこのような機会を頂きありがとうございます。

私たちは山に囲まれた自然豊かな土地で、顧問・常任指揮者の清水雅彦先生のご指導のもと活動しています。
コンクールや各演奏会を通して合唱経験の有無に関わらず、個人としても団としても日々成長してきました。
今回選んだ課題曲「蜂が一ぴき…」では作詞者・宮沢賢治の樺太での様子が描かれています。
最愛の妹を亡くした宮沢賢治は何を思って旅をしたのか、そして詩のなかに登場する"蜂"とは何を表すのかなど、私たちの演奏と共に皆さんにもぜひ考えていただけたらと思います。

自由曲は「O Gloriosa Domina」「WAR」を演奏します。
この2曲はIvo Antogniniによって作曲されました。
Ivo Antogniniはスイス出身の作曲家で、彼の作品は様々なコンテストで評価され、多くの人々に演奏されています。

「O Gloriosa Domina」は救世主キリストをこの世へもたらした聖母マリアへの賛美を表す曲です。
この曲では「Gloriosa=栄えある」という言葉が、その意味を噛みしめるがごとく繰り返し紡がれます。
序盤のゆったりとした曲調から一変し、疾走感のある中盤を経て、聖母マリアそしてキリストの栄光を高らかに歌い上げるという曲構成も魅力的です。

2曲目の「WAR」は、アイルランド戦争詩人・兵士であったFrancis Ledwidgeによる美しい詩から発想を得て作曲されました。
詩の中の「I」を私たちは戦争そのものと捉え、Francis Ledwidge自身がその戦争体験のなかで形作った戦争観をオーボエとのアンサンブルにより鮮やかに歌い上げます。

全国大会では、関東大会から進化した、より緻密な文大サウンドで3曲それぞれの魅力をお届けします!
ぜひ会場で私たちの演奏をお楽しみください! 

   

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関東支部大会での演奏後ということ。

 



ありがとうございました。
課題曲G3の「蜂が一ぴき…」は大学ユース部門では他に九大さん、室内部門でい~すたんさんとまいさんの4団体が演奏されるのですが、この一見シンプルな、林光先生独特の音楽を都留文さんがどう演奏されるか、とても興味があります。

自由曲の作曲家:Ivo Antogniniの作品は近年、この全日本合唱コンクールでも多く演奏されていますね。
団員さんが書かれたように「O Gloriosa Domina」は「序盤のゆったりとした曲調から一変し、疾走感のある中盤」。
そう、この「疾走感のある中盤」がなんともオシャレで聴き入ってしまいます。
さらに「WAR」はオーボエとの協演。
Antogniniらしい軽やかさもありながらオーボエとアンサンブルする、鮮烈なサウンドと音楽!

みなさんご存知のように、今年の台風第19号は各地で大変な被害をもたらし、関東支部大会も開催を危ぶまれました。
都留文さんも当初は電車で行く予定をバスに変更し、予定よりかなり遅い本番になった上での全国大会出場になったそうです。

「関東大会から進化した、より緻密な文大サウンド」。

困難を乗り越え、万全の状態で歌われる京都での都留文さんの演奏は、きっと素晴らしいものになると確信しています。




(明日に続きます)