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昨年読んで良かったノンフィクションなどベスト10 その1




今回は第10位から8位まで。

 


第10位
久住昌之「野武士、西へ 二年間の散歩」

野武士、西へ 二年間の散歩

野武士、西へ 二年間の散歩

 

 


地図を使わず、
ネットで調べもせず、
西方面の目的地へ徒歩で行き、交通機関を使って帰り、
次は前回の目的地から歩き始める、一風変わった旅行記。
野武士という題には、男臭くぶっきらぼうに!
そんな思いがこめられているそうだが、
実際に歩いてみると理想とのギャップが楽しい。

名所にこだわらず、歩くスピードで変化する風景と心情。
孤独のグルメ原作者らしく、食事シーンはシズル感たっぷりの模写にニヤリ。
だいたい月1回の散歩で久住氏は東京から2年間をかけて大阪へ着く。

久住氏はあとがきでこう書く。


情報を得ることは「わかる」こととは、全然違う。
方法を知ることは、新しいものを作れることとは、全然違う。
自分のからだの深いところで、新しい感情が生まれないと、
オリジナルなものを作り出すことはできない。
それには心を動かされる、ある種の感動が必要だ。
でもそれは大袈裟なこと(たとえば海外の秘境を旅するとか)
である必要はまったく無い。


ネットの世界に没入し「わかった」気になっている自分にとって
改めて周りの世界を見つめ直す視点を教えてくれた本でした。

 

 

 

 

 



第9位
岡本茂樹「反省させると犯罪者になります」

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

 

 


刑務所での累犯受刑者への更生支援なども行なっている著者。
非常にざっくりした補足をこの刺激的なタイトルにすると

 「(過ちが何故起こったのか、自分の心を見つめずにすぐ)
  反省させると
 (抑圧が溜まりいつか)犯罪者になります」…という意味。

つまり過ちを起こした自分の心と向き合い、
その原因やストレスに気づくことから、
真の反省は始まるのではないかと著者は主張する。

他にも被害者の心情ではなく、
加害者の心情を考えさせるなど、
いじめの場合に応用できそうなことも。

さらに犯罪者への厳罰化や自己イメージを低くさせることは、
出所後の再犯率を下げるためにはむしろマイナスではないか、
という考察も興味深い。
山本譲司の名著「累犯障害者」のテーマにも共通するが、
犯罪者のほとんどはいずれ世に出る。
では、再犯率を下げるための方法は?
そういう観点は非常に重要かな、と。

 

 

 

 




第8位
杉江由次「サッカーデイズ」

サッカーデイズ

サッカーデイズ

 

 

浦和レッズを愛する71年生まれ、
本の雑誌社営業職2児の父、杉江さん。
小学校5年生の娘が少女サッカーチームに入り、
杉江さんがそのコーチを頼まれることからこの本は始まる。
杉江さんはコーチ経験も皆無で、
中学のサッカー部ではレギュラーになれなかった人だ。
娘さんも運動は得意な方ではなく難しい年頃にさしかかり、
コーチとして、父としてどういう態度を取るか悩む杉江さん。
さまざまな衝突やトラブルがあり、チームの敗退があるが、
娘さんの成長する姿に、杉江さんのサッカー少年時代を重ねていく。
その姿がどうにも泣かせるのだ。

子を育てることは、ふたたび人生を生き直すこと。
まさにその言葉のままの本。
娘の最後の試合を観に来た杉江さんの母親へ、
負けて、しかも活躍できなかった我が娘を杉江さんが嘆くと、
杉江さんの母親は目を見開き、強く言い返すのだ。

「みんな最後まで一生懸命戦っていたじゃない!」
「あんたね、浦和レッズの試合をあれだけ見てなんにもわかってないのね。
 一番大切なことは勝つことじゃないでしょう。
 最後まであきらめずに戦うことでしょう」
「私はね、あの子のことを誇りに思うわよ。
 あんなカッコいいサッカー選手いないわよ」 

杉江さんは中学生の時、
母親にこう言って欲しかったんだろうなあ…。
爽やかな読後感の、昨年最高の泣かせ本。
勝てなくても、最後まであきらめず打ち込める何かが、
あなたの傍らにありますように。




(第7位からに続きます)