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宝塚国際室内合唱コンクール 無差別級グランプリ大会感想 その1

 

 

さて、コンクールが終わった次の日、7月27日の午後1時。
またベガホールへ向かいます。

第30回記念 宝塚国際室内合唱コンクール
”無差別級グランプリ大会” ~聴衆審査による~ のため。

 


会場はほぼ満員。

 

 

 

 

 

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入場時にこういう用紙を渡されて。



「聴衆審査員としてご参加される方は、
 必ず全団体をお聴きください。
 全団体の演奏終了後に、
 審査の時間を設けます」…とのこと。


聴衆が審査員のコンクールに参加するのは初めての経験。
楽しみだ!

司会は元テレビ局のアナウンサーである羽川英樹氏。
コーディネーターは日下部吉彦氏。


この演奏会、いやグランプリ大会、とても良かったです。
例年コンクールを聴いたら次の日は帰っていたのだけど
毎年ここまで水準が高く、
熱気あふれる演奏だったなら
今まで非常にもったいなことをしていたな~と。

演奏の質が一段も二段も上がっている団体ばかり。
選曲は昨日と全く違うものを要求されるので
ホールトーンを掴んだことによる経験値?
慣れない長旅から体調の回復?
予選から聴衆審査に変わってある意味ふっきれた?
…などと推測がいくつか浮かびましたが、不明。
とにかく、8団体どの団体も昨日のコンクール以上の水準!




8団体の出場順から感想を。



1.Russian Singers(ロシア・男声)

Russian folk songの「Wide field」から。

え! 昨日の支えが頼りない声とは全く違う!
堂々とした力強い男声の響きが会場に鳴り渡ります。
曲もロシア風の物悲しさを感じさせ、
いきなり異国へ誘うように。

2曲目のP.Como「Magic moments」
ガラリと雰囲気を変えて軽やかで楽しいポップス調の曲。

いやあ、どの曲も歌いこんでいるし、
パフォーマンスとしても説得力があるなあ、と思っていると
あっという間に最後の曲。
「Mix of Russian folk song」と注釈が付いた
「Russian feasting」です。

力強いユニゾンから始まり
軽快に速いテンポ、ふざけたような表情、
ソリストの説得力ある歌唱…と多彩で充実した演奏。
途中、「サカルトベロ(グルジア)の奇蹟のポリフォニー」を
連想させる音が鳴った時
(やっぱりロシアだ! 繋がってるんだ!!)
と心の中で喜びの声を上げておりました(笑)。
聴けて良かった!

 

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2.アコール《EST》(三重・混声)


選ばれたのはEST女声合唱のアコール《EST》なんだけど
このステージで出場はVocal ensemble《EST》混声(笑)。

しかも大会最多40人ほどの出場。
(宝塚のこういうユルさって、嫌いではない…)

向井正雄先生の指揮で
まず三善晃先生「地球へのバラード」より「夕暮」を。


「誰があかりを消すのだろう 夕暮」


優しい、まるで巨人の手に包まれたような温かい響きが会場中へ広がる。
《EST》シンガーズの演奏で感じた時のような
ESTらしさ、向井先生の個性はそれほど前に出ない。

旋律が繋ぐ横の流れが夕闇へ沈む時間の経過を感じさせ。

今までのESTに無い洗練された空気。
一歩引いて三善先生の描いた世界を
ありのままに表出しようとする真摯な演奏に、少し涙が。


続いてStephen Leek「Wirindji」
女声の緊張に満ちたぶつかる音から
男声が入り長和音の生命が伝わるリズム。
声は切り口鋭く、さまざまに変化し、
ついには長く続く大音量の叫び声!
そして訪れる静寂…。

作曲家の名前からオーストラリアの大自然の変化をモチーフ?
などと思っていたら司会の羽山氏と向井先生のやり取りでは

「オーストラリアの原住民:アボリジニの民話で
 女がドアを開けて男をおびき寄せ
 愛し愛され・・・そして女が男を食べてしまい、
 男は骨となって出ていく」

…なんて筋と聞いてビックリ!

ESTの人数が多かったのもありますが、
音の変化とドラマ性のメリハリが実に効いた良い演奏でした。


 

 




3.安積合唱協会(福島・混声)

Palestrina 「Missa Papae Marcelli」からKyrie

昨日より遥かに練られた演奏と声。
「これが安積合唱協会の音だよな~」と納得の演奏。
アルトはやや平坦さ、音色に違和感がありましたが
演奏の奥にある秘めた喜び、
そしてそれが解放される輝きには魅了されました。


続いてT.L.de Victoria 「O magnum mysterium」

テナーが特に素晴らしい。
そして歌う個人、各パートがそこにあるのではなく、
一丸一体、ひとつの歌う生命体となった時に生じる熱さ。
最後のアレルヤの高まりも一気に昂ぶるのではなく
自身の熱を確かめるように徐々に解放し、
ゆっくりと高みへ昇っていくさまに、
聴く自分の心もしっかりと同調していました。

秘めた、控えめな、抑えた・・・
それが演奏の美質となるのが
安積合唱協会、そして東北人らしさ?なのかな。

 






4.豊田市少年少女合唱団 ユース(愛知・女声)

永ひろこ先生の指揮で。

1曲目はOtmar Mácha「Hoj, hura hoj」

ステージ上に大きく広がって。
良く訓練された均質な声が響きます。
若さゆえ、声に運動性とリズムがあり。
そして山岳地方の呼びかけのソロ。

お、おぉ、なんと澄み切った声…美しい。
会場の空気が一瞬で浄化されます。
ここは宝塚じゃなくアルプスの山々?!(※チェコ民謡です)

いやあ、素晴らしいソリストを含め、
その優しい響きにうっとりの演奏でした。


続いて福島雄次郎「南島歌遊び」より
「その1 版画 - 朝の祈り、収穫、憩い、陽気な娘たち」

この曲が世に知られるようになってから
30年ほどが経つんですねえ。
南島ゆえのエキゾチックさと
短い時間でさまざまに変化する音楽、
そして楽曲としてのまとまりがある良曲です。
おそらく30年後も歌われているのでは。

今までいろいろな演奏を聴いてきたけど、
さて、豊田ユースの演奏は。

ほぉー、これと言って引っ掛かりのある、
いわゆるケレン味のある演奏では無いです。
しかし、間違いのない表現をひたすら磨き上げている。
バランスも完璧で、王道の表現を重ね、そして達する説得力!

なかなかこういう音楽、演奏はできるものでは無いですよ。

つい、何かを加えたくなってしまうのが常だろうし、

さらに音楽としての説得力を持つまで

どれほどの練習の積み重ねがあったか。
とても惹き付けられた演奏でした。

この感想のためにプログラムを見返したら
「すっげー!」…と書いてありました(笑)。





(続きます)