「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2014」(その10)

 

 

 

 

 

 

今日は2年ぶりの団体を2団体、
そして初出場の団体を1団体ご紹介します。

 

 

 



4.東京都・東京支部代表

Combinir di Corista
(34名・2年ぶりの出場・61回大会から6回目の出場)




ぜん 精度がもの凄く高い団体ですよね。


ですよね!
毎年違ったジャンルの曲を演奏していて凄い。


ぜん 2010年の西宮大会、
   ダラピッコラの
   「不幸な結婚をした男たちの合唱」は
   とても良い演奏だった記憶があります。


2年前の出場時は一般A部門1位。
ちなみに初出場の61回大会のみ金賞2位で
その後4年連続金賞1位という凄い団体です。


団のHPでは

レパートリーの「品揃えの豊富さ」にこだわるということから、

コンビニエンスストアーにちなんで

「コンビーニ・ディ・コリスタ」としました

 

という通称「コンビニ」な合唱団。


今年の演奏曲は
課題曲はG1 Salve Regina (Josquin des Pres)
自由曲は混声合唱とピアノのための
「やわらかいいのち三章」より2 (三善 晃)
Northern Lights (Ola Gjeilo)


ピアノと合唱のリズムに
三善先生の言葉の感性への鋭さを感じられる
「やわらかいいのち」の2
そしてヤイロの美しくも神秘的な曲。

コンビニさんが課題曲にG1を。
そして自由曲に邦人作品を選ばれるのは
おそらく初めてのはずです。

なぜこのような選曲をされたのか、
Combinir di Coristaさんからお答えをいただきました。


 

各曲を選曲された理由

 

今年は課題曲で初めて、

ルネサンス作品を選びました。
「苦手なものを克服する」という目標から、
敢えて選んだ課題曲です。
得意ではないジャンルでコンクールに挑戦するのは
非常にチャレンジングなことですが、
そこはどうしても乗り越えたい壁、
ということで「敢えて」選択しました。

課題曲が決まると、
自動的に自由曲の方向性が見えてきます。
団名に由来する
「コンビニエンスストアーのような品揃え」
という看板に偽りのないよう、
課題曲とは180度異なる曲を選曲するのが
コンビニの常になっているからです。
従って、これまでの
「課題曲:邦人作品、自由曲:西洋音楽」という
イメージとはガラリと異なり、
「課題曲:西洋音楽、自由曲:邦人作品」という
組み合わせになり、
自由曲では初めて邦人作品を
取り上げることになりました。
組み合わせにヤイロを選んだのも、
自由曲内でのバランスを考えてのことです。

 

 

 

  なるほど、やはり団名の「コンビニ」から由来する
「(演奏曲の)品揃えの豊富さ」を証明するためだったのですね!

コンクールというものはもちろん勝負という側面があり、
それには自分たちの得意分野を持ってくるのが
勝負としては最善なのでしょうが、
このコンビニさんのように、
「敢えて」「苦手なものを克服する」目標で
選曲される団体も存在するということです。

それでも激戦区の東京支部で
こうして全国大会に出場されてるんですよ?!
いやあ、凄い団体です。

そして、これだけの合唱団を
団員さんと創り上げられた、指揮者:松村努先生へ
「思い出の全日本合唱コンクール名演奏」を
お聞きしました。

 

 

 


「思い出の全日本合唱コンクール名演奏:松村努先生」


私の中で、今でもその感動が蘇ってくる名演、それは・・・
次の出番待ちに袖で聞いた・・・
第65回大会のCANTUS ANIMAEさんの課題曲と自由曲。
コンクールである事を忘れ、
課題曲と自由曲の2曲が完全に宮澤賢治の世界へと
私を連れ去りました。
自分の曲に集中しようにも、
あまりの感動に震えが止まらなかったのを思いだします。
正に歴史に残る名演であったと思います。
終演後の鳴り止まぬ拍手は凄かった。
その中を、ステージに上がるのは
正直、厳しいものがありました。
それも良い想い出です。

 

 

 

松村先生、ありがとうございました。
2012年富山大会での
CAさんの課題曲:林光「鳥のように栗鼠のように」、
自由曲:西村朗「永訣の朝」は
松村先生が仰るように宮澤賢治のテキストを使った選曲。
特に自由曲の「永訣の朝」で、
妹の死を題材にした楽曲の衝撃と緊迫感は異様なものがありました。
ちなみに当ブログでの観客賞1位を受賞。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/20121201/1354367717

それでも、その後に松村先生が指揮された
湘南はまゆうさんの演奏も
人生経験を積まれた女性らしく奥深い繊細な表現で、
またステージを新しくする風の印象があったのを憶えています。



ふたたび今年のコンクールの話に戻りまして。

 


この全国大会に対する目標など。

演奏する3曲は、
世界観も音楽様式も全く異なる作品です。
限られた時間の中で、
別の合唱団が歌っているのではないかと思われる程に、
全く異なる世界を展開し、
それぞれの曲の素晴らしさを最大限に表現できれば...
というのが究極の目標です。

どこまで達成できるかは、
当日の皆様のご判断次第ということで...。

 


Combinir di Coristaさん、ありがとうございました!

 

 

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2014/7/21 の 第7回定演 アンコールの決めポーズ?とのこと。




ひとつのジャンルを突き詰めていく演奏スタイルも
それはそれで魅力がありますが
こうしてコンビニさんのように
毎年違うジャンルの曲へ果敢に挑戦するスタイルにも
惹かれてしまいますし、応援したくなります。

 

別の合唱団が歌っているのではないかと思われる程に、
全く異なる世界を展開し、
それぞれの曲の素晴らしさを最大限に表現できれば


コンビニさんの「究極の目標」、
高松のステージで実現できることを願っています!

















次に出場する団体も2年ぶりの出場です。




 

 

 

 



5.北海道・北海道支部代表

Baum
(50名・2年ぶりの出場・64回大会以来3回目の出場)


Baumさんは2009年に札幌で創立。
指揮は同声部門で出場のHBC少年少女合唱団も
指揮される大木秀一先生。
大木先生は札幌の名門合唱部、
札幌旭丘高校の指揮者もされています。

Baumの団員さんは大木先生のもとに集まった人たちで
札幌旭丘高OB合唱団というわけでは無いそうです。
団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。
大「木」先生を
慕い集まって作られたことによる団名なのでしょうか。


Baumさんの今年の演奏曲は
課題曲はG3 夜もすがら(千原英喜)
自由曲はO Nata Lux(Guy Forbes)
Ilus Ta Ei Ole(Pärt Uusberg)

2006年のヴァンガード合唱作曲コンクールの優勝作品で
美しく、私も大変好きな曲である「O Nata Lux」。
昨年、合唱団こぶさんも演奏されていましたね。


Guy Forbes - O Nata Lux - YouTube

 

 

 

 自由曲2曲目の作曲家Pärt Uusbergの作品は
2012年富山大会で
マルベリー・チェンバー・クワイアさんが
「Kyrie」を演奏されているので
春子さんの解説を引用させていただくと

 


ペルト・ウースベルクは、エストニアの作曲家で弱冠28歳。
俳優・作曲家・合唱指揮者と多彩な才能を発揮し、
2007年に主演したエストニア映画『クラス』は
チェコやポーランドの
国際映画フェスティバルでも表彰されています。
また、エストニア国内で多数の主演男優賞も受賞しています。
俳優活動の傍ら、児童合唱団の指揮者をつとめ、
合唱曲も数多く作曲しています。

 



多彩な作曲家ですね!

「Ilus Ta Ei Ole」は美しさの他に
声の存在感と魅力を伝えてくれる
不思議な奥深い作品と感じました。

 


Pärt Uusberg - Ilus Ta Ei Ole - YouTube



明るく、のびやかな声が魅力のBaumさん。
これらの曲をどう表現してくれるか楽しみです。






 





続いては初出場の団体です!

 

 

 

 

 

 

 

 
6.埼玉県・関東支部代表

scatola di voce
(30名・初出場)


初出場おめでとうございます!
「scatola di voce(スカートラ ディ ヴォーチェ)」とは
イタリア語で「声の箱」という意味だそうです。
2003年に創立された団体です。


演奏曲は
課題曲はG3 夜もすがら(千原英喜)
自由曲は「Domine Deus meus」(Levente Gyöngyösi)
「Stars」(Ēriks Ešenvalds)

1975年生まれハンガリーの作曲家ジェンジェシの
「Domine Deus meus」は現代曲らしい激しいリズムが魅力。
そして1977年生まれ
ラトヴィアの作曲家エセンヴァルズの「Stars」!

…この作品、全国大会では
一般合唱団の演奏で初めての楽器を使っているんですよ。
さて、その「楽器」とは何か?
scatola di voce団員さんにお聞きしました。

 


■各曲の選曲理由について


課題曲は、G3の「夜もすがら」です。
私たちとしては、
千原先生の作品を歌うのは初めてなのですが、
鴨長明の人生観を十全に表現している、
哀しくも美しいこの曲に出会えたことに感謝しながら、
日々練習に励んでいます。
長明のように人生を達観できる境地には
程遠い私たちではありますが、
未熟ながらもひたむきに
この曲と向き合った成果をご覧いただければと思います。


自由曲は、
どちらも今年の6月に開催した演奏会で取り上げた曲です。
今回の自由曲を決める際、
演奏会で取り上げた多くの曲の中から
どれを選ぶか迷いましたが、
その中でも私たちの持ち味を
目一杯伝えられる2曲を選びました。

「Domine Deus meus」(Levente Gyöngyösi)は、
リズム、和声、旋律も難解であるだけに、
繊細な演奏技術が求められます。
その中に散りばめられた、
音の美しさや格好良さをどこまで表現できるのか、
ぜひ多くの方に聴いていただきたいと思います。

「Stars」(作曲:Ēriks Ešenvalds)は、
コンクールでグラスハープを使うことに関して
憂慮すべき点がいくつかあり
(準備の困難さや、
 グラスを持ったまま他の曲を歌わなくてはならないこと等)、
団としてとても迷いました。
ですが、それ以上に
「この曲の美しさをたくさんの人たちに聴いてもらいたい!」
という思いが強く、
今回の自由曲として選ぶことにいたしました。
グラスハープの音色の美しさとともに、
今まで見た中で一番美しい夜空を思い浮かべながら
聴いていただければと思います。

 

グラスハープ!
ごく簡単に言うとワイングラスに水を入れて
グラスのふちを擦って音を鳴らすという楽器です。
高校の部では鈴木輝昭先生の「妖精の距離」という曲で
2回ほど実演を目にしましたが
一般の部の全国大会で使用されるのは
おそらく初めてではないでしょうか。

しかし、その準備や演奏上の困難さを

乗り越えたくなる気持ちがわかってしまうほど魅力ある曲です。

ワイングラスを持つ視覚のインパクトも絶大!


ここで指揮者の森田悠介先生へ
「思い出の全日本合唱コンクール名演奏」について
お聞きしました。

 


「思い出の全日本合唱コンクール名演奏:森田悠介先生」


2002年、第55回の
室内合唱団VOX GAUDIOSA(以下ガウディ)の演奏が、
私にとっての「きっかけ」であり「目 標」です。

ガウディの演奏を初めて聴いたのは、
ちょうどこの年の埼玉県合唱祭で、
私が高校3年生のときのことでした。
どちらかと言うとピアノやオーケストラの方に興味があり、
合唱に関しては日本の高校合唱事情程度しか
興味のなかった当時の私に、
合唱音楽の非常に大きな可能性と
その高みを初めて感じさせてくれた演奏でした。
そのときの衝撃がどんなものだったかは、
筆舌に尽くし難いものがあります。

高校卒業後、合唱の道を志し、
今こうして指揮活動しているのには、
このときのガウディの演奏が影響しているとはっきり言えます。
その後、松下耕先生に師事し、
ガウディのコンマスもさせていただいた経験は、
今何物にも代えがたい血肉となって
私の音楽観を支えてくれています。

半分身内のことではないか、と
私自身も思わなくもないですが、
こうして一度中で歌わせていただいた後に、
独り立ちして指揮活動をしている今なお、
抱いているこの演奏への尊敬の念は、
単なる愛情とか思い入れとか、
そういった類のものではありません。
それは幼いころから抱いていた
「音楽」への憧れにダイレクトに触れるものだと、
感じています。

 


森田先生、ありがとうございました!
2002年びわ湖ホールでのガウディさんの演奏、
私も聴いていまして。
オルバンの作品を非常に洒落た雰囲気で
演奏されていたのが記憶に残っております。
同じく松下先生が指揮をされた
ブリリアントハーモニーと同様に
良い意味で「日本の合唱団らしくない」ものを
感じ取ったものです。

 

 


最後に団員さんからのメッセージです。

 

 
■全国大会への目標、志

私たちscatola di voceにとって、
創設12年目にして今回が初めての全国大会出場となります。

私たちは演奏会でもコンクールでも、
変わらず1曲1曲に真摯に向き合い、
その曲の持つ魅力や素晴らしさを伝えられるように
練習に取り組んできました。
支部大会に引き続いて、
多くの方に演奏を聴いて頂ける機会を得ることができ、
大変嬉しく思っています。

今回演奏する曲目はいずれも

私たちにとっては大きな挑戦でもありましたが、
表現することの難しさを感じつつも、
その魅力に強く心を動かされ、
楽しみながら練習に励んできました。
コンクールという場ではありますが、
何よりも皆様の心に残るような音楽を目指して、
演奏に臨みたいと思います。

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ありがとうございました!
実は森田先生のブログは以前から拝見させていただき、
耕友会さんに在籍されていたことなどから得た
海外の合唱界の知見など、
非常に興味深く読ませていただいていました。

この「日本の合唱コンクール」という場に
初出場のscatola di voceさんが
どんな新しい響きや音楽をその箱から取り出してくれるのか。

グラスハープを使用するというだけではなく、
とても期待してしまいます。

・・・ん? 山本さん、なにか?



山本 グラスハープ、楽しみ!!
   某会議でも超話題沸騰中!!(笑)


…高松の某会議でもいろいろ話題を呼んでいるようで(笑)。
scatola di voceのみなさん、がんばってください!

 

 

 

 

 

 

(明日に続きます)