全国大会あれこれ・上

 

 

佐賀で話題になったあれこれを「全国大会あれこれ」としてまとめてお届けします。

 

 

【ウェルカム佐賀!】

佐賀空港や佐賀駅へ降り立つと、「歓迎:全日本合唱コンクール全国大会」のカンバンが!

遠方から来た参加者を温かく迎え入れてくれるムードが嬉しいですね。

 

さらに、会場の佐賀市文化会館の細部にまで、佐賀の文化が溶け込んでいるのが印象的でした。

特に目を引いたのは、有田焼の扉の取っ手!

さりげない場所に伝統工芸品が使われているのを見て、「佐賀に来たんだなぁ」と実感しました。

 

そして佐賀といえば、やはり佐賀バルーンフェスタが有名。

今回の大会期間中も空を見上げると、優雅に浮かぶ熱気球の姿をはっきりと目にすることができました。

バルーンってなんだか非現実的で、違う世界に迷い込んだような気分になりますね。

 

 

 

 

【冴子理事長と顔ハメパネル!】

 

有明海苔や佐賀茶など、物産コーナーも賑わっていましたね。

しかし、参加者たちが最も列を作っていた(であろう)スポットといえば……

 

 

長谷川冴子理事長の顔ハメパネル!

長谷川冴子理事長とツーショットが撮れるこのパネル。

まさかの企画に最初は戸惑いつつも、結局みんな笑顔でパネルにハマってしまう。

冴子理事長、九州支部長・樋口久子先生と。

こんなのズルイ・・・

 

 

 

【走れ、Y脇先生!】

 

さらに、初出場&観客賞1位に輝いた某大学女声合唱団の指揮者の“大会当日の裏話”を一つ。

トランクを開けたまま発車しかけた空港連絡バスを追いかけ、運転手さんに伝え、あわや大惨事を回避した、某大学女声合唱団指揮者。

#英雄的行為

#Y脇氏

#車中から拍手

大惨事を寸前で回避したY脇先生の冷静な判断に惜しみない賞賛を。

初出場の快挙の裏に、こんな“シャレにならないドラマ”があったとは…!

↑こんな感じ?!

 

 

 

【エシェンヴァルズ氏による世界初演と平和への祈り】

 

400人以上もの参加者がステージに上がり、氏の指導のもとで新作を歌い上げるという、本当に貴重な体験。

さらに、広島・長崎に言及し平和への祈りを込めたメッセージが語られ、その言葉の重さが胸に届きました。

「THIS LITTLE FLOWER」

テキストはインドの詩人:レビナント・タゴールのギタンジャリより

通訳:横山知子さんの素敵なポスト。

練習の前半は三群全員で同じ旋律を歌い。

最後に三群のカノンでの演奏。

 

一群の演奏でも十分に心を揺さぶられましたが、三群のカノンになると祈りがホールの隅々にまで満ちていき、空間そのものが共鳴するように。

最後は胸の奥で静かに収まっていく深い余韻を感じさせました。

 

音楽を通じて、国境を越え、平和を願う気持ちを共有する。

この全国大会が演奏を競う場を超え、人として大切なことを再認識させてくれる場でもあることを実感。

※24日に合唱連盟から動画を公開されました。概要欄にエシェンヴァルズ氏のスピーチが掲載されています。ぜひお読みください。

……あと、客席で指揮をするエシェンヴァルズ氏を見ようと、

2階席の最前列で身を乗り出していた、審査員の信長先生と福永先生の並びが可愛すぎました!

 

 

(「全国大会あれこれ・下」へ続きます)

【観客賞発表】同声・混声合唱部門

 

【2025年度観客賞・同声合唱部門】

 

ご投票ありがとうございます。

同声合唱部門:観客賞の発表です。

 

第5位 男声合唱団ノヴァーリス

同票第3位 
La Pura Fuente
NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科

第2位 Men’s Vocal Ensemble“寺漢”

 

 

そして第1位は…

 

monosso

 

でした!

みなさま、ご投票ありがとうございました。

#同声合唱25 #同声合唱25H

 

 

続いて

 

 

【2025年度観客賞・混声合唱部門】

 

混声合唱部門:観客賞の発表です。

 

 

 

第6位 あい混声合唱団
第5位 Combinir di Corista
第4位 VOCE ARMONICA
第3位 MODOKI
第2位 合唱団「櫻」

 

そして第1位は…

 

CANTUS ANIMAE

 

でした!

みなさま、ご投票ありがとうございました。

#混声合唱25 #混声合唱25H

 

 

さらに全部門、全54団体から選ばれた

【観客大賞】は・・・

 

CANTUS ANIMAE

 

です!

観客大賞受賞、おめでとうございます!!

#大ユ合唱25 #大ユ合唱25H #室内合唱25 #室内合唱25H #同声合唱25 #同声合唱25H #混声合唱25 #混声合唱25H #78佐賀全国🦑

 

 

【観客賞発表】大学ユース・室内合唱部門

【2025年度観客賞・大学ユース部門】

 

ご投票ありがとうございます。

大学ユース部門:観客賞の発表です。

 

 

第5位 都留文科大学合唱団


同票第3位 
金沢大学合唱団
関西学院グリークラブ


第2位 Ensemble SAKAE

 

 

そして第1位は…

 

早稲田大学女声合唱団

 

でした!

みなさま、ご投票ありがとうございました。

#大ユ合唱25 #大ユ合唱25H

 

 

続いて

 

 

【2025年度観客賞・室内合唱部門】

 

室内合唱部門:観客賞の発表です。

 

 

同票第4位 
AF合唱団
Chor Alyssum


第3位 Choeur Premier


第2位 女声合唱団ソレイユ

 

 

そして第1位は…

 

こそり

 

でした!

みなさま、ご投票ありがとうございました。

#室内合唱25 #室内合唱25H

 

観客賞投票まとめ&演奏中の体調不良について

《観客賞投票のまとめ》

参加資格:

「大学ユース部門」「室内合唱部門」

「同声合唱部門」「混声合唱の部」、

それぞれ全団体を聴いていること。

(その部門の出演者は投票できません

そして今年もLIVE配信が予定されていますので、配信で全団体を聴かれた方も投票できます!


投票方法は2つあります。

※生演奏を聴かれている方と、配信を聴かれている方ではハッシュタグが違うので注意!

1)X(旧ツイッター)による投票

投票方法:ご自分のXアカウントで

「大学ユース部門」なら

生演奏を聴いた方はハッシュタグ

#大ユ合唱25

 

「室内合唱部門」なら

生演奏を聴いた方はハッシュタグ

#室内合唱25

 

「同声合唱部門」なら

生演奏を聴いた方はハッシュタグ

#同声合唱25

 

「混声合唱部門」なら

生演奏を聴いた方はハッシュタグ

#混声合唱25

を付けて

 

配信を聴いた方はそれぞれ

#大ユ合唱25H

#室内合唱25H

#同声合唱25H

#混声合唱25H

 

を付けて

●大学ユースの部

22日大学ユースの部終演は《13:02頃》です。

その後《13:30まで》に良かった2団体を書いてツイート。

※「早稲田」は女声合唱団さんとフリューゲルさんの2団体出場なので、どちらか判別できるよう、ご記入をお願いします!

 「わせじょ」「フリューゲル」

 

●室内合唱の部

22日室内合唱の部終演は17:04頃です。

その後《17:30まで》に良かった2団体を書いてツイート。

 

●同声合唱の部

23日同声合唱の部終演は13:05頃》です。

その後《13:30まで》に良かった2団体を書いてポスト。

 

●混声合唱の部

23日混声合唱の部終演は18:15頃です。

その後《18:35まで》良かった【3団体】を書いてポスト。

※混声合唱部門 ”だけ”【3団体】投票できます。

 

※できれば『終演後すぐ』に投票していただければ助かります!

 

その際、各団体の後に感想を書いていただけると、とてもとても嬉しいです。

1団体だけの投票でも結構ですよ。

3団体、【混声は4団体】以上を書かれると無効です。すみません・・・)

※昨年、ハッシュタグを間違えた方が何人かいらっしゃいました。

1文字でも間違うと捕捉できないので正確にお願いします!  

ポスト投票の例: 
合唱団●● 壮麗な混声合唱のお手本!
▲▲ヴォイス 大人数でも繊細な表現が素晴らしかった。
■■混声合唱団 作品の魅力がとても伝わってきました
#混声合唱25

 

Xアカウントを持っていない方は

2)メールによる投票

投票方法:メールアドレス

bungo0618*yahoo.co.jp

(↑ *を@に替えて下さい)

良かった2団体 ※混声合唱部門 ”だけ”【3団体】とできれば感想を書いて送って下さい。

件名は「観客賞」で。

締め切りの時間はXでの投票と同じです。

※できればメール投票にもハッシュタグを付けていただければありがたいです。

 

つまり

1)その部門の出演者じゃない全団体聴いた人

2)2団体(混声は【3団体】!)もしくは1団体を書いて

3)生で聴いた人はそれぞれのハッシュタグ 

#大ユ合唱25 #室内合唱25 #同声合唱25 #混声合唱25

 配信で聴いた人はそれぞれのハッシュタグ 

#大ユ合唱25H #室内合唱25H #同声合唱25H #混声合唱25H(←最後に【H】を付けるのを忘れずに!)

4)部門終了後すぐに投票

…してくださると、とってもありがたいです。

たくさんのご投票をお待ちしています!

 

 

《出場団体の紹介記事を部門別に読みたい方向け》

●大学ユース部門

●室内合唱部門

●同声合唱部門

●混声合唱部門

全54団体、大学ユース部門から読み直すのも良いですね!

 

 

《演奏中の体調不良について》

2018年の札幌全国大会で、ある団体の演奏中、一人の団員さんが貧血を起こしたようにふらつき。

隣の団員さんが腕をつかんで支え、その方を座らせ、一緒に座って寄り添い、歌い続けられたことがありました。

そんな団員さんの思いやりのおかげで、演奏は中断することなく終了できました。

↓ 詳細は2018年の当ブログ記事を読んでいただくことにして。

 

極度の緊張状態における、全国大会の演奏中の体調不良は、どなたにも起こり得ることかもしれません。

今一度、対応策を記しておくことにしました。

札幌の合唱団Le camaradeさんも、非常に役立つ、このようなツイートをされております。

先日のコンクールでは、演奏中に歌い手が倒れそうになるということがありました。
このような事態はどこでも起こり得ると考え、救護マニュアルを作成してみました。
医者である団員のチェック済みです。
もし追加・修正すべき事項などありましたら、コメントいただけますと幸いです。#71札幌全国 pic.twitter.com/30srjM8V4K
— Le camarade (@Le_camarade2013) 2018年11月26日

 

 

「演奏中、気分が悪くなったらその場に座る」

「回復したと思っても立ち上がらない」

「気分が悪くなった団員を見かけたら、意識の確認をして、対処を決める」

繰り返しますが、演奏中に気分が悪くなる可能性はどなたにもあること。

そのため、そのような状況に陥った方を責めるのではなく、むしろこれを機に、ステージに立たれる全員が共通の知識として、周知徹底すべき事項と捉えるべきだと考えます。

 

聴衆のみなさんと出場者のみなさんがお互いに思いやりを持ち、素晴らしい全国大会を実現できるよう願います。

 

次回は観客賞の発表です!

(予定22日18:00ごろ)

 

観客賞バックステージ 混声合唱の部 最終回

 

九州佐賀国際空港

 

 

前回は混声合唱部門の前半に出場される8団体をご紹介しました。

混声合唱部門の後半。

地元・佐賀の人気団体が登場!

 

9.MODOKI

(佐賀県・66名・3年連続23回目の出場)

https://x.com/MODOKIchorus?s=20

 

1991年創設。月に1回、各地から団員が集まり集中練習を行う団体。

昨年は三善晃先生の「蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩(オード)」から「2.さまよえるエストニア人」を演奏し、観客賞第2位を獲得。

自分の貧弱な視聴環境もあり、配信はどうしても生演奏ほど心に届きにくいのですが、それでも MODOKI さんの演奏には泣かされました。

「天使たち」で宙を力強く指し示す山本さんの姿に、視界が滲んでしかたなかった。

……ところで山本さん、そのTシャツどこで売ってるんですか?佐賀?

 

そんなステキ指揮者を擁するMODOKIさんの演奏曲は

 

課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から) 

自由曲:木下牧子「オンディーヌ」

 

四大聖霊のひとつ、水の精オンディーヌが、人間の騎士ハンスに恋慕する物語を、詩人・吉原幸子氏が愛の純粋性を軸に厳しく、そして哀しく書いた詩。

聴き終えたあと、「愛は堕落なのかしら」という言葉が静かに残ります。

 

山本さんが指揮され、同声合唱部門に出場する女声・monosso さんが3年前に取り上げた演奏も大変素晴らしかったのですが、この作品のオリジナルは混声版なんですよね。

(混声版が1990年初演、女声版が1994年初演)

とは言え、混声版の生演奏には、なかなか出会えなくて。

MODOKIさん2月演奏会テーマの「相対するものたち」には「オンディーヌとハンス」、つまり女性と男性の対比がより明確になる混声版がしっくり来るのだろうな、などと思います。

 

混声版を生で聴ける貴重な機会。

名ピアニスト・酒井信先生とのアンサンブルも大きな楽しみです。

意気込み動画とは“相対する”(?)繊細で、心の奥底に届くような「オンディーヌ」を期待しています!

 

 

 

続いて混声部門最多人数の団体が!

 

10.淀川混声合唱団

(79名・大阪府・2年連続15回目の出場)

https://x.com/yodokon?s=20

 

1985年に結成。

指揮者は伊東恵司さん。

ちなみに伊東さんは今大会、大学ユースの同志社グリークラブさん、室内のアンサンブルVineさん計3団体を指揮し、上西一郎先生と並ぶ数となります。

79名の出場人数も混声合唱部門最大人数。

昨年は高嶋みどり「青いメッセージ」から「ごびらっふの独白」を取り上げ、混声の良さを活かしたスケールの大きな演奏を聴かせてくださいました。

通称よどこんさんの演奏曲は

 

課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から) 

自由曲:信長貴富・混声合唱とピアノのための「春と修羅」から「II」

 

宮沢賢治の詩に基づき、戦う自我の象徴「修羅」と、悟りの境地「春」という相反する要素を対比し、賢治の精神世界を描くスケールの大きな作品です。

地の底の呼吸音に始まり、輝きに満ちた春の世界へとダイナミックに展開します。

日本的な粘着質な音使いと、西洋的でロマンティックな音響の鮮やかな対比が特徴。

賢治が音楽的効果を狙った語句「ZYPRESSEN」も印象的で、持続する緊張感の先に壮大なカタルシスが訪れます。

 

過去に全国大会でも多くの団体が取り上げてきました。

難易度は高くても、それだけ惹きつける魅力がある作品と言えるでしょう。

 

よどこんさんはまず「自分たちが楽しむ」という姿勢が前面に現れているのが良いなあ、といつも思います。

歌うことの喜びを原動力に、「春と修羅」の世界をスケール大きく、ホールいっぱいに繰り広げて欲しいと願います。

 

 

続いて、超絶難易度の曲を演奏するあの団体?!

 

11.VOCE ARMONICA

(40名・千葉県・2年ぶり第64回大会以来11回目の出場)

https://x.com/vocearmonica?s=20

 

千葉県内の中高合唱経験者を中心に2007年10月に発足。

団名はイタリア語で「調和した声」の意味。

指揮者は室内合唱部門のChoeur Premierさんも指揮する黒川和伸先生。

2年前は細川俊夫「アヴェ・マリア」という難曲に挑み、「凄い集中力、高いテンションを持続して歌い切ったのが素晴しい」と高く評価されました。

過去にも三善「レクィエム」など難曲をいくつも取り上げており、「おそらく黒川先生はコンクールの場を《合唱音楽の究極の表現》で挑みたいという思いがあるのでは」と感じます。

そんなアルモニカさん、注目の演奏曲は?

 

課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から) 

自由曲:八村義夫「愛の園 アウトサイダーI」

 

あ、アゥ……

……「秋の午後」は4団体続いたラストですね!

アルモニカさんの演奏は、きっと他団体と違った味わいになる予感がします。

頑張ってください!

次は埼玉県の団体・・・とボケたくなるくらいの難曲なんです、この自由曲は!

 

改めて自由曲は混声合唱のための 「愛の園 アウトサイダーI」

(William Blake 詩/八村義夫 曲)

 

この曲については、11年前の高松大会で同曲を演奏されたCANTUS ANIMAEさんの記事をぜひお読みください。

CA副団長Mariさんの言葉(抜粋)

「ルネ・バロ好きには到底理解できないわけのわからなさです。

 メロディらしきものは何もないし、脈絡もなく音が飛ぶし、歌詞は英語の上にセリフも多く、最大24声部で、各声部が半音ずつずれてぶつかり合ってるし、もうこれどうやって歌うの? というのが第一印象でした。」

 

「雨森文也先生が1994年金沢での全国大会、合唱団OMPさんの演奏で衝撃を受け、2000年にCAさんで演奏しようと試みるも退団者が続出して諦め、14年を過ぎ、やっと演奏することができた念願の曲」

……これだけでも、この曲の“ヤバさ”は十分伝わると思います。

 

実際、この全国大会の長い歴史でも、演奏した団体は合唱団OMP現・合唱団響)さんCANTUS ANIMAEさんの2団体しかありません。

ウィリアム・ブレイクの詩を読むと、「自由で無垢な愛の世界が、宗教的・社会的な抑圧によって壊されてしまう痛烈な詩」であることがわかります。

私自身、高松の全国大会でCAさんの演奏を聴いたとき、ステージから無数の黒い腕が伸びて縛り付けるようなイメージに襲われ、終演後には

「やりたいことをやらなくて何が人生だ!」

…と血が沸き立ったのを今でも思い出します。

 

この難曲を選ぶまでには、指揮者・黒川先生にも多くの葛藤や苦労があったはず。

全国大会で演奏した合唱団OMP指揮者、栗山文昭先生は、黒川先生に多大な影響を与えた方でもあります。

Xのアルモニカさんアカウントで目に留まった黒川先生の「(この曲を演奏する)最初で最後のチャンスかもしれない」という言葉が心に響きます。

念願の曲を演奏する機会。

黒川先生、団員のみなさんの今までの想いを、存分にぶつけていただきたいですね。

 

ところでX(旧ツイッター)ってキーワードでけっこう昔まで遡れて。(sjgajamjは自分の前のアカウントです)

 

 

黒川さん、良かったね、夢ってかなうこともあるんだね。

 

 

 

19分の休憩後、センスが良いと言えば思い出すこちらの団体!

 

12.scatola di voce

(38名・埼玉県・4年連続8回目の出場)

https://x.com/scatola_di_voce?s=20

 

2003年春に指揮者・森田悠介先生とその呼び掛けに集まった仲間を中心にして誕生。

scatola di voceは、イタリア語で「声の箱」の意。

 

スカートラさんはいつも海外の曲を、センス良く演奏してくれる印象。

演奏だけでなく、ステージ上の振る舞いもどこか日本人離れしていて。

昨年はスウェーデンの作曲家ペッテション「われを解き放ちたまえ」をトリで演奏し、審査員の藤井宏樹先生からは「まず持っている声の素晴らしさ。ポテンシャルは計り知れないんじゃないかな。耳もいいし、音の鳴らし方がちゃんと世界観を持っている」と高評価。

金賞第2位の愛媛県知事賞も受賞されました。

 

そんなスカートラさん、今回の演奏曲は?

 

課題曲G1「Dies sanctificatus(パレストリーナ) 」

自由曲:Uģis Prauliņš「The Nightingale(ナイチンゲール)」から

「8.The Emperor and the Death(皇帝と死神)」

「9.Reprise(リプライズ)」

 

アンデルセン童話「ナイチンゲール」を題材とした最大21声部の大作。

なんでもリコーダーとの協演作品だそうで。

ここは作曲家プラウリンシュの国、ラトビアへ留学された合唱指揮者・山﨑志野さんの楽曲紹介をぜひお読みください。

「ナイチンゲールは鳴き声を模倣した超絶技巧のリコーダーと深みのあるバスによるバスオクターブ”D”から4オクターブ上で鳴り響くソプラノの”D”まで要求される合唱への広い音域、動物の鳴き声の描写、多数に分かれる声部など高度な要求が続くにもかかわらず、作品は一度聴けば気が付けば物語の中へ引き込まれるような魅力があります」

実際に演奏を聴いてみると、まさに山崎さんが書かれるように、リコーダーとのやり取りがスリリングでカッコイイし、ナイチンゲールの物語に入り込んで夢中になってしまいます。

スカートラさんは8,9と最後の2曲を演奏されますが、機会があれば最初から聴いて欲しい!

 

意気込み動画からも、この作品への思い入れを強く感じます。

コンクールの場でありながら、コンクールを忘れてしまう演奏。

長年聞いていると稀にそんなことが起きるものですが、今回のスカートラさんのナイチンゲールもそんなステージになる予感がします!

 

 

 

続いては……え、混声部門が職場部門に?!

 

13.香良洲自動車学校

(38名・三重県・初出場

 

初出場おめでとうございます!

 

……いや~こちらの合唱団、ネタがあり過ぎてですね、何を書こうか迷います!

↑ こちらのリンクからは

「三重大学附属中学校の合唱仲間4人で、またみんなで歌える機会があれば、とずっと野望を持っていました。そして、ちょっとしたきっかけから話が進み、2024年に香良洲自動車学校を結成」とのこと。

 

そして初出場ながらおかあさんコーラス全国大会へ出場し、見事ひまわり賞、そしてグランプリ!凄い!

自分も配信で聴いていたんですが、「香良洲自動車学校」という団名から「ウケ狙いかぁ……」と思っていたら、透き通った発声と確かな音楽性を感じ、身を乗り出した憶えがあります。

信長先生も「自動車学校とか、ロールプレイ系の合唱団が流行るのだろうか...」と呟かれていますね。

ちなみに「香良洲」も「Chorus」の当て字?と思っていたら、これは津市にある実際の町名でした。

さらに指揮者:福井悠大先生の役職名は「理事長」!

 

そんなカラスさんの演奏曲は

 

課題曲G4「不思議(石若雅弥)」

自由曲:三宅悠太 「遠きものへ──」から「おやすみなさい」

三善晃「地球へのバラード」から「Ⅴ.地球へのピクニック」

 

G4不思議は混声部門ではカラスさんだけですね。

「おやすみなさい」は長田弘氏の詩。

おやすみなさい森の木々」と、いろいろなものへ優しく「おやすみなさい」と語りかけ、最後は「おやすみなさい私たちは一人ではない おやすみなさい朝(あした)まで」と終わります。

三宅先生らしい音の煌めきと温かさが伝わる作品。

「地球へのピクニック」は谷川俊太郎氏の詩。

地球(ここ)で永遠に繰り返される、幸福な営みへの讃歌と願いをリズミカルに感動的に歌い上げます。

カラスさんの意気込み動画も届いていますね。

 

……うん、これは文部科学大臣賞決定!(意気込み動画部門)

プロの仕業?でも、こんなところから日本の合唱、コンクールって変わっていくのかも。

動画の笑いの奥にあるファミリー感から、課題曲と自由曲2曲が、より魅力を増す気がします。

なんだかいろいろ楽しみな団体、応援したくなりますね。

カラスのみなさん、初舞台がんばって!

 

 

続いて、音楽へ真摯に向かう若い団体の登場です。

 

14.合唱団 「櫻」

(33名・福島県・3年連続4回目の出場)

https://x.com/chor_sakura?s=20

 

福島県立喜多方高等学校OG&OBを主体として2009年に結成。

福島・東京の2拠点で活動中の団体。

昨年はラインベルガー、マルタンの二重合唱ミサを演奏し、藤井宏樹先生から「本当にスコアに寄り添って愛情を持って取り組んでいくと、これだけ美しい演奏になるんだな。感嘆の言葉を惜しみなく捧げたい素晴らしさでした」と賞賛。

過去にはメンデルスゾーンも選ばれ「音楽のフレームをしっかり捉えている基礎力の高い団体」という感想も。

福島県の高校合唱団が母体なだけあって、基礎力はもちろん、指揮者・佐藤朋子先生の、作品本来の姿を見据える力が高いのでしょうね。

 

櫻さん、今回の演奏曲は

 

課題曲G2「 Das edle Herz(ブルックナー)」

自由曲:三善晃「地球へのバラード」より

「1.私が歌う理由」

「4.夕暮」

 

課題曲のブルックナーは、基本を重視する櫻さんならではの音楽が聴けると期待。

「地球へのバラード」は前の香良洲さんも演奏した曲集。

三善先生は谷川俊太郎氏のこの詩に、よくあんな軽くリズミカルな曲を付けたなぁ!といつも感心してしまう「私が歌う理由」。

世界と自分との繋がりと断絶、思索的な「夕暮」。

 

「地球へのバラード」制作過程については、初演団体である当時の柏葉会団員さんが、三善先生とのやり取りをCANTUS ANIMAEさんのHPに詳しい記録を残されています。

新しい作品を世に出すまでの過程、三善先生の優しく温かいまなざしが感じられる、素晴らしい記録です。

藤井先生も語られていましたが、このようによく知られた曲を「スコアに寄り添って愛情を持って取り組」むことは本当に大切だなと思って。

自分もやりがちですが、過去の名演を聞き込み、ついその演奏をなぞってしまう。

でも、名演のリスペクトに留まるなら良いけど、モノマネ大会になっちゃうのはダメですよね……。

 

佐藤朋子先生と櫻のみなさんが、スコアとしっかり対峙した、櫻さんならではの演奏を聴けるのを楽しみにしています!

 

 

続いては北海道から優しい響きの団体が。

 

15.Baum

(61名・北海道支部・2年連続11回目の出場)

Baumさんは2009年に札幌で創立。

指揮は同声部門に出場の、HBC少年少女合唱団シニアクラスも指揮される大木秀一先生。

団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。

大「木」先生を慕い集まって作られたことによる団名なのでしょう。

(HPの名称が「Big Tree Chorus Club」!)

昨年はブルックナー「Ave Maria」「キリストは我らのために」を説得力のある演奏で聴かせてくれました。

 

Baumさん今回の演奏曲は

 

課題曲G2「 Das edle Herz(ブルックナー)」

自由曲:Susan LaBarr「Angele Dei(神の天使)」

Gustav Holst「Nunc Dimittis(今こそ主よ、僕を去らせたまわん)」

 

アメリカの作曲家スーザン・ラバー「Angele Dei(神の天使)」は、厳かな雰囲気から安らぎへ導き、天上に声が昇っていくような守護天使への祈りを感じさせます。

イギリスの作曲家ホルスト「Nunc Dimittis(今こそ主よ、僕を去らせたまわん)」は8声部で神秘的に展開し、ソリストや男声・女声の交唱によって徐々に高まり、最後は力強く華やかに主を讃える作品です。パレストリーナやバードの影響も感じられ。

 

2曲ともHBCさんの選曲と同じように、聴く者へ緊張を強いることなく、心を静かに平安へと誘ってくれます。

Baumさんの澄み切った祈りの声が、客席へ穏やかな祝福を届けてくれることでしょう。

 

 

この佐賀大会、最後の団体です!

 

16.混声合唱団Pange

(27名・高知県・3年連続7回目の出場)

https://x.com/Pange_Kochi?s=20

 

2003年2月に結成。

昨年は宮本正太郎先生の「アモール・ファティ」を演奏。

指揮者は全国大会で高知学芸中学、学芸高等学校コーラス部の2団体を指揮された坂本雅代先生。

昨年のPangeさんの演奏について藤井宏樹先生は「指揮者の気質なのか、とっても誠実に明るく屈託なく、かといっていい加減じゃなく、本当によくスコアを見てらっしゃって、素敵な演奏だったと思います」と述べられていて、自分も坂本先生のお人柄を思い出し、読みながら大きく頷いてしまいました(笑)。

 

パンジェさん、今回の演奏曲は

 

課題曲G1「Dies sanctificatus(1563)」(パレストリーナ)

自由曲:田畠祐一「狂恋の一滴 ~恋の色彩抄~」

 

自由曲は昨年、コンビニさんが委嘱し全国大会で演奏された作品。

課題曲にもなった「混声合唱とピアノのための 恋の色彩」を再構成したもので、古今和歌集の狂うような激しい恋の歌を題材にした劇的なもの。

 

パンジェさんは昨年の「アモール・ファティ」もそうですし、土田豊貴先生への委嘱など、新しい邦人作品に積極的に取り組まれていて。

また、前述の藤井先生のお言葉のように「明るさ」を備えているため、他団体とは明らかに違った聞こえ方、印象になるんですよね。

 

今回の「狂恋の一滴」もコンビニさんの印象が強い曲ですが、パンジェさんならまた違った角度からこの曲の魅力を引き出してくれると思うんです。

「これしかない」じゃなく、「パンジェさんの演奏、これもいいよね!」って、とても豊かじゃないですか?

 

パンジェさんならではの解釈と響きが、また一つこの作品の景色を広げてくれることを願っています。

 

混声合唱部門、全16団体聴かれた方はぜひ

「観客賞」にご投票を!

 

《ありがとうございました》

 

これで佐賀全国大会・4部門全54団体のご紹介を終わります。

体調の理由で突発的に始めたため、いろいろ不備も多かったと思いますが、いかがでしたか?

 

昨年、体を壊して松山大会を諦め、配信で全国大会を鑑賞したんですが。

いやもちろん、自宅でリアルタイムに演奏を聴けるのは素晴しい!ありがたい!

 

でもね、音響や雰囲気の違いはもちろんですが、決定的な違いがあったんです。

それは「拍手」。

合唱団を迎え入れるとき、良かった演奏に賞賛の気持ちが湧いたとき。

モニターの前でどんなに大きく拍手しても、それは決して届かない。

 

このことで気づいたのは、

「あぁ、自分は拍手で応援の気持ちが届くことを信じているんだな」と。

 

そして、合唱団のみなさんが拍手に演奏で応えてくれるのを信じているんだな、ということです。

今回の連載記事だって、届かないかもしれない拍手です。

 

ずっと懸命に頑張り続けると壊れてしまうけど。

倒れてから、立ち上がろうとするのが難しいとき、温かな言葉や応援が立ち上がるきっかけになるじゃないですか。

辛いときのあと一押し、引っ張り上げられなくても、やさしく手を握るだけでも。

この記事がそんな力になればいいなと思います。

 

この企画も長く続いています。

昨日読み返したら、10年前に合唱団のさまざまな人から聞いた話をまとめた、最終回の記事が目に留まりました。

少し修整して、最後まで読んでいただいたみなさんにお送りします。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

現実のいろいろな苦難を乗り越え、

それでも「いま、自分のできることを」…と

前へ進もうとするみなさんを、

私は応援します。

 

 

 

 

 

暗譜が進まず呪文のように繰り返していたら

隣の人に不審な目で見られた通勤途中の朝。

 

 

 

団の連絡事項の調整で休み時間がほとんど潰れ

ため息をつく昼。

 

 

 

悔しさに唇を噛みしめ楽譜を抱え

ひとりカラオケボックスの扉を開ける夕暮れ。

 

 

 

ベッドで練習録音を聴き返していたら

目が覚め眠れなくなった夜。

 

 

 

遠方の練習場所への夜行バスで目覚め

痛む体に顔をしかめながら見る夜明けの光。

 

 

  

 

 

・・・趣味というだけでは割り切れない思いを抱え、

がんばっている人がいるのを私は知っています。

 

あなた以外はそのがんばりを知らないかもしれない。

でも、私は知っている。

 

「凄いぞ!よくがんばってるね!」

力を込めて言ってあげたい。

 

 

その後に「どうしてそこまでがんばれるの?」

尋ねてみたい。

なにがあなたをそこまで駆り立てるのか、と。

 

 

 

勝手な推測で申し訳ありません。

でも、おそらくあなたは、はにかみながら、

大事な秘密を打ち明けるように、

こう答えてくれるのでは。

 

 

 

 

 

「…やっぱり好きだからね、合唱」と。

 

 

 

 

ありがとうございました。

佐賀でお会いしましょう!

 

(観客賞バックステージ2025 おわり)

 

観客賞バックステージ 混声合唱の部その1

有明海に注ぐ筑後川

 

前回は同声合唱部門の後半に出場される団体をご紹介しました。

同声部門が終了し、60分の休憩後、いよいよ混声合唱部門のスタートです。

毎回同じ事を思うのですが、非常に熾烈な戦いです。

いや、戦いと言うのはちょっと違う気がします。むしろ

 

「自分がいちばん素晴しいと信じるものを『どうだ!』と見せる大会」

 

……という感じでしょうか。

特に近年はベテラン勢に加え、若い団体が新しい「どうだ!」を引っさげ次々と挑んできます。

選曲は練りに練られ、熱量も半端じゃない。

もう最初からクライマックスって言っても過言じゃありません。

全16団体の「どうだ!」

しっかり味わいながら、気圧されずに楽しみましょう!

 

そして全16団体聴かれた方はぜひ

「観客賞」にご投票を!

 

「最初からクライマックス」と言いたくなったのはこちらの団体のため。

トップバッターがプーランクの"あの”名曲を?

 

1. Vocal Ensemble 《EST》

(36名・三重県・3年連続17回目の出場)

https://x.com/ensemble_est?s=20

 

ESTという団名は最上級のESTとラテン語の「存在」の意味から取られているそう。

昨年はラウタヴァーラ「無伴奏ミサ」、ヒンデミット「無伴奏混声合唱のためのミサ」から選曲され、藤井宏樹先生から「この団体は演奏会を聴きに行きたいな。レストランのシェフのお薦めみたいに、いろんなところで楽しめると思う」と感想を述べられていました。

その演奏会(11/2)では「みやけまつり」と題し、三宅悠太先生への委嘱作品、さらにパレストリーナなど幅広い選曲で開催。

さて、ESTさん今回の演奏曲は?

 

課題曲G1 「Dies sanctificatus(1563)」

自由曲:Francis Poulenc「Figure Humaine(人間の顔)」より

「7.La menace sous le ciel rouge(脅威は赤い空の下で)」

「8.Liberté(自由)」

 

お~、プーランク自身が「最高の作品」と評価した、20世紀で最も重要な合唱作品のひとつです。

テキストは詩人ポール・エリュアールが第2次世界大戦中、ナチス占領下のパリで書いた反戦詩。

混声6部の2重合唱、プーランクらしい機知に満ちた魅力的な音楽ですが、詩の内容は戦争がもたらす生々しい恐怖と死の情景に満ちています。

「La menace sous le ciel rouge(脅威は赤い空の下で)」では争いが頂点に達し、人心も何もかも荒廃している状況を描き。

最終曲の「Liberté(自由)」は「学校のノートに 机に、木々に 砂の上に、雪の上に私はあなたの名を書く」と始まり、あらゆるものに「私はあなたの名を書く」と繰り返していきます。

クライマックスで「その名は 自由(Liberté)!」と明かされる展開には、何度聴いても心を打たれるのですが(ソプラノソロにHi-E:高いミも!)、技術的にも精神的にも非常に高いものを求められる作品。

 

この全日本合唱コンクールでも、多くの団体が幾度となく演奏し、名演を残してきた「人間の顔」。

ESTさんもその確かな系譜に連なり、佐賀の舞台でどのような“存在(EST)”の刻印を残されるのか。

プーランクが託した切実な「自由(Liberté)」のメッセージをどう歌い上げるのか、とても楽しみにしています。

 

 

続いて、新しい才能の出現を刮目して見よ!

 

2.あい混声合唱団

(65名・東京支部代表・3年ぶり4回目の出場)

https://x.com/ai_kon?s=20

 

あい混声さんは2007年発足。

音楽監督は作曲家・指揮者の相澤直人先生で、課題曲M4「いきよう」を作曲されたこともみなさんご存じと思います。

あい混声さんの「あい」は音楽愛、和気藹々、そして一人一人の音楽を大切にする「一人称単数主格の I 」。

(そしてもちろん相澤先生の「あい」も含まれているそう!)

 

3年前の出場時は、宮本正太郎先生への委嘱作品「アモール・ファティ」を演奏され。

「いわゆる『合唱』への固定概念を破るよう。ラヴェル『ヴァルス』をイメージしたというだけあって合唱、器楽の相まったうねりと音響に惹かれました」

「こういう新しさを感じさせる作品を練り上げ、集中度高く演奏する場としてコンクールは最適ということ。この作品を最高の形で提示してくれた相澤先生とあい混さんに感謝したいですね」……と大変好評でした。

 

あい混さん、今回の演奏曲は

課題曲G3「秋の午後」(「光る砂漠」から)

自由曲:内田拓海「沈められたピアノ」

 

「沈められたピアノ」は1997年生まれの若き作曲家:内田拓海先生への委嘱作品。

東京都大会の演奏に惹かれた自分は、テキストに選ばれた紫衣さんの詩集を購入するまでハマってしまいました。

紫衣さんの豊潤なイメージと物語を孕んだ詩を、内田先生は新鮮な音で描き、何かが始まる予感に満ちた世界を作り上げています。

その煌めく若き才能を見出し、全てを託して完成度の高い演奏に導く相澤先生とあい混さんは本当に素晴らしい。

 

ブログ記事にも書いたように、佐賀で生演奏を聴けるのが嬉しくてたまりません。

いつだってワクワクするのは、想像を超えた新しいものに出会うこと。

あい混さんの演奏がまた新しい時代を開くのを、心から願っています。

 

 

続いて無敵のチャンピオンが登場!

 

3.Combinir di Corista

(41名・東京支部・11大会連続16回目の出場)

https://x.com/combinir?s=20

多様なレパートリー、すなわち「品揃え」にこだわり、コンビニエンスストアにちなんで団名を「コンビーニ・ディ・コリスタ」とされた、通称コンビニさん。

この熾烈な混声合唱部門で、金賞第1位の文部科学大臣賞をなんと6大会連続受賞。

さらに当ブログの観客賞でも混声部門第1位と、実力も人気も兼ね備えた凄い団体です。

 

昨年は委嘱された田畠祐一先生の「狂恋の一滴 ~恋の色彩 抄~」を演奏され、審査員の藤井宏樹先生から「もうここは語るのやめない?(笑)素晴しすぎるもん」「自由曲も言うことなし。音楽の知能指数の高さ、艶やかないい音、とにかく詩情の旅ができたの、ぼくは。作品の中で、言葉たちの旅ができた。そんな団体は他になかなかないですよ」……と大絶賛。

 

そんな大注目コンビニさんの今回の演奏曲は

 

課題曲G2「Das edle Herz」

自由曲:田畠佑一「混声合唱とピアノのための Martyres[殉教者、日本二十六聖人に捧ぐ]」

 

昨年に続き、田畠先生への委嘱曲。

コンビニさんによる殉教者についての詳細なまとめです。

http://combinir-di-corista.com/2025/martyres.pdf

さらに意気込み動画では

「この曲は、1587年豊臣秀吉に発せられたバテレン追放令を機に、京都にて捕縛され、遠く長崎の地で殉教を遂げた26人のキリスト教徒たちが弾圧の中で如何にしてその信仰を守り、聖人と数えられるようになったのか、という足跡を追体験していくような楽曲となっております」とのこと。

10月の長崎《祈りの合唱の祭典》では、浦上天主堂でコンビニさんのリハーサルと演奏を拝聴しました。

教会にもいらっしゃった田畠佑一先生の「混声合唱とピアノのための Martyres[殉教者、日本二十六聖人に捧ぐ]」は日本で初めてのキリスト教殉教者、この長崎で処刑された二十六聖人をドラマティックに描く作品。

信仰の尊さや純粋性と、捕縛や処刑の残酷さとの落差、華麗なピアニズムがそれを支え、最後は聖人への祈りと歌としての説得力が重なり、心に深く響くものがありました。

 

ドラマティックな構成のなかで進む殉教者たちの“追体験”。

コンビニさんの卓越した技術と繊細な表現力によって、その物語がどれほど深く、胸に迫る演奏となるのか。

佐賀のステージで体感できる日が待ち遠しいです。

 

 

東京の団体、3団体目はどんな選曲を?

 

4.CANTUS ANIMAE

(59名・東京支部・3年連続20回目の出場)

https://x.com/CANTUS_ANIMAE?s=20

1998年7月、岐阜県在住の雨森文也先生の音楽に魅せられた「歌好き」たち23名が創団。

団名は「魂の歌」という意味(以下「CAさん」)。

昨年は三善晃先生の「レクィエム」から第3楽章を2台のピアノと共に演奏され、死者の言葉をコラージュしたテキスト、激しいうねりを思わせる音響で反戦のメッセージを強く観客へ訴えていました。

 

CAさんの今回の演奏曲は

 

課題曲G3「秋の午後」(「光る砂漠」から)

自由曲:萩原英彦「光る砂漠」より

「8.さびしい道」

「9.ふるさと」

 

課題曲から自由曲まで「光る砂漠」で揃えた3曲。

ちなみに「秋の午後」は7曲目なので、課題曲から最終曲は本来の曲順の演奏になります。

 

前2団体、東京支部代表の2団体:あい混さんとコンビニさんは、自由曲をまだ20代の新進気鋭の作曲家に委嘱し、さらに今年初演された最先端の作品を選曲。

それがどれほど意義があり重要なことか、新しいものが好きな自分はその活動を心から賞賛しますし、それはこれからも変わらないでしょう。

ただ、新しいとは何か?

 

萩原英彦先生は1933年生まれで、2001年に逝去されました。

「光る砂漠」は1971年の初演からすでに半世紀以上が経ちますが、いま聴いても驚くほど新鮮です。

その理由は、萩原先生が深く傾倒した近代フランス音楽の影響かもしれません。

ドビュッシーやフォーレにも通じる色彩豊かな和声、声部の重ね方に宿る繊細な質感。

当時の日本の合唱曲としてはやや異色であり、だからこそ半世紀以上を経た現在も古びない現代性を保っているように思われます。

 

今年の7月、札幌で開催されたジョイントコンサートでは、合同曲として雨森先生とCAさん、そしてピアニストの平林知子先生が演奏したのはこの「光る砂漠」でした。

札幌での演奏を振り返り、「光る砂漠」は、「魂への訴求力」において永遠に新しいと思うのです。

早逝した詩人:矢澤宰の切実な「生きたい」という願いが、半世紀以上を経ても私たちの胸に、鮮烈に生の肯定を呼び起こす普遍的な力を持っています。

課題曲に「秋の午後」を選び、「さびしい道」「ふるさと」を演奏することで、人生の終盤から「再生」へ向かう一つのドラマを提示してくれることでしょう。

札幌で体験した、産声が重なる「生の肯定」の瞬間の感情を、CAさんはふたたび呼び起こしてくれるに違いありません。

 

「魂の歌」を団名に持つCAさんが、この不朽の名作を通じて、生きることの根源的な喜びと切実さを、佐賀のホールに響かせてくれることを心から期待しています。

 

 

続いて、作品世界を忠実に浮き立たせる団体の登場です。

 

5.鶴岡土曜会混声合唱団

(60名・山形県・3年連続16回目の出場)

https://x.com/TsuruokaDoyokai?s=20

 

1951(昭和26)年に鶴岡三中音楽クラブ同窓会合唱団として創設。

昨年は三善晃先生の「宇宙への手紙」から演奏されました。

 

土曜会さん、今回の演奏曲は

 

課題曲G1「Dies sanctificatus(1563)」

自由曲三善晃「やさしさは愛じゃない」より

「さびしいと思ってしまう」

「やさしさは愛じゃない」

 

昨年亡くなられた谷川俊太郎氏と写真家・荒木経惟とのコラボレーション作品。

表題作「やさしさは愛じゃない」とは突き刺さる言葉ですが、音楽もユニーク。

男性パートはひたすら「優しさは愛」「愛しかない」と歌うのに、女性パートは「優しさしかなかったんだね」「優しさは愛じゃない」と否定を繰り返す、実にコワ~い作品です。

それでも、真摯に愛と生を問いかける音は、聴く者に多くのものを残してくれるはず。

 

指揮者の柿崎泰裕先生と土曜会さんは、過去に三善作品を多く取り上げてきました。

その演奏は合唱団の個性より、「演奏する曲の個性」を大事にされるもの。

強い印象は残さないかもしれませんが、演奏から誠実さ、真摯さがじわりと伝わってくるような団体です。

今回も「やさしさは愛じゃない」の世界を、見事に浮き立たせてくれるに違いありません。

 

そうそう!土曜会さんは、毎年全国大会の翌週に演奏会を開くことでも有名!

全国大会の勢いで、演奏会も成功に繋がりますように!

 

 

20分の休憩後、私の地元、岡山県の団体です。

 

6.合唱団こぶ 

(44名・岡山県・2年連続13回目の出場)

http:// https://x.com/ChoirKOB?s=20

 

1992年「合唱団こぶ」の前身である「総社東中OB合唱団」結成、1998年「合唱団こぶ」に改名。

こぶという団名は指揮者:大山敬子先生のイニシャル「K」と中学校での教え子「OB」たちの文字をつなげた「K + OB」から。

今では教え子の中学出身以外の団員さんも多くいらっしゃるそうです。

 

昨年は委嘱作品・横山潤子「誰かがいなくなっても青い空」を演奏。

チェロとピアノが加わる作品ながら、チェロが前に出すぎず親密なアンサンブルを築き、mpからmfの幅に合唱の妙味が自然に溶け込む演奏で好評でした。

 

こぶさん、今年の演奏曲は

 

課題曲G3「秋の午後」(「光る砂漠」から)

自由曲:瑞慶覧尚子 「約束」(淵上毛錢の詩による女声合唱組曲「約束」より)

 

今年8月の岡山県大会を聴きに行ったときに、こぶさんへこんな感想を残していました。

矢澤宰と、自由曲:淵上毛錢の生涯に想いを馳せる選曲。

「秋の午後」のワルツ感に心が軽くなり、ホモフォニック部分では全体の響きに魅了される。

「約束」では、ヴォカリーズのゆらぎやBassが入った瞬間の広がりに圧倒。

中間部の音色や語り口のさらなる追求を信じつつ、個人的なコンクール大賞!

そう、今回取り上げられる二人の詩人には共通点があります。

矢澤宰は結核、淵上毛錢も脊椎カリエスに苦しみ、短い生を全うしましたが、生の証しとして詩を発表したこと。

「約束」の一節

美しいものを 信じることが、いちばんの早道だ

病床の淵上毛錢が、自身に何度も言い聞かせるように、言葉を積み上げ、重みを増し、確信に至る瞬間、鮮烈に切り込まれるピアノと鋭く変化する合唱。

やがて死の受容という穏やかな心に変わっていく。

その境地に至り、削ぎ落された、まっさらな心から湧く静かな願いが胸を打つ作品です。

 

こぶのみなさんなら、この研ぎ澄まされた純粋な祈りを観客の胸へ届けてくれるでしょう。

矢澤宰と淵上毛錢、二人の詩人の短い生涯の裏にあった切実な生への願いを、こぶさんの響きが優しく、そして力強く繋ぎ合わせてくれるはずです。

 

 

続いて、日本の合唱に新しい息吹を運ぶ団体?

 

7.Sopra il fiume

(29名・埼玉県・2年連続2回目の出場)

https://x.com/Sopra_il_fiume?s=20

 

2018年に川越で創設、通称「ソプラ」

埼玉県川越市を拠点に活動中の若い合唱団です。

 

2024年3月の声楽アンサンブルコンテスト全国大会の配信を聴いて、ソプラさんにこんな感想を残していました。

Sopra il fiumeさん(埼玉)

輝く若い声!バルドシュとアントニーニの歌い分け、cucarachaは軽やかに楽しく、将来性凄い団体の登場に驚き。

でも団名のスペル間違えそう・・・

そして11月の全国大会初出場の配信を観て、もっと驚きました。

混声部門で指揮者無しのアンサンブル?しかも自由曲がコダーイ!

まずゾルタン・コダーイの「Liszt Ferenchez(フランツ・リスト讃歌)」という選曲にやられた~と思いましたし、それ以上に、初出場でこんなに見事な演奏とは!

これまでの「日本の合唱」とは違う、ワールドワイドな新しい風をソプラさんから感じてしまったんですよね。

 

そんなソプラさんの今回の演奏曲は

 

課題曲G2 「Das edle Herz」

自由曲: Zoltán Kodály「Jézus és a Kufárok(イエスと商人たち)」

 

ここでソプラさん公式アカウントで紹介されていた、練習責任者:松崎さんのnoteをどうぞ!

団のステップアップのための選曲、作品解釈……と唸るばかり。

とりあえず万博のハンガリー館良かったですよね!(そこかよ)

ソプラさんは10/30~11/2にスペイン・トロサでおこなわれた国際合唱コンクールにも出場。

海外での刺激を受けて、さらに一回り大きくなったことでしょう。

 

これまでネットの配信でしか触れられなかったソプラさんを、生で聴けるのが嬉しくてたまりません。

佐賀のホールで、またあのときの「新しい風」を感じさせてください!

 

 

続いて「言葉の魔術師」の登場です。

 

8.混声合唱団うたうたい

(46名・福岡県・2年ぶり第66回大会以来11回目の出場)

https://x.com/utautai_choir?s=20

 

2009年4月に有志21名で創設。

高嶋昌二先生を指揮者に擁し、2年前は信長先生:無伴奏混声合唱のための「After...」を演奏され、「やっぱり高嶋先生の日本語のさばき方、歌い回しは上手いと思った」と好評でした。

うたうたいさん、今回の演奏曲は

 

課題曲G3「秋の午後」(「光る砂漠」から)

自由曲:三善晃「五つの童画」から

「1.風見鳥」

「3.やじろべえ」

 

「風見鳥」は大学ユース部門の金沢大学合唱団さんも選曲されてますね。

金大さんはカップリングに「なみだ・と」を選んでいましたが、うたうたいさんは同曲集から「やじろべえ」を組み合わせています。

 

「童画」という題ですが、高田敏子さんの詩と、三善先生の音楽が表す陰影はなかなか残酷。

「風見鳥」では風の言うままに振り回され、遂には死んでしまう、主体を失った虚しさを。

「やじろべえ」は、影の存在であることの恐怖と、走馬灯のように揺れ動く、戯けた音楽の背後に潜む悲しみ。

結末で示される哀しい真実と絶望が、作品全体の輪郭を鋭く際立たせています。

 

意気込み動画を見ると

コンクールでピアノ付きの作品演奏は15年ぶりなんですね。

藤澤篤子先生のピアノと、うたうたいさんとのアンサンブルに期待はもちろん。

そして何と言っても高嶋先生とうたうたいさんの魅力は「日本語」。

高嶋先生の的確な言葉のさばき方と、うたうたいさんの繊細で柔軟な響きが重なることで、三善作品の世界が生き生きと立ち上がってくる瞬間。

その陰影が迫り、作品がぐっと身近に感じられるのを楽しみにしています。

 

 

次回は混声合唱部門後半の団体をご紹介します。

観客賞バックステージ 同声合唱の部その2

 

佐賀名物・シシリアンライス

 

前回は同声合唱部門前半に出場される団体をご紹介していました。

20分の休憩後、同声部門後半の開始です。

 

7.La Pura Fuente

(女声42名・神奈川県・関東支部代表・11大会連続出場)

https://twitter.com/la_pura_fuente

La Pura Fuenteとはスペイン語で「清い泉」とのこと。

神奈川県の合唱名門校、清泉女学院の卒業生さんが2010年に作られた団体。

 

昨年は自由曲にスロヴェニアの作曲家Andrej Makor「O lux beata Trinitas」、韓国の作曲家Hyun Kook「Benedicamus Domino」と個性ある選曲で会場を沸かせました。

実力も人気も高いラプーラさんの今年の演奏曲は

 

課題曲F3「Ⅰ」(「Motet Vernale」から) 

自由曲:Levente Gyöngyösi「Exsultate, iusti(神のみ前で歓び踊れ)」

Manolo Da Rold「Regina Coeli(天の皇后よ、お喜びください)」

 

課題曲は間宮芳生、ハンガリーの作曲家ジェンジェシに、イタリアの作曲家ロルドと今年もワールドワイドな選曲です。

このジェンジェシ「Exsultate, iusti(神のみ前で歓び踊れ)」はラプーラさんの委嘱曲ですね!

さすが数多くジェンジェシ作品を取り上げただけあって、委嘱までされるとは……

リンク先の “Audio preview” で聴ける音源が、その委嘱作品でしょうか?

Psalm 33をテキストとした、歓喜と賛美の感情が力強く鮮明に伝わってくる作品です。

ジェンジェシらしい躍動感も感じられますが、なかなかの難曲。

ラプーラさんの声で、この音楽を聴かせてもらえるのが楽しみです。

 

ロルド「Regina Coeli(天の皇后よ、お喜びください)」は女性らしい魅力に満ちた作品。

ラプーラさんなら優美さはもちろん、後半のアレルヤをどうチャーミングに表現してくれるのかな?と楽しみ。

ジェンジェシ委嘱曲は大きな目玉ですが、課題曲から素敵なロルド作品へと至る“ラプーラ・オンステージ”に強く期待してしまいます。

 

 

 

次は熊本からの女声合唱団!

 

8.Colo Collegamento

(女声32名・熊本県・九州支部代表・2年連続3回目の出場)

https://x.com/CCollegamento?s=20

2017年創設。Collegamento(コレガメント)はイタリア語で「つながり」を意味。

「合唱を通して多くの合唱仲間とつながっていきたい」という想いのもと異なる環境で歌ってきたメンバーが集ったそう。

 

昨年6年ぶりの全国出場で三宅悠太先生の「素朴な琴」「帰郷」を演奏されました。

今回の演奏曲は

 

課題曲F4「かつて私は信じていた」

自由曲:信長貴富「ジョセフ」

 

昨年亡くなられた白石かずこ氏の長篇詩「ジョセフ」には、智慧の実、星や宇宙、過去と未来など、聖書や広大さを思わせる言葉が次々と現れます。

「非常に大きなスケールの音楽で、詩の持つエネルギーを余すところなく描ききっている」という作品紹介にも深くうなずいてしまいますが、度々登場する「ジョセフ」とは一体誰なのか?

神話や歴史の偉人なのか、まだ出会っていない運命の相手なのか、それとも自分自身なのか……。

信長先生が長い旅路へと誘うように並べたさまざまな音楽とともに、Collegamentoのみなさんがこの詩世界をどう読み解き、届けてくれるか注目しています。

 

 

続いては昨年、同声合唱部門のチャンピオンが!

 

9.NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科

(女声38名・福岡県・3年連続出場・第69回大会から4度めの出場)

 

NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科さんは、NHK福岡放送局開局75周年を記念して2005年4月に発足。

小学生から高校生まで総勢67名ですが、今回は中学・高校生のシニア科で出場。

昨年は松下耕先生の「うたおり」を演奏し、金賞第1位の文部科学大臣賞を受賞。

発声、音楽の素晴らしさはもちろん、言葉への感性が素晴らしいと大絶賛されました。

 

MIRAIさんの今回の演奏曲は

課題曲F3「 Ⅰ 」(「Motet Vernale」から) 

自由曲:Don Macdonald「Winter Sun(冬の太陽)」

新実徳英「空に、樹に…」から「生きる」

 

おお、自由曲Don Macdonald「Winter Sun(冬の太陽)」は4番目に出場のHBC少年少女と同じ!

これはHBCとNHKの仁義なき戦い?!……聴き比べが楽しみです。

新実先生の「生きる」は1995年Nコン高校の部課題曲。

自分はこの曲大好きなんですよ。

谷川俊太郎氏の「生きる」がテキストなんですが、「六十二のソネット」の「私はひとを呼ぶ すると世界がふり向く そして私がいなくなる」も使われていて。

Nコン課題曲初めての無伴奏作品、構成も優れ、詩から入った人間としては新実先生の「生きる」に納得が大きいんです。

(余談ですが新実先生の「生きる」には山鹿中合唱部へ贈られた、ヴァージョンアップ版「生きる -2007-」が存在するんですね。今回MIRAIさんが演奏される「生きる」には何も書かれていないのでオリジナルの方だとは思いますが)

 

MIRAIさんの実力の高さは折り紙付き。

さらに指揮者:大庭尋子先生の楽曲への解像度の高さ。

そして何より「生きる」、そして「六十二のソネット」を、彼ら彼女たちの等身大の歌で聴かせてもらえることに期待しかありません。

 

 

続いては東北からあの高校のOG合唱団が!

 

10.合唱団L'alba

(女声21名・福島県・3年連続出場・第70回大会以来5回目の出場)

https://x.com/Lalba_otome?s=20

 

L'albaさんは安積黎明高校のOG中心に2014年に創団し、現在は同校卒の新しい仲間も加わっているとか。

「L'alba」はイタリア語で「黎明」の意味を持つということ。

星英一先生の指揮、御指導の元、郡山と東京都内各所で約月2回活動中だそう。

 

昨年は三善晃「虹とリンゴ」を演奏され「柔らかいし、ただソフトなだけじゃなく惹きつける魅力を持っている」と藤井宏樹先生に評価されていました。

 

今回の演奏曲は

課題曲F1 Sub tuum praesidium(1584a)

自由曲:三善晃「三つの夜想」より「3.或る死に」

 

課題曲のF1パレストリーナは、今大会でラルバさんだけの演奏なので、聴けて嬉しいですね。

自由曲の「或る死に」は詩人:村松英子氏18歳の時の詩に作曲。

 

私は知る ─私を 支えてくれる堅固な柱を 私のために かるい笑いをたたえたままで 旅に立った者を」(村松英子「或る死に」より)

 

生きる力に満ちている、若さゆえの生の揺らぎ。

死者へ憧れを感じる繊細な心の揺れに、三善先生が美しく、そしてドラマティックに曲想を付けられています。

ラルバさんの過去の演奏は、言葉の意味や感情と距離を置いた、透明でクリアな音という印象。

自分の思いを主張せず、音が「在る」だけ。

ただ、その音が新鮮な響きを生む瞬間を何度も経験してきました。

「三つの夜想」1985年の初演から40年。

数え切れないほど演奏されてきた「或る死に」、しかしラルバさんの演奏には新しい響きが宿るかもしれません。

 

 

続いて新進気鋭の指揮者と男声合唱団!

 

11.男声合唱団ノヴァーリス

(男声42名・千葉県・2年連続2回目の出場)

https://x.com/male_novalis?s=20

 

昨年初出場で金賞第2位を受賞。

室内合唱部門に出場されるAF合唱団:石橋遼太郎先生が指揮者の団体です。

昨年は西村朗「永訣の朝」を演奏。

配信で聴いてこんな感想を残していました。

良い演奏は良い前奏からわかる、まさにそんな演奏でした。

ピアニスト岩本先生の素晴らしい前奏、さらに合唱の日本語もさすがこの指揮者ならではの自然さ。

音色も非常にいいんですよね。

バリトンバスの渋さというか深さ、豊かさがもうたまらなかったです。

ノヴァーリスさん、今回の演奏曲は

課題曲M4「いきよう」

自由曲:新実徳英「祈り」男声合唱とピアノのための

 

43年前に広島・崇徳高校グリークラブが初演した、典礼文、中原中也の詩をテキストにした作品。

「やさしい魚」と同じ年の1982年に作曲されたんですね。

中原中也の激しく、しかし深い祈り。

「死の時には私が仰向かんことを!」が強く残る曲です。

 

ノヴァーリスさんの演奏を機に楽譜も出版されるとのこと。

新実先生はレッスンに赴いた際に

「第一声を聴いて、ハイ・レヴェルの合唱団と直ぐに分かる。何事であれ『佳きものは出会った瞬間に解る』というのが僕の信念で、まさにそのことを実感したのだった」と賞賛。

このように近年あまり演奏されてこなかった作品を掘り起こし、再びステージに載せる意義はとても大きいと思います。

昨年その演奏に心を動かされた岩本果子先生のピアノが聴けるのも嬉しい。

作品が演奏によってまた甦る。

中也の祈りがどんな表情を見せるのか──ノヴァーリスさんが呼び覚ます「祈り」に注目です。

 

 

最後の団体は昨年の観客賞第1位、人気の女声合唱団!

 

12.monosso

(女声37名・香川県・9大会連続9回目の出場)

https://twitter.com/monosso_kagawa

 

2015年創設。讃岐弁で「とても」の意味を持つ団名のmonossoさん。

指揮者は混声合唱部門のMODOKI指揮者:山本啓之さん。

当ブログの観客賞では3年連続第1位を獲得の、とても人気がある団体です。

作品への深い没入と、観客と呼吸を共有するような演奏が魅力。

昨年は西村朗「永訣の朝」を選曲し、聴く者の心に深く届く演奏でした。

 

monossoさんの今回の演奏曲は

課題曲F2「Die Capelle」

自由曲:信長貴富「創造の草笛」女声合唱・オーボエ・ピアノのための

 

お~、「創造の草笛」は岡山県・Coro Piaceさんの委嘱曲。

詩の中で「草笛」は愛する人の象徴として存在し、本作のオーボエはその「愛する人=儚い存在」であるかのように音が紡がれている。

合唱は詩人の声として歌い、ピアノは合唱とオーボエを包む宇宙空間のような雰囲気が醸し出される。

2023年のCoro Piaceさん全国大会の演奏では「大手拓次の詩ということで官能的な香りもあり。草笛を模したオーボエ、ピアノと合唱との独自の世界。後半の鮮烈な和音や訴えが輝き、信長先生の新境地」という感想が寄せられていました。

 

なかなかオーボエと合唱の協演は聴けることが少ないですからね。

さらに課題曲のシューマンもmonossoさんならひと味もふた味も違った演奏を聴かせてもらえるはず。

「創造の草笛」では名ピアニスト:酒井信先生とのアンサンブルも楽しみです。

 

結成10年、そして来年は初めての単独演奏会。

さらに指揮者:山本さんにとって“合唱を始めた地”である佐賀での演奏ということで、さぞかし気合いも入っていることでしょう。

"ものっそ”期待しています!

 

 

以上で同声合唱部門出場団体のご紹介を終わります。

同声合唱部門、全12団体聴かれた方はぜひ

「観客賞」にご投票を!

 

(次回は混声合唱部門の団体をご紹介します)