
九州佐賀国際空港
前回は混声合唱部門の前半に出場される8団体をご紹介しました。
混声合唱部門の後半。
地元・佐賀の人気団体が登場!
9.MODOKI
(佐賀県・66名・3年連続23回目の出場)
https://x.com/MODOKIchorus?s=20
1991年創設。月に1回、各地から団員が集まり集中練習を行う団体。
昨年は三善晃先生の「蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩(オード)」から「2.さまよえるエストニア人」を演奏し、観客賞第2位を獲得。
自分の貧弱な視聴環境もあり、配信はどうしても生演奏ほど心に届きにくいのですが、それでも MODOKI さんの演奏には泣かされました。
「天使たち」で宙を力強く指し示す山本さんの姿に、視界が滲んでしかたなかった。
……ところで山本さん、そのTシャツどこで売ってるんですか?佐賀?
そんなステキ指揮者を擁するMODOKIさんの演奏曲は
課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から)
自由曲:木下牧子「オンディーヌ」
四大聖霊のひとつ、水の精オンディーヌが、人間の騎士ハンスに恋慕する物語を、詩人・吉原幸子氏が愛の純粋性を軸に厳しく、そして哀しく書いた詩。
聴き終えたあと、「愛は堕落なのかしら」という言葉が静かに残ります。
山本さんが指揮され、同声合唱部門に出場する女声・monosso さんが3年前に取り上げた演奏も大変素晴らしかったのですが、この作品のオリジナルは混声版なんですよね。
(混声版が1990年初演、女声版が1994年初演)
とは言え、混声版の生演奏には、なかなか出会えなくて。
MODOKIさん2月演奏会テーマの「相対するものたち」には「オンディーヌとハンス」、つまり女性と男性の対比がより明確になる混声版がしっくり来るのだろうな、などと思います。
混声版を生で聴ける貴重な機会。
名ピアニスト・酒井信先生とのアンサンブルも大きな楽しみです。
意気込み動画とは“相対する”(?)繊細で、心の奥底に届くような「オンディーヌ」を期待しています!
続いて混声部門最多人数の団体が!
10.淀川混声合唱団
(79名・大阪府・2年連続15回目の出場)
https://x.com/yodokon?s=20
1985年に結成。
指揮者は伊東恵司さん。
ちなみに伊東さんは今大会、大学ユースの同志社グリークラブさん、室内のアンサンブルVineさん計3団体を指揮し、上西一郎先生と並ぶ数となります。
79名の出場人数も混声合唱部門最大人数。
昨年は高嶋みどり「青いメッセージ」から「ごびらっふの独白」を取り上げ、混声の良さを活かしたスケールの大きな演奏を聴かせてくださいました。
通称よどこんさんの演奏曲は
課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から)
自由曲:信長貴富・混声合唱とピアノのための「春と修羅」から「II」
宮沢賢治の詩に基づき、戦う自我の象徴「修羅」と、悟りの境地「春」という相反する要素を対比し、賢治の精神世界を描くスケールの大きな作品です。
地の底の呼吸音に始まり、輝きに満ちた春の世界へとダイナミックに展開します。
日本的な粘着質な音使いと、西洋的でロマンティックな音響の鮮やかな対比が特徴。
賢治が音楽的効果を狙った語句「ZYPRESSEN」も印象的で、持続する緊張感の先に壮大なカタルシスが訪れます。
過去に全国大会でも多くの団体が取り上げてきました。
難易度は高くても、それだけ惹きつける魅力がある作品と言えるでしょう。
よどこんさんはまず「自分たちが楽しむ」という姿勢が前面に現れているのが良いなあ、といつも思います。
歌うことの喜びを原動力に、「春と修羅」の世界をスケール大きく、ホールいっぱいに繰り広げて欲しいと願います。
続いて、超絶難易度の曲を演奏するあの団体?!
11.VOCE ARMONICA
(40名・千葉県・2年ぶり第64回大会以来11回目の出場)
https://x.com/vocearmonica?s=20
千葉県内の中高合唱経験者を中心に2007年10月に発足。
団名はイタリア語で「調和した声」の意味。
指揮者は室内合唱部門のChoeur Premierさんも指揮する黒川和伸先生。
2年前は細川俊夫「アヴェ・マリア」という難曲に挑み、「凄い集中力、高いテンションを持続して歌い切ったのが素晴しい」と高く評価されました。
過去にも三善「レクィエム」など難曲をいくつも取り上げており、「おそらく黒川先生はコンクールの場を《合唱音楽の究極の表現》で挑みたいという思いがあるのでは」と感じます。
そんなアルモニカさん、注目の演奏曲は?
課題曲G3 萩原英彦「秋の午後」(「光る砂漠」から)
自由曲:八村義夫「愛の園 アウトサイダーI」
あ、アゥ……
……「秋の午後」は4団体続いたラストですね!
アルモニカさんの演奏は、きっと他団体と違った味わいになる予感がします。
頑張ってください!
次は埼玉県の団体・・・とボケたくなるくらいの難曲なんです、この自由曲は!
改めて自由曲は混声合唱のための 「愛の園 アウトサイダーI」
(William Blake 詩/八村義夫 曲)
この曲については、11年前の高松大会で同曲を演奏されたCANTUS ANIMAEさんの記事をぜひお読みください。
CA副団長Mariさんの言葉(抜粋)
「ルネ・バロ好きには到底理解できないわけのわからなさです。
メロディらしきものは何もないし、脈絡もなく音が飛ぶし、歌詞は英語の上にセリフも多く、最大24声部で、各声部が半音ずつずれてぶつかり合ってるし、もうこれどうやって歌うの? というのが第一印象でした。」
「雨森文也先生が1994年金沢での全国大会、合唱団OMPさんの演奏で衝撃を受け、2000年にCAさんで演奏しようと試みるも退団者が続出して諦め、14年を過ぎ、やっと演奏することができた念願の曲」
……これだけでも、この曲の“ヤバさ”は十分伝わると思います。
実際、この全国大会の長い歴史でも、演奏した団体は合唱団OMP(現・合唱団響)さんとCANTUS ANIMAEさんの2団体しかありません。
ウィリアム・ブレイクの詩を読むと、「自由で無垢な愛の世界が、宗教的・社会的な抑圧によって壊されてしまう痛烈な詩」であることがわかります。
私自身、高松の全国大会でCAさんの演奏を聴いたとき、ステージから無数の黒い腕が伸びて縛り付けるようなイメージに襲われ、終演後には
「やりたいことをやらなくて何が人生だ!」
…と血が沸き立ったのを今でも思い出します。
この難曲を選ぶまでには、指揮者・黒川先生にも多くの葛藤や苦労があったはず。
全国大会で演奏した合唱団OMP指揮者、栗山文昭先生は、黒川先生に多大な影響を与えた方でもあります。
Xのアルモニカさんアカウントで目に留まった黒川先生の「(この曲を演奏する)最初で最後のチャンスかもしれない」という言葉が心に響きます。
念願の曲を演奏する機会。
黒川先生、団員のみなさんの今までの想いを、存分にぶつけていただきたいですね。
ところでX(旧ツイッター)ってキーワードでけっこう昔まで遡れて。(sjgajamjは自分の前のアカウントです)
黒川さん、良かったね、夢ってかなうこともあるんだね。
19分の休憩後、センスが良いと言えば思い出すこちらの団体!
12.scatola di voce
(38名・埼玉県・4年連続8回目の出場)
https://x.com/scatola_di_voce?s=20
2003年春に指揮者・森田悠介先生とその呼び掛けに集まった仲間を中心にして誕生。
scatola di voceは、イタリア語で「声の箱」の意。
スカートラさんはいつも海外の曲を、センス良く演奏してくれる印象。
演奏だけでなく、ステージ上の振る舞いもどこか日本人離れしていて。
昨年はスウェーデンの作曲家ペッテション「われを解き放ちたまえ」をトリで演奏し、審査員の藤井宏樹先生からは「まず持っている声の素晴らしさ。ポテンシャルは計り知れないんじゃないかな。耳もいいし、音の鳴らし方がちゃんと世界観を持っている」と高評価。
金賞第2位の愛媛県知事賞も受賞されました。
そんなスカートラさん、今回の演奏曲は?
課題曲G1「Dies sanctificatus(パレストリーナ) 」
自由曲:Uģis Prauliņš「The Nightingale(ナイチンゲール)」から
「8.The Emperor and the Death(皇帝と死神)」
「9.Reprise(リプライズ)」
アンデルセン童話「ナイチンゲール」を題材とした最大21声部の大作。
なんでもリコーダーとの協演作品だそうで。
ここは作曲家プラウリンシュの国、ラトビアへ留学された合唱指揮者・山﨑志野さんの楽曲紹介をぜひお読みください。
「ナイチンゲールは鳴き声を模倣した超絶技巧のリコーダーと深みのあるバスによるバスオクターブ”D”から4オクターブ上で鳴り響くソプラノの”D”まで要求される合唱への広い音域、動物の鳴き声の描写、多数に分かれる声部など高度な要求が続くにもかかわらず、作品は一度聴けば気が付けば物語の中へ引き込まれるような魅力があります」
実際に演奏を聴いてみると、まさに山崎さんが書かれるように、リコーダーとのやり取りがスリリングでカッコイイし、ナイチンゲールの物語に入り込んで夢中になってしまいます。
スカートラさんは8,9と最後の2曲を演奏されますが、機会があれば最初から聴いて欲しい!
意気込み動画からも、この作品への思い入れを強く感じます。
コンクールの場でありながら、コンクールを忘れてしまう演奏。
長年聞いていると稀にそんなことが起きるものですが、今回のスカートラさんのナイチンゲールもそんなステージになる予感がします!
続いては……え、混声部門が職場部門に?!
13.香良洲自動車学校
(38名・三重県・初出場)
初出場おめでとうございます!
……いや~こちらの合唱団、ネタがあり過ぎてですね、何を書こうか迷います!
↑ こちらのリンクからは
「三重大学附属中学校の合唱仲間4人で、またみんなで歌える機会があれば、とずっと野望を持っていました。そして、ちょっとしたきっかけから話が進み、2024年に香良洲自動車学校を結成」とのこと。
そして初出場ながらおかあさんコーラス全国大会へ出場し、見事ひまわり賞、そしてグランプリ!凄い!
自分も配信で聴いていたんですが、「香良洲自動車学校」という団名から「ウケ狙いかぁ……」と思っていたら、透き通った発声と確かな音楽性を感じ、身を乗り出した憶えがあります。
信長先生も「自動車学校とか、ロールプレイ系の合唱団が流行るのだろうか...」と呟かれていますね。
ちなみに「香良洲」も「Chorus」の当て字?と思っていたら、これは津市にある実際の町名でした。
さらに指揮者:福井悠大先生の役職名は「理事長」!
そんなカラスさんの演奏曲は
課題曲G4「不思議(石若雅弥)」
自由曲:三宅悠太 「遠きものへ──」から「おやすみなさい」
三善晃「地球へのバラード」から「Ⅴ.地球へのピクニック」
G4不思議は混声部門ではカラスさんだけですね。
「おやすみなさい」は長田弘氏の詩。
「おやすみなさい森の木々」と、いろいろなものへ優しく「おやすみなさい」と語りかけ、最後は「おやすみなさい私たちは一人ではない おやすみなさい朝(あした)まで」と終わります。
三宅先生らしい音の煌めきと温かさが伝わる作品。
「地球へのピクニック」は谷川俊太郎氏の詩。
地球(ここ)で永遠に繰り返される、幸福な営みへの讃歌と願いをリズミカルに感動的に歌い上げます。
カラスさんの意気込み動画も届いていますね。
……うん、これは文部科学大臣賞決定!(意気込み動画部門)
プロの仕業?でも、こんなところから日本の合唱、コンクールって変わっていくのかも。
動画の笑いの奥にあるファミリー感から、課題曲と自由曲2曲が、より魅力を増す気がします。
なんだかいろいろ楽しみな団体、応援したくなりますね。
カラスのみなさん、初舞台がんばって!
続いて、音楽へ真摯に向かう若い団体の登場です。
14.合唱団 「櫻」
(33名・福島県・3年連続4回目の出場)
https://x.com/chor_sakura?s=20
福島県立喜多方高等学校OG&OBを主体として2009年に結成。
福島・東京の2拠点で活動中の団体。
昨年はラインベルガー、マルタンの二重合唱ミサを演奏し、藤井宏樹先生から「本当にスコアに寄り添って愛情を持って取り組んでいくと、これだけ美しい演奏になるんだな。感嘆の言葉を惜しみなく捧げたい素晴らしさでした」と賞賛。
過去にはメンデルスゾーンも選ばれ「音楽のフレームをしっかり捉えている基礎力の高い団体」という感想も。
福島県の高校合唱団が母体なだけあって、基礎力はもちろん、指揮者・佐藤朋子先生の、作品本来の姿を見据える力が高いのでしょうね。
櫻さん、今回の演奏曲は
課題曲G2「 Das edle Herz(ブルックナー)」
自由曲:三善晃「地球へのバラード」より
「1.私が歌う理由」
「4.夕暮」
課題曲のブルックナーは、基本を重視する櫻さんならではの音楽が聴けると期待。
「地球へのバラード」は前の香良洲さんも演奏した曲集。
三善先生は谷川俊太郎氏のこの詩に、よくあんな軽くリズミカルな曲を付けたなぁ!といつも感心してしまう「私が歌う理由」。
世界と自分との繋がりと断絶、思索的な「夕暮」。
「地球へのバラード」制作過程については、初演団体である当時の柏葉会団員さんが、三善先生とのやり取りをCANTUS ANIMAEさんのHPに詳しい記録を残されています。
新しい作品を世に出すまでの過程、三善先生の優しく温かいまなざしが感じられる、素晴らしい記録です。
藤井先生も語られていましたが、このようによく知られた曲を「スコアに寄り添って愛情を持って取り組」むことは本当に大切だなと思って。
自分もやりがちですが、過去の名演を聞き込み、ついその演奏をなぞってしまう。
でも、名演のリスペクトに留まるなら良いけど、モノマネ大会になっちゃうのはダメですよね……。
佐藤朋子先生と櫻のみなさんが、スコアとしっかり対峙した、櫻さんならではの演奏を聴けるのを楽しみにしています!
続いては北海道から優しい響きの団体が。
15.Baum
(61名・北海道支部・2年連続11回目の出場)
Baumさんは2009年に札幌で創立。
指揮は同声部門に出場の、HBC少年少女合唱団シニアクラスも指揮される大木秀一先生。
団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。
大「木」先生を慕い集まって作られたことによる団名なのでしょう。
(HPの名称が「Big Tree Chorus Club」!)
昨年はブルックナー「Ave Maria」「キリストは我らのために」を説得力のある演奏で聴かせてくれました。
Baumさん今回の演奏曲は
課題曲G2「 Das edle Herz(ブルックナー)」
自由曲:Susan LaBarr「Angele Dei(神の天使)」
Gustav Holst「Nunc Dimittis(今こそ主よ、僕を去らせたまわん)」
アメリカの作曲家スーザン・ラバー「Angele Dei(神の天使)」は、厳かな雰囲気から安らぎへ導き、天上に声が昇っていくような守護天使への祈りを感じさせます。
イギリスの作曲家ホルスト「Nunc Dimittis(今こそ主よ、僕を去らせたまわん)」は8声部で神秘的に展開し、ソリストや男声・女声の交唱によって徐々に高まり、最後は力強く華やかに主を讃える作品です。パレストリーナやバードの影響も感じられ。
2曲ともHBCさんの選曲と同じように、聴く者へ緊張を強いることなく、心を静かに平安へと誘ってくれます。
Baumさんの澄み切った祈りの声が、客席へ穏やかな祝福を届けてくれることでしょう。
この佐賀大会、最後の団体です!
16.混声合唱団Pange
(27名・高知県・3年連続7回目の出場)
https://x.com/Pange_Kochi?s=20
2003年2月に結成。
昨年は宮本正太郎先生の「アモール・ファティ」を演奏。
指揮者は全国大会で高知学芸中学、学芸高等学校コーラス部の2団体を指揮された坂本雅代先生。
昨年のPangeさんの演奏について藤井宏樹先生は「指揮者の気質なのか、とっても誠実に明るく屈託なく、かといっていい加減じゃなく、本当によくスコアを見てらっしゃって、素敵な演奏だったと思います」と述べられていて、自分も坂本先生のお人柄を思い出し、読みながら大きく頷いてしまいました(笑)。
パンジェさん、今回の演奏曲は
課題曲G1「Dies sanctificatus(1563)」(パレストリーナ)
自由曲:田畠祐一「狂恋の一滴 ~恋の色彩抄~」
自由曲は昨年、コンビニさんが委嘱し全国大会で演奏された作品。
課題曲にもなった「混声合唱とピアノのための 恋の色彩」を再構成したもので、古今和歌集の狂うような激しい恋の歌を題材にした劇的なもの。
パンジェさんは昨年の「アモール・ファティ」もそうですし、土田豊貴先生への委嘱など、新しい邦人作品に積極的に取り組まれていて。
また、前述の藤井先生のお言葉のように「明るさ」を備えているため、他団体とは明らかに違った聞こえ方、印象になるんですよね。
今回の「狂恋の一滴」もコンビニさんの印象が強い曲ですが、パンジェさんならまた違った角度からこの曲の魅力を引き出してくれると思うんです。
「これしかない」じゃなく、「パンジェさんの演奏、これもいいよね!」って、とても豊かじゃないですか?
パンジェさんならではの解釈と響きが、また一つこの作品の景色を広げてくれることを願っています。

混声合唱部門、全16団体聴かれた方はぜひ
「観客賞」にご投票を!
《ありがとうございました》
これで佐賀全国大会・4部門全54団体のご紹介を終わります。
体調の理由で突発的に始めたため、いろいろ不備も多かったと思いますが、いかがでしたか?
昨年、体を壊して松山大会を諦め、配信で全国大会を鑑賞したんですが。
いやもちろん、自宅でリアルタイムに演奏を聴けるのは素晴しい!ありがたい!
でもね、音響や雰囲気の違いはもちろんですが、決定的な違いがあったんです。
それは「拍手」。
合唱団を迎え入れるとき、良かった演奏に賞賛の気持ちが湧いたとき。
モニターの前でどんなに大きく拍手しても、それは決して届かない。
このことで気づいたのは、
「あぁ、自分は拍手で応援の気持ちが届くことを信じているんだな」と。
そして、合唱団のみなさんが拍手に演奏で応えてくれるのを信じているんだな、ということです。
今回の連載記事だって、届かないかもしれない拍手です。
ずっと懸命に頑張り続けると壊れてしまうけど。
倒れてから、立ち上がろうとするのが難しいとき、温かな言葉や応援が立ち上がるきっかけになるじゃないですか。
辛いときのあと一押し、引っ張り上げられなくても、やさしく手を握るだけでも。
この記事がそんな力になればいいなと思います。
この企画も長く続いています。
昨日読み返したら、10年前に合唱団のさまざまな人から聞いた話をまとめた、最終回の記事が目に留まりました。
少し修整して、最後まで読んでいただいたみなさんにお送りします。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
現実のいろいろな苦難を乗り越え、
それでも「いま、自分のできることを」…と
前へ進もうとするみなさんを、
私は応援します。
暗譜が進まず呪文のように繰り返していたら
隣の人に不審な目で見られた通勤途中の朝。
団の連絡事項の調整で休み時間がほとんど潰れ
ため息をつく昼。
悔しさに唇を噛みしめ楽譜を抱え
ひとりカラオケボックスの扉を開ける夕暮れ。
ベッドで練習録音を聴き返していたら
目が覚め眠れなくなった夜。
遠方の練習場所への夜行バスで目覚め
痛む体に顔をしかめながら見る夜明けの光。
・・・趣味というだけでは割り切れない思いを抱え、
がんばっている人がいるのを私は知っています。
あなた以外はそのがんばりを知らないかもしれない。
でも、私は知っている。
「凄いぞ!よくがんばってるね!」と
力を込めて言ってあげたい。
その後に「どうしてそこまでがんばれるの?」と
尋ねてみたい。
なにがあなたをそこまで駆り立てるのか、と。
勝手な推測で申し訳ありません。
でも、おそらくあなたは、はにかみながら、
大事な秘密を打ち明けるように、
こう答えてくれるのでは。
「…やっぱり好きだからね、合唱」と。
ありがとうございました。
佐賀でお会いしましょう!

(観客賞バックステージ2025 おわり)