・・・なんと中途半端な数だ。
や。このブログや他所で書いた本の肯定的な感想を数えると
30以上になったんで、これでも絞ったんだけど・・・。
(昨年はベスト11挙げた後に、
補足で6作品書いたんでした…)
今回は16位から9位までを。
第16位
「百瀬、こっちを向いて。」 中田永一

- 作者: 中田永一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2008/05/10
- メディア: ハードカバー
- 購入: 5人 クリック: 99回
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恋愛小説の短編集。
中田永一という作家は初めて目にするが
某有名作家の別名義らしい。
登場人物が小学生から大学生ほどの若い年代ばかり。
しかも恋愛モノ、というおっさんにはキツイ本ながら
ハマった!面白かった!!
書評家の北上次郎氏は「ベタな設定が魅きつける」
みたいなことを書いていましたが
うん、設定自体は確かに「なにこの20年前のマンガ」とか思います。
しかし、その舞台を登場人物の生き生きとした描き方で魅力あるものに。
気に入ったのでアンソロジー「I LOVE YOU」に入っている
表題作も読んでみたけど。
なるほど、単行本では文がけっこう削られてるんですね。
でも個人的には削った分、読み手の想像を残す単行本の方が好き。
読みやすく、そんなに本に親しんでいない若い人にもオススメできます。
うーん、百瀬。魅力的だ・・・こっちを向いて、って言いたくなるわ。
第15位
「料理人」 ハリー・クレッシング

- 作者: ハリー・クレッシング,一ノ瀬直二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1972/02
- メディア: 文庫
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私の過去の感想はこちらで。
本の雑誌HPの読書相談室で西上心太氏が勧めていた本。
30年以上前の本で筋自体は単純なものの
状況によって登場人物の振る舞いが変化していく
その精妙な描き方は今でも記憶に残っています。
ブラックユーモア?長編では語り継がれるべき名作でしょう。
・・・それにしても読書相談室、
更新が終わってしまったのは悲しいなあ。
第14位
「やし酒飲み」 エイモス・チェツオーラ (土屋哲 訳)

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)
- 作者: イサク・ディネセン,エイモス・チュツオーラ,横山貞子,土屋哲
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/06/11
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 29回
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こーれーはー面白かった!
1952年にナイジェリアから飛び出してきた奇妙不思議な冒険譚。
解説(管啓次郎氏)から引こう。
そもそも「やし酒」って何だろうと訝り(中略)
このだらしない酒飲み小僧のために甘やかしの父親が
「専属のやし酒造り」を雇うことに呆れ、ついでたちまちのうちに、
そんな驚きは津波を前にしたスプーン一杯の水でしかないことを、
読者はいやというほど思い知らされることになる。
おお、どんな話なんだ?!って思うでしょ、さらに引きます。
何しろこの世界では、人と神と幽霊や妖怪のあいだに区別がない。
生者と死者のあいだにも区別がない。
かたちや運動を支配する法則が通用しない。因果関係もテキトーだ。
事件につぐ事件がひっきりなしに起こり、
白と黒だけでできているページに、パチパチとカラフルな光が飛ぶ。
ついたとえたくなるのはわれらが水木しげる先生のマンガだが、
文字という抽象度の高い存在だけで作られているこちらのほうが、
読者の想像力にとっては自由度も高い。頭が、野放しになる。
それで目を丸くし、口をあんぐりと開け、獣も驚くような笑い声を
ときどき立てながら、読み進めることになる。
6年間しか教育を受けていない著者の不思議な英語を
「〜だ」「〜です」と文末を統一せずに訳した、リズムある土屋氏の名訳。
世界には私が知らないだけで、
その筋では超有名な作品がたくさんあるんだなあ、と思い知らされた傑作でした。
しかしこの「やし酒」・・・いったいどんな味なんだろう、ゴクリ。
第13位
「ザ・ロード」 コーマック・マッカーシー

- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: ハードカバー
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(おそらく)核戦争後のアメリカ。
作物は育たず略奪と食人が横行する神の無い世界。
救いの無い世界を父と幼い息子が南へ向かう。
その内容からもっとドラマティックなものを予想していたのだが
寂寞とした風景と感情、無常観が支配し、純文学に近い印象。
(暗闇の中で紙が薔薇のように燃える模写の美しさなども)
希望が無い世界、希望が無い未来へ
自分の息子を残してしまうことの是非。
これは読む人に子供がいるかどうかでかなり印象が変わる小説。
「実際に子供がいる人にとっては恐怖小説」という感想もそうなのだろう。
父である主人公はある事を行うのを迷いながら結末を迎えるが・・・。
それはある種の“救い”なのだろうか? いや、しかし・・・
などと読み終わった後、荒涼とした風景が心にずっと残る、そんな小説。
第12位
「フロスト気質」(上・下) R・D・ウィングフィールド

- 作者: R.D.ウィングフィールド,R.D. Wingfield,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
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- 作者: R.D.ウィングフィールド,R.D. Wingfield,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
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ミステリ年間ベストものではあちこちで上位になっている作品。
このシリーズ大好きです。
下品でルーズ、しかし仕事中毒なフロスト警部。
上下でかなりの厚さがある作品なのだけど
それでも読み終わるのが悲しかった!
作者のR・D・ウィングフィールド氏が亡くなったため、
未翻訳のフロストシリーズはあと2作品だとか。
あああ、そう聞くと残りを早く読みたいような読みたくないような…。
この「フロスト気質」、そのダメさ加減が
読者の共感を得ていると思うのだけど
最後の最後で、そのダメさそのままで
「…フロスト警部、かっけーなあ!」
と痺れてしまう場面がありますよ。さすが。
第11位
「比較文化論の試み」 山本七平

- 作者: 山本七平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1976/06/07
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とある住職さんがそのブログで勧めていた本。
「ひとりよがりで同情心のない日本人」
「無宗教だが他人が宗教を信じるのは認める日本人」
…「え?」という作者の主張が本文を読むと納得。
そしてその日本人の特性はどこに由来するのか?
自分の思っている「現代的で普遍的な考え」が
実は昔からの日本人の考えであった、という驚き。
その住職さんの本書へのお勧めの言葉。
自分の考えは絶対ではなく
ある時代ある地域の中でしか通用しない
極めて限定的なモノの考え方であると
気づかせてくれる必読・必携の一冊
読むべし! 私も読み返します!!
第10位
「叱り叱られ」 山口隆

- 作者: 山口隆(サンボマスター)
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/02/07
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サンボマスターのヴォーカル&ギターの山口隆が
山下達郎、大瀧詠一、岡林信康、ムッシュかまやつ、佐野元春、奥田民生、
錚々たるミュージシャンと対談した本。
私の過去の感想はこちら。
この本読んでから、各ミュージシャンのCDを聴いたり
ネットで探したり。
表現する人への凄みも感じさせ、
日本の音楽への興味が増してくる本。
第2弾もぜひ出して欲しい!
第9位
「赤めだか」 立川談春

- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
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みなさん、2日深夜のNHK
「新春蔵出し!まるごと立川談志」観ましたか?!
いやー凄かったですねえ。
理論と感情の両側面から再構築された
師匠の「芝浜」なんて素晴らしかった。
というわけで番組にも出演していた「談志原理主義」の
談春師匠の本です。
既に講談社エッセイ賞も受賞し
評価が高い本書ですがやっぱり良いものは紹介しないと!
高校を中退して、談志師匠の下へ弟子入りした談春師匠。
辛い修行時代、同じ前座との別れ、
芸の追及・・・落語に魅せられた者の涙と笑いが詰まっている名作。
個人的に師匠の談志が最初の稽古で
「落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ」
と言う場面があるのだけど。
この名言、落語だけじゃなく、文章でも、マンガでも同じだよね。
特にリズムの方。
(続きます)