2010年に読んで印象に残った本をリストアップしたら
だいたい20冊ちょっとになりました。
今回は小説のベスト10を10位から6位まで。
第10位 山本弘「去年はいい年になるだろう」

- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/04/02
- メディア: 単行本
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2001年9月11日
ワールドトレードセンター崩壊を救ったのは
<ガーディアン>と名乗る500万体の
24世紀から来たアンドロイドだった。
世界の軍事力を無にする善意のガーディアン。その真意は。
著者:山本弘が主人公の実名SF小説。
面白いのは未来を教えられるが
2001年の時点では到底信じられない件。
「浦沢直樹があの絵で鉄腕アトムをリメイクするんだよ」
「んなわけねーだろ!」
「動画共有サービスが普及して
個人改変アニメ・映画が大量にアップされる」
「そんなもの著作権法違反で
たちまち潰されるに決まっている!」…ですよねー。
エアカーも月面基地も実現していない
「未来」の今だけど、
それでも10年後というのはやはり
「予測できない未来」なのだなあ、
ということが実感できて面白かった。
大変読みやすい小説だが
名作「アイの物語」と同様に、
合理的なアンドロイドと、
「非合理な人間」というものを対照させ
人間の本質というものを考えさせる毒の部分など、
なかなか考えさせるパラレルSF。
第9位 SHAUN TAN「ARRIVAL」

- 作者: Shaun Tan
- 出版社/メーカー: Arthur a Levine
- 発売日: 2007/10
- メディア: ハードカバー
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私の感想はコチラ。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20101220/1292850815
豊潤なイマジネーションと細密美麗な絵が手を取り合って。
そして「本」として所有することの楽しさを教えてくれる。
第8位 岸本佐知子編訳「変愛小説集II」

- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/28
- メディア: 単行本
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作者が違う海外の作家11の短編アンソロジー。
ぶっ飛んだ。これは凄い。
「恋愛」じゃなく「変愛」というのがミソ。
流れ着いた島がイケメンしかいない「彼氏島」、
野生のチアリーダー(笑)を探し回る
「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」
も良かったけど。
アリソン・スミス「スペシャリスト」。
この短編に「うおーっ」となった。
痛みを感じる女性が医者を訪れるが
どの医者もその痛みを治せない。
最後に15番目の医者「スペシャリスト」に会い、
「体の中にツンドラ、凍えた世界が広がっている」と診断を下される。
それによって女性とスペシャリストが有名になり
ワイドショーへ出るまでに。
そのショーで4人の探検隊が女性の中へ・・・という筋。
「なんだそれ?!」と思うが、読んだ後は何故か
主人公の女性の"痛み”と内部の凍えた世界を共有している。
そう感じた人は多かったようで、
この短編は約20分の映像作品になりYoutubeでも公開されている。
タイトル「The Big Empty」
細部は小説とは違う部分もあるが
単なる実写化に留まらない優れた映像作品。
第7位 星野智幸「俺俺」

- 作者: 星野智幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本
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他人が「俺」になって行動も感情も共感できる存在となっていく物語。
親しいと思う「共感」という心とは?同調圧力とは?
…などといろいろ考えさせる本。
ただ後半の「削除」に至る過程は(物語的には良いのだろうけど)
今ひとつ私には理解しがたかった。
自己矛盾を抱えた「俺たち」の否定?
石田徹也氏の印象的な表紙画も含め、
絶対映像化できない興味深い本。
エンターテイメント純文学とでも言うのかな。
なかなかオススメです。
第6位 小田雅久仁「増大派に告ぐ」

- 作者: 小田雅久仁
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/11/20
- メディア: 単行本
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大阪ニュータウンを訪れた電波系ホームレスと
アル中の父親に虐待された経験を持つ14歳中学生男子との邂逅。
書評家の豊崎由美さんが絶賛していたので読んだのだけど、これは凄い!
人間の空想こそがファンタジー、という点ではこの賞の先達である
森見登美彦氏と同じだが、とにかくその文章力、狂気の世界へ誘う力、
救いようの無い暗い筋なのになぜか存在する不思議な爽快さ、とたまらない。
ちょいと凹んでいる時に読んだので余計に感じ入ったのもあるけれど
「世界の檻」を感じている人には是非読んで欲しい作品。
好きなノンフィクション作家の内澤旬子さんもたいそう褒めている。
http://kemonomici.exblog.jp/13562155/
・・・なんというか、ある種の人にとっては
とんでもなく魅力的な小説なんじゃないでしょうかね、これは。
(続きます)