2010年読んだ本ベスト10 (ノンフィクションなど) その4


第4位 上原善広「日本の路地を旅する」


日本の路地を旅する

日本の路地を旅する


路地とは被差別部落のこと。
大阪の路地出身の著者が日本に点在する路地の今を記す
大宅賞受賞のノンフィクション。
これは素晴らしかった。


現在の路地の大半は新しい住宅街が出来て、
新しい住人は部落があった事も知らない場合が多い。
しかし、古くからの住人に話を聞くと
未だに歴然とした差別が残っている。

「この現代に被差別部落があるかといわれれば、
もうないといえるだろう。
それは土地ではなく、人の心の中に生きているからだ。
しかし一旦、事件など非日常的なことが起こると、
途端に被差別部落は復活する。
被差別部落というものは、
人々の心の中にくすぶっている爆弾のようなものだ」
本文205pより


強姦殺人の犯人が路地出身の荒れた家で育ったために
「このひどい環境では、路地出身がどうとかは関係無いのではないか」
そう最初は思う著者。
「…しかし、本当にそうだろうか?」と思い直す著者。
この逡巡は路地出身の著者だからこそ書けるもの。


犯罪を犯し、出所して八重山の島へ移住した
実の兄との再会が描かれる終章は心へ特に大きなものを残した。
差別された側の心の裡は、
差別されたものだけにしか理解できないのではないか。







第3位 井野朋也「新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには?」


新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? (P-Vine BOOks)

新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? (P-Vine BOOks)


東京へ行った際の「ベルク」レポートと
この本のもう少し詳しい私の感想はコチラ。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20100620/1277011118


最近TBSでベルクに関するテレビ番組があったそうで、
「新宿 ベルク」で検索すると比較的上位にある
このブログもアクセス数が上がりました。
…でも、その番組私は観れてないんだよ!


人の生き方、哲学というものはこうも店に現れるのか、と
感心する本でもありました。
それにしてもベルクへ無理やり立ち退きを迫るオーナーのルミネは
ホラーの趣きさえあります。


「ルミネ迷言集 それがルミネです」
http://norakaba.exblog.jp/15716752/


「私は人間でいたい」 ・・・えええー。



3月の東京行きはまずベルクに行きます!
それまで去年刊行されたベルク本第2弾
「食の職」を読み込んでおこう。


食の職 小さなお店ベルクの発想 (P‐Vine BOOKs)

食の職 小さなお店ベルクの発想 (P‐Vine BOOKs)






第2位  国分拓「ヤノマミ」 


ヤノマミ

ヤノマミ


アマゾン奥地でほとんど現代文明と接触せずに
狩猟採集生活、共同生活で生きていく
「ヤノマミ」族と150日間生活したルポ。


これは凄すぎる本。
読む人の生き方を変えてしまうかもしれない。


もう少し詳しい私の感想はコチラ。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20100820


DVDも出ているんですけどまだ観ていないんですよねえ。
本だけでこれほどヤノマミの世界に引っ張られるのに
実際の映像まで見ちゃったら、と考えて
なんだかふんぎりがつかなくて。



(つづきます)