観客賞スポットライト 混声合唱部門 その5

 

 

 




今回は3団体をご紹介します。

 

 

 

 

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昨年初演された委嘱曲が大人気。
毎回観客の心を揺さぶる演奏が評判の団体です。










13.東京都・東京支部代表

CANTUS ANIMAE

(62名・7年連続出場・第52回大会以来14回目の出場)


 


室内部門の合唱団まいさん、
同声部門のVOCI BRILLANTIさんも指揮される
雨森文也先生が指揮者です。


昨年、松本望さんに委嘱された「二つの祈りの音楽」は
全国で盛んに演奏されるようになり、
2番目に出場の合唱団ことのはさんも
1曲目の「夜ノ祈リ」を演奏します。
CANTUS ANIMAEさんも昨年の全国大会で
2曲目の「永遠の光」(短縮版)を演奏し、好評でした。



今年の演奏曲はG3 三善晃作曲「子どもは……」

自由曲は宗左近詩、三善晃作曲
混声合唱と2台のピアノのための
「交聲詩 海」より「I」「III」


団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 


今年の自由曲は「交聲詩 海」です。
この曲は1987年に、
合唱団OMP・栗山文昭先生によって初演されました。
その年の全国コンクールでも「海」を歌ったOMP、
それは今でも界隈で「伝説」と語り継がれるステージでした。
CA音楽監督の雨森先生も観客席に居合わせ、
あまりの衝撃で椅子から立ち上がれなくなったそうです。

「つながる魂のうた」と題した演奏会を、
私たちは昨年から開催してきました。
三善晃先生作品と
影響を受けた若い作曲家の作品を取り上げ、
三善先生から受け継がれている音楽を
味わう演奏会です。
演奏会を通して、
私たちは先生への思いを深めてきました。
そして今年の全国コンクール。
初演から三十年という節目の年に、
初演と同じ東京で「海」を歌う機会に恵まれました。

「海」は、海のさまざまな表情を彩り
豊かに表現します。
太古の昔から今に至るまで、
生命の故郷であった海。
そんな海でいきいきと生きる生命、
しぶきを上げる波、
空に浮かぶ雲、虹、夕映えの海…。
しかし、そんな海で人類は愚かな行動も犯しました。
七十年前、南の海で散っていった特攻隊の若い命。
悲劇への嘆きを経て、
曲の終盤は地球や生命への感謝・輝かしい未来を
強く願う気持ちが歌われます。

今年は課題曲も三善先生作品の「子どもは……」です。
子どもは「希望」「喜び」「天使」「私たちの生きる理由」、
たとえ「屈託の時代」「あらゆる恐怖」の下にあっても…。
歌い込むほどに、課題曲も自由曲も根底にある願いは
同じであることを実感しました。

母なる海で生命が脈々と続いているように、
三善先生の魂も脈々と続いています。
その系譜を次につなぐような
熱い演奏ができたらと思っています。

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6月25日に開催された「つながる魂のうた vol.2」での写真。

 



団員さん、ありがとうございました。

この「交聲詩海」は合唱団OMP(後の「響」)による
1987年の名演がまさに伝説となりました。
CAさんもかつてコンクールでこの曲を演奏しようとし
規定が変わったため
(当時は課題曲も含めた制限時間でした)
曲のカットを三善先生にお伺いしようとしたが
既にご体調がすぐれない状態で、断念したと聞きました。


昨年10月岐阜、
CAさんとMODOKIさんのジョイントコンサートで
この「交聲詩 海」が合同で演奏され、
私はこんな感想を残していました。

 

*  *  *  *  *  *

どんどん高まり、増していく音。
それでも雨森先生の要求は止まらない。
掲げた右手を何度も何度も大きく震わせ、
更なる音を、限界を越えた、遥かな音を!

合唱団の中から何かが弾け、生まれそうな。
クライマックス。

赤い薔薇 燃えて

夢の炎の炎の花

…ああ、これは、宗左近氏、三善先生が作り上げた
死者も生者もすべてひっくるめた
海、地球、宇宙の壮大な生命の賛歌なのだ・・・。
耳を圧する音と共に
そう納得している自分がいた。


*  *  *  *  *  *


伝説の演奏から30年経ち、
会場こそ違え、同じ東京大会での演奏。
そして審査員席には栗山文昭先生がいらっしゃいます。

三善先生が亡くなられた年の2013年。
4年前に三善先生の「であい」を演奏されたCAさん。
この時の演奏も「伝説」だと私は思っているのですが、
感想をこう記していました。

 


三善先生へ音楽が届いたと感じたのはもちろんですが、
CAさんがあれだけ音楽へ、
演奏へ全てを捧げ尽くしていたのなら。
三善先生は、きっとあの時あの場所にいらしていたと思うのです。
そしてこれからも、そんな演奏があるかぎり。

 

 

あれから30年、あれから4年。
音楽へ全てを捧げ尽す人と、
三善先生の魂が東京芸術劇場に在ることを願って。


















続いては大人数でも繊細な表現と響きを得意とする
選曲にこだわりがある実力団体です。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



14.愛知県・中部支部代表

合唱団ノース・エコー


(72名・7年連続・第47回大会以来20回目の出場)





近年はスウェーデンの作曲家
Sven-David Sandströmの作品を多く演奏されている
合唱団ノース・エコーさん。
昨年もサンドストレム「Four Songs of Love」を演奏し
 

 

素晴らしかった!

和音のグラデーションがすごく良くて。

バランスも完璧でしたね。

ずっとサンドストレームをやり続けないと
出来ない表現でしたね!

ある意味クロウト好みかもしれない演奏(笑)。
でも唯一無二の世界!

 

 

…などと好評でした。


今年の演奏曲は
課題曲はG2

自由曲はFrancis Poulenc「Exultate Deo」
Sven-David Sandström「A New Song of Love」

 

おぉ! 課題曲と繋がるプーランク作品に
お得意のサンドストレーム!

団員のM園さんからメッセージをいただきました。

 


私達が歌うのは、
課題曲のプーランク“Salve Regina”、
自由曲として同じくプーランクの“Exultate Deo”、
そしてサンドストレムの“A New Song of Love”です。

プーランクの2曲は、
1941年5月に知人カップルの
結婚祝いのために作曲されました
(しかし、この結婚は結局取りやめとなる)。
ドイツ占領下のパリにあって
寡作になっていたプーランクの数少ない作品です。
聖母マリアに神への執り成しを願う“Salve ~”と、
神を讃える賑やかな祝祭曲“Exultate ~”が、
くっきりとした対比を成しています。
サンドストレムの“A New Song of Love”は、
昨年取り上げた“Four Songs of Love”の
ニュー・バージョン。
歌詞も同じく旧約聖書の雅歌から採られており、
男女の愛がテーマです。
女声と男声のダブルコーラスの形式で、
互いへの熱い気持ちを歌い交わします。

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金沢での中部大会での写真だそうです。

 

 

 

M園さんありがとうございました。
プーランクの対照的な2作品。
そして昨年好評だった
サンドストレームのニュー・バージョン曲。
ノースさんの透明な響きで
どう演奏されるか楽しみです。


M園さんからはさらに。


年明け早々の、
ニューイヤーコンサートの宣伝をさせてください。

ニューイヤーコンサート
人生はフルコーラス!! ~合唱の魅力をあなたに

指揮:田中祐子 管弦楽:愛知室内オーケストラ

【日時】2018年1月14日(日)14:00開演
【会場】名古屋市青少年文化センター・アートピアホール
【入場料】全自由席:一般3,000円 学生2000円

合唱団ノース・エコーは、
コンサート第1部の
「魅惑の日本合唱曲」に出演します。
演奏曲目は次のとおり。

・群青
・夕焼け
・あすという日が
・COSMOS
・いつまでもいつまでも
・歌声はかわらず

詳しくはweb
合唱団ノース・エコーのページ
 または名古屋市文化振興事業団のページ)にて!

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よく知られている曲がオーケストラと共に!
興味深い演奏会ですね!


 

 

 

 

 

 

 

 




19分の休憩後、
続いては混声合唱部門で最大人数!
指揮者は今大会で最多出場の団体です!


 

 

 

 

 

 

 

 


15.大阪府・関西支部代表

淀川混声合唱団


(86名・7年連続出場・57回大会以来11回目の出場)




昨年はJózsef Karai
「Stabat Mater(悲しみの聖母)」を演奏され。

 

 

こういう曲を演奏したら
やっぱりよどこんは上手いよね、って。

オールマイティな団体なんだと思いました。
叫ぶところ、音を鳴らすところ…
弱音も上手いし、なんでもできる合唱団。

演奏の音以外にも
プラスアルファがすっごい聴こえてきました・・・。

緊張感に満ちた演奏。
しかし迫力だけではなく、大音量でも破綻せず、
バランス、音色、音量の選択が
細部に至るまでキッチリ仕上げられていました。

 

そんな感想が出るように
近年は大人数でも音量だけに頼ることなく、
個々の自発性までも感じさせるようになってきた
通称:よどこんさん。

指揮者は大学ユース部門の
同志社グリークラブさん、
混声合唱団名古屋大学コール・グランツェさん、
室内部門のアンサンブルVineさん、
そしてこの淀川混声合唱団さんと
今大会最多の4団体を振られる伊東恵司さん。


今年の演奏曲は
課題曲はG3「子どもは……」

自由曲はIngvar Lidholm作曲
「De profundis(深き淵より)」


伊東さんからメッセージをいただきました。


課題曲:
「和声」と「言葉の持つメッセージ性」との拮抗が
この曲の難しさと面白さなのかと思います。
言葉を使わずに和声のバランスや
展開パターンからの音楽の推進力を研究してみたり、
ひたすらに言葉を朗読しその音色を想像してみる、
などの練習をしてきておりますが、
このようなことが出来ることが
コンクールで課題曲に取り組む意味かとも思います。
課題曲選定者に感謝しながら、
楽しくもなかなかもどかしい練習を繰り返しております。
芸術表現の難しさと楽しさは人生と同じ。

 


自由曲:
深い音色に引き付けられて選択しました。
また、しばらく前に同じテキストで
違う作曲家の作品を取り上げていることもあって、
作曲家による視点や構成の違いから
テキストの深みとそれを取り巻く
(祈りの気持ちと音楽表現の関係性)について
学びながら練習したいと思いました。
北欧の神秘的なサウンドの中に、
時代の悲しみ、世界の悲しみ、に向けた
深い祈りを表現出来たらと思います。

 

 

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伊東さん、ありがとうございました。
スウェーデンの作曲家リードホルムの作品とは!
こちらの曲も昨年のカライと同じく、
実に緊張感に満ちた作品です。

課題曲、自由曲共に取り組み方へ
伊東さんの鋭い視点が感じられ、
今年のよどこんさんの演奏も楽しみです。

伊東さんからはさらに


淀川混声合唱団は
「コーラスめっせ2018」
4月21、22に出演します。
(大阪ビジネスパーク、円形ホール、Twin21)

伊東は、高嶋みどりの合唱ミュージカル
「夢にコダマする~あるボスザルの物語」の
公募合唱団を指揮します。

(コーラスめっせ2018)
http://chorusmesse.web.fc2.com/


…とのこと。
コンクールだけではなく、
こうしたイベント参加、演奏会など
多彩な活動をされるよどこんさん。
蓄積された経験で奥深い演奏を期待しています。




(明日に続きます)