(何度も何度も書きますが
独断と偏見に満ちた感想ですので
学校名検索などで不幸にも見てしまった現役高校生諸君は
あまり真に受けないように!
私が書いていない部分で
あなた方の良さはいっぱいあると思います)
福島県立安積黎明高等学校合唱団(金賞)
課題曲F4はすべてにおいて過不足ない表現。
自由曲:鈴木輝昭「II.反応 – 風の受胎」
(「妖精の距離」から)
表現の多彩さ、
そして課題曲でも思ったけれども
抜けのない表現で一曲を通した説得力はさすが。
ただ、あの「安積黎明」ということで
ベルの残響と声の重なりの響きへの追求や
「うねり」として声の表現をもっと欲しい気が。
55人と人数が減ったために
表現の幅が狭くなったのでは?…などと
どうしても欲が出てしまうんですよね。
鈴木輝昭作品として私には珍しく
その狙うところが面白く感じられる曲だっただけに
贅沢な(そして身の程知らずな)要求が出てしまうのかもしれません。
「安積黎明」ならもっと!と言うような。
愛知県立岡崎高等学校コーラス部(金賞)
課題曲G2。
テナーの上手さが光ります。
表現と心情の同調をもう少し繊細にするともっといいかも。
フレーズが始まってすぐクレッシェンドオオオ!!!
フォルテッシモでウオーン!!!!!で
全体にアメリカーンな感じ。
それでも大変上手な演奏でした。
自由曲は千原英喜「II.貳の段」
(「ラプソディー・イン・チカマツ」から)
…うーん、この曲のこの演奏は過去にOB団体の
岡崎混声合唱団が演奏したときに感想を書いたんですけど
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20090126/1232980541
「曲の半分」だけを歌っているような印象、というのを
母体の団体でも思い出してしまうことに。
結局、岡崎混声、岡崎高も表現として
「寂しい声」「くすんだ響き」というものの存在を
一切認めないがため
音や表情の変化に乏しいからではないかと。
もちろん基調となる声、響きは
常に「明るく」「輝かしい」声ということに
問題は無いんですけれども
トイレに100ワットの電球はいらないように
こういった「死」を想わせる楽曲、テキストでは
その「明るい声」一色の表現に
(少なくとも私は)違和感を持ってしまうのです。
もちろんそこまで「明るく」「輝かしい」声にするため
どれだけの練習を積んだか、というのは
理解できるつもりですし、
「明るい声」「寂しい声」両方の声を
高校の3年間で身につける難しさも理解できます。
金賞にも全く異議はないですし
動きを含めた演奏は素晴らしいものでした。
…なんというか・・・
素材もいいし、料理人の技量も優れているけど、
ケチャップとマスタードだけで繊細な和食を作るようなもので
その調味料にあった料理は他にあったろうなあ…
というのが正直なところです。ごめんなさい!
福島県立安積高等学校合唱団(金賞)
高校全団体で唯一「コンクール」であることを忘れた団。
そして唯一、涙腺がゆるんだ団。
課題曲G2はさすが元・名門男声合唱団。
上品なテナーが素晴らしく、
全体で互いに音を聴き合い、精妙に響きを作り出す感覚が
極めて優れた知性の上で成り立っているのを感じさせる。
自分の音を客観視できるという点が大きい。
そんな高校生ばなれした演奏もそうだが
制服ではなく、色とりどりのブレザーのためか
若い一般合唱団のような印象さえも抱かせて。
大げさではない、さりげなく、しかし効果を上げる表現。
空気の高いところで、聞こえるか聞こえないかのような
音を鳴らしているような緊張感。
存在として稀有な団体。
そして自由曲ウィテカー
「i Thank You God for most this amazing day」は
音が起点から大きく広がるイメージ。
その音の存在感の大きさ。
音の重ね方にこの団体の耳の良さを感じさせる。
声を発し、重ね、合わせることで、
ここまで凄いことが出来るんだ、と教えてもらった演奏。
彼らはこの演奏を実現するために
どれだけの試行錯誤をしたんだろう?
ネットにこの団体の自由曲演奏があるけれども
音質の問題を除いても、出来たての料理に対する
レトルト的な印象にどうしてもなってしまう。
(それでも上質な演奏だということはほとんどの人が
同意してくれると思いますけど)
あのホールで、空気を震わせ、耳に届けてくれたことに
喜びを感じるとともに
安積高校のみなさんに感謝を!
(2010年全国大会高校の部感想終わり)