観客賞スポットライト 室内合唱部門 その5

 

 

 

 

 室内合唱部門、今回で最終回です。

 

 

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夜の芸術劇場。

 



さて、室内部門のトリを飾るのはこちらの団体!



 


10.神奈川県・関東支部代表

マルベリー・チェンバークワイア

(混声19名・2年連続出場・第51回大会から13回目の出場)


 

昨年は自由曲の「Coonawrin(クーナウリン山)」が
インパクト強く!

 


 もうクーナウリンクナウリンくなうりん♪
 頭から離れなくって!

 クナウリン山ってなんなの?
 どこにあるの?
 なんかもうググんなきゃだめかなッ?!

 「クナウリン山」は
 スピード感があり、さらにリズムもしっかり、
 歌い分けも完璧!


…などと観客賞座談会でいつまでも話題に上っていました。
早口言葉の「Kaisa Isa Niyan(たったひとつ)」も
余裕まで感じさせる演奏。


毎回、選曲も楽しみな
マルベリー・チェンバークワイアさん。
課題曲はG2のプーランクですが自由曲は?

今回も音楽監督:桑原春子先生に解説をお願いしました。

 


自由曲1曲目は「Dies Irae 怒りの日」
チェコのZdeněk Lukáš (1928-2007) の
『レクイエム』の中の一曲です。
キリスト教の「最後の審判」の様子を描いたもので、
地面が揺れトランペットが響きわたる
激しく厳しい場面を歌います。
ルカーシュは10年前に亡くなるまで
チェコの合唱界を牽引しており、
声の扱いに秀でた作品を書くことで知られています。

この作品はチェコの合唱団が1993年に
日本に演奏旅行に行くために
前年1992年に委嘱したものです。
楽譜には
「この『レクイエム』は人間の死を嘆くものではなく、
 魂が生き抜くことを信じ、
 生きることを愛した作曲家の深い思いが
 表されている作品である」
と記されています。


自由曲の2曲目「Beerburrum ベアーブラム山」は
オーストラリアのStephen  Leek (1959-  )
作詩・作曲の合唱組曲
『Glasshouses グラスハウス・マウンテンズ』の3曲目です。
昨年の全国大会でも同じ組曲から
2曲目「Coonawrin クナウリン山」を演奏し、
今回はその続きになります。

グラスハウス・マウンテンズというのは、
オーストラリアのクイーンズランド州にある
12の死火山から成る美しい山脈で、
カビカビ族(ガビガビ族) という
アボリジニの部族が元々は所有者とされ、
会合や儀式を行ってきた神聖で大切な場所でした。
現在は国立公園になっています。
この「ベアーブラム山」はこの山脈の一つです。

1770年に白人の船が近づいてくることに警戒して
カビカビ族が様々な音を出すシーンから始まり、
波に乗ってどんどん近づいてくる船の様子、
白人が上陸し原住民を征服(略奪・虐殺)する様子、
それでもカビカビ族は聖なる場所や儀式を夢見て
長年プライドを失わなかった様子、
今も続いているカビカビ族の生活の様子
(オビ・オビという土地には
 バンヤ・バンヤという松の木が今もそびえ、
 コンダリーラ滝は今も森に水を落とし、
 ムガナ草は籠を編むたびに今も空中に舞うなど)を、
ジャングルの動物や鳥の鳴き声とともに、
にぎやかに歌います。

最後の部分では
「山々には、
 長年の人間と自然が分かち合ってきた喜びがあり、
 月日が経った美しさと、
 歴史からのメッセージがある」と、
アボリジニの人々の屈しない姿と誇りを
山の美しさに重ねて歌います。

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「先日の5月の定期演奏会のときのものです。
 フィリピン・マドリガル・シンガーズ風に座ってみました」
…と春子さんから。

 

 

 


春子さん、ありがとうございました。
なんと昨年の「クナウリン山」の続編とは!
今年は「ベアーブラム」が耳に残ってしまうのでしょうか?(笑)
リークの作品として有名な
「コンダリーラ滝(Kondalilla)」も出てきて
聴く前から興味が惹かれます。

自由曲1曲目のルカーシュ「Dies Irae」
大音量で鳴り響く鋭く激しいリズムで
短いながら強い印象を残す曲。

 

基礎技術がとても高く、
声の演技力もあるマルベリーさんだから
さまざまな要素を含むこれらの曲を見事に演奏し、
この室内部門の最後を飾って下さるに違いありません。

 

 

 

 

 



さて、これで室内合唱部門が終了し、
あとは審査結果を待つだけ・・・じゃないんです。

休憩と客席入れ替えの56分が過ぎてから
コンクール全国大会70回記念企画として
藤井宏樹先生指揮、「樹の会」さんによる
「70回記念特別コンサート」と題された
過去の課題曲の演奏が18:10から行われるんです!



藤井宏樹先生と言えば
コンクールの全国大会では
合唱団ゆうかさん、女声アンサンブルJuriさん、
山梨大学合唱団さんで
素晴らしい演奏を聴かせていただいた覚えがあります。
今年5月のTokyo Cantatで藤井先生が指揮された
廣瀬量平先生「五つのラメント」は心に刻み込まれました。

プログラムが課題曲演奏?ということで
今年の課題曲を樹の会さんがすべて演奏し、
出場した合唱団が
「まいりましたー!」と白旗を上げる展開なのでは…と
予想したのですがそうではなく。
(…そういう選曲でも聴いてみたかった 笑)

 

 

演奏曲目


1948年(昭和23年) 
第1回 【女声】
山のかなた
平井 保喜(康三郎)作詞曲

1963年(昭和38年) 
第16回 合唱曲集No.16【男声/高校・職場用】
夜明け
伊藤 整 作詞/髙田 三郎 作曲

1973年(昭和48年) 
第26回 合唱名曲シリーズNo.2【混声】
O magnum mysterium 永遠の奇蹟
Tomás L. de Victoria/皆川 達夫 訳詞・編

1996年(平成8年) 
第49回 合唱名曲シリーズNo25【混声】
春愁三首(公募入選作)
大伴家持詩/信長貴富曲

2005年(平成17年) 
第58回 合唱名曲シリーズNo.34【混声】
Letztes Glück (”Fünf Gesänge”より)
Max Kalbeck 詩/Johannes Brahms 曲

 

 
ピアノは浅井道子先生。
そして司会は清水敬一先生ということですから
軽妙な司会で課題曲の歴史を演奏で知ることになりそう。
個人的には「日本語のビクトリア」が気になります!



さて、この樹の会さんの演奏ということで
中心団員のおひとり、
雨宮昌子さんからメッセージをいただきました。

 

 

合唱連盟さまからお話をいただき、
みなさまの素晴らしい舞台に
ご一緒させていただくことになりました、
合唱団樹の会の雨宮昌子と申します。

私たちは、指揮者 藤井宏樹を音楽監督とする
12の合唱団の集合体である
《樹の会》のメンバーで構成されています。

15年ほど前まで、コンクールに毎年出場させていただき、
たくさんのことを学ばせていただきました。
今回はさまざまな形態、
時代から選ばれた曲を演奏いたします。

 

歌詞を語ること、音をつむぐこと、
全てを演奏に昇華していきたい。
ずっとたどり着けない
音楽のかみさまがいる場所に向かっていける、
たった一つの方法だと思っています。

どうか、一歩でも近づいていくことができますように。

 

 


雨宮さん、ありがとうございました。
高い志を持った樹の会さんの演奏、
とても楽しみですね。


そして「樹の会」を構成される団体のひとつ、
「合唱団ゆうか」さんが
全国大会の3日前に演奏会を開きます!





合唱団ゆうか演奏会 

日本の混声合唱 珠玉の名作展


2017年11月22日(水)
19:30開演


於:大和田さくらホール
http://www.shibu-cul.jp/sakurahall

 

一般:2,500円 学生:1,500円 高校生以下:500円
(全席自由)

チケットは雨宮昌子さんのFacebookまでお願いいたしします。
https://www.facebook.com/masako.amemiya


合唱団ゆうかHP
http://yuukachoir.web.fc2.com/


<演奏曲>


混声合唱組曲『愛のプロローグ』 
谷川俊太郎 作詩/髙嶋みどり 作曲

混声合唱組曲『ひたすらな道』 
高野喜久雄 作詩/ 髙田三郎作曲

混声合唱組曲『光る砂漠』 
矢澤宰 作詩/萩原英彦 作曲


指揮  藤井宏樹
ピアノ 安次嶺景子、岩本果子


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「愛のプロローグ」「ひたすらな道」「光る砂漠」…
くーっ! オールド合唱ファンにはよだれが垂れそうな選曲!
水曜日に休みが取れるなら是非聞きたかった!

「光る砂漠」には
今年の女声課題曲F3「再会」が含まれていますから
今回の「70回記念特別コンサート」のアンコールに
ぜひ演奏していただけませんかね?(笑)

聴きに行けるみなさまはぜひどうぞ!!

         

 

   

 

(明日に続きます)