観客賞座談会・大学ユースの部 最終回

 

 

 

 

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第5位に入らなかったものの、印象的な演奏をされた団体の感想を出演順に記していく連載、大学ユース部門の最終回です。

 

 

 



関西学院グリークラブ


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(男声72名)


 

 

文 課題曲M2、
  始まりのトップテナーが美声で!

B そうそう!
 実声とファルセットが自由自在。
 さらにその中間の声も凄く良かった。

A 第一声で「関学だ!」ってわかる(笑)。

B あ~、「よっ、関学!」(笑)。

 そんな「たまやー!」みたいな(笑)。
  音楽的にも繰り返しに
  アクセントの強弱などを変えていて
  上手いな~と思いましたね。

  自由曲Albert Duhaupas作曲
  「MESSE SOLENNELLE」より「Gloria」は?

A 熱かった!

B でしたね!
 関学って伝統の良さを
 もちろん感じられるんだけど
 今回の演奏はそれに加えて
 新しさがあった。

 中間部でセカンド、バリトンが
  切り込んで入ってくるところね。
  あそこで前からの流れを感じ、
  体を揺らし、音楽を感じて歌っている!

C そうそう、「お!」と思ったな。
 リズムとノリの良さ。
 ああいう音楽への積極性を
 前面に出す関学って
 今まで記憶に無かったので
 いいな~と思いましたよ。

B トリオもがんばってたよね。
 終わったあと拍手しそうになった(笑)。

C 全体の流れも良かったです。
 コンクールというより
 演奏会の1ステージな印象。

A この全日本合唱コンクール第1回でも
 関学はデュオウパを歌って
 優勝したんだよね。

 そうなんですよ。
  この曲を演奏する意味、
  良い意味でのプライドみたいなものも
  感じられて、良かったです。



メール、ツイッターの感想です。

 

関学グリーの弱音の美しさ

 

パワーに頼らない演奏○
デュオウパの力みの無い演奏○
テナー○

 





大学ユース部門、最後の団体です。

 

 

 



同志社グリークラブ

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(男声43名)

 

 


 私、投票しました!

A あー、自分も好きだった!

文 課題曲M2、良い響きでした。
  フレーズもなめらかで。
  ……気合、入ってましたよね?

ABC (笑)。

 最初の一音からすっごい気合が入っていて。

B やっぱり2年ぶりの全国出場とか
 地元・京都での開催ということから
 気合が入ったんじゃないかな。

C トップテナーに哀感があって。
 演奏にも繊細な配慮と工夫があって
 とても良かった。

A 言葉が良かったですね。
 きっと勉強したんだろうなぁと。
 伊東恵司さんって
 男声合唱にも造詣が深いから、
 男声と馴染みがあるフィンランド語にも
 それが表れているのかなって。

文 自由曲の松本望作曲
  男声合唱とピアノのための組曲
  「回風歌」から終曲「3」は?

A これも熱かったねー、本当にもう!

 気合が違いましたね。
  テキストは木島始氏の
  「困難に立ち向かう決意」のような
  内容なんですけど。
  それが熱さと非常にハマっていて、
  凄い歌になって少し泣いちゃいました。

C 「彼らの風に……」のところとか
  じーんとしちゃいましたね。

B 日本語がちゃんと聞こえてきて。
 さらに後半へ進むにつれて
 しっかりと感情がこもり高まって!

 以前から知っていた曲なんだけど
  「こんなに良い曲だったのか!」と
  驚きました。
  各箇所のそれぞれ違った表現も
  良く練られていて。

A トップテナーが高音域で
 破綻がないと言えば嘘になるんだけど…。
 でもそんなの関係ない!
 本当に求心力がある演奏でした。

 コンクールじゃなく
  完全に観客賞視点なんですけど、
  大きな想いがまずあるなら
  少しはみ出したり、
  やや乱れた表現に伝わる部分が
  あるのかなぁ、とも思ったり。

A そこが人間らしいというか……。
 伊東さんほどの立場の方だったら
 それを止めても良いと思うんだけど、
 あえてやらせるのが伊東さんらしさ?(笑)

B 「できなくても良いからやってみろや!」

C 「おまえらここでハジケんと
   男じゃない!!」

 ……勝手にセリフ捏造してますが(笑)。

A いや、自分は直接お会いしたことないんだけど
 お会いして話したことある方いわく
 「めっちゃ熱いよ、あの人!」

BC文 いいなー!(笑)

 



メール、ツイッターの感想です。

  

 同グリの回風歌カッコよすぎた

  

推しが尊い
「あの」ホールの鳴らし方をわかってて、なおかつ1番歌い手側の自我を感じた

 

同志社グリーは一人ひとりの声が良い!
高い所までよく飛んでくる力強い声で、自由曲との相性も抜群でした。
課題曲もすごく好きな演奏でした。
統率を取るというよりも個々が音楽の流れやリズムを感じ取って自発的に歌っているような印象で、それが結果として自然なハーモニーの動きを生み出していたように思います。

 

 





<大学ユース部門全体の感想から>

 


 今回は大学合唱団しか出場していなく、
  ユース団体はなかったですね。

B ユースの台頭で
 自分たちの活動を見直した大学が
 あったのかも。

A 福島大も自由曲は
 ずっと海外作品で出場してきたけど、
 今回は邦人の日本語作品だったでしょう。
 若い彼らに共感できるような作品だったのも
 良い方向へ行ったのかな。

 先月の岡山での中学校全国大会を聴いて。
  確かに日本語作品の「共感は力」に
  納得する部分はあるなぁと思って。
  ……でも、だからと言って
  海外作品を演奏しないのも
  聴き手としては非常につまらない(笑)。

C 勝手な注文だ!(笑)

 いやまあそうなんだけど(笑)。
  中学校でも海外作品を演奏して、
  ちゃんと共感を持って演奏している団体と
  そうじゃない団体があって。
  練習を見ていないから想像なんだけど、
  作品について深く調べ、細かく分析して、
  歌い手に伝える指導者の力なのかな?

A 今なら作品について調べようと思ったら
 本だけじゃなく、ネットもあるし、
 多くの音源も聴ける時代になっているから。
 どれだけそういうものに触れられるか?
 「これ、知りたい!」から始めて、
 調べようとする人には良い時代だし、
 その辺りの差かもしれないね。

B 大学でも自由曲に海外作品を演奏した
 関学、都留文、グランツェ、クライネス、
 それぞれ共感を持って
 演奏してたと思いますけど。

 そうだよね、クライネスの
  ペンデレツキ作品なんて
  「ポーランド・レクイエム」の1曲だから
  ポーランドの歴史を調べたら
  曲の持つ意味がわかるはず。

A その作曲家だけを調べるんじゃなく、
 作曲家の時代と地域になにがあったか。
 作品が生まれた背景を紐解いていくのも
 重要だと思うな。

 手元に無いのでうろ覚えなんだけど…。
  かなり前のハーモニー誌で
  故・畑中良輔先生が
  慶應ワグネルでシューマンを練習した時の話。
  歌も発音も根を詰めて練習したけど
  どうにもシューマンらしい音が出ない。
  そこで練習を止めて畑中先生が
  シューマンについて、クララとの恋や
  ライン川への自殺未遂などを語った後、
  じゃあ歌ってみようかと再開したら
  見違えるほど音が変わっていた!と。

A そういうことってあるよね。
 「のだめカンタービレ」でのだめの
 「シューベルトは気難しい人みたいで
  がんばって話しかけても
  なかなか仲良くなれません」
 という言葉に千秋が
 「シューベルトは本当に気難しい人なのか?
  自分の話ばかりしていないで、
  相手の話もちゃんと聴け!
  楽譜と正面から向き合えよ」ってね。
 そこからのだめの演奏が変わっていく。

C 楽曲の背景もそうだし、
 その作曲家の合唱作品以外にも
 触れる必要が・・・。

 そうそう!
  岡崎混声で対応してもらった方が
  三善先生のピアノ協奏曲に触れていたりね。
  他形態の作品を経てから
  合唱作品を聴くと、
  新しい発見が生まれる気がするなぁ。

A 作品に向き合う方法として、
 いろんな方法があるということだよね。

 グランツェ団長の髙田さんが良いことを
  書いてくれて。

 

  「歌う」という言葉は
  「訴う」を語源としているという話は
  よく言われております。
  私たちが過去の人々の
  思想や感情に想像力を巡らせ、
  私たちなりの解釈で
  聴いてくださる皆さんに訴えかけること。
  それが私たちが歌う上での義務であり、
  この曲を表現する上での
  責務であると心得ております。

 

  この
 「過去の人々の
  思想や感情に想像力を巡らせ」
  まず大切な最初の一歩だと思うな。

B 向き合う・・・。
 詩、テキストから入っていくのも良いし、
 別の音楽から入っていくのも良いし、
 地域、歴史から入っていくのも良いし。
 ひとつの作品から生まれる広がりは
 凄く幅広いから、
 大学生は自分から調べに行って、
 演奏に活かして欲しいですね。



(室内合唱部門の感想に続きます)