観客賞スポットライト 大学ユース部門 その3




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岡山後楽園 ©岡山県観光連盟




今回も大学合唱団2団体をご紹介します。
後半、最初の団体は初出場のこの団体です!




5.長野県・中部支部代表

 

信州大学グリークラブ

https://twitter.com/shin_gleeclub

(男声34名・初出場

 


初出場おめでとうございます!
長野という地でも、意欲的に委嘱初演や客演指揮者をお招きしている信州大学グリークラブさん。
地方出身、地方在住の自分には以前から注目の団体でした。

団員の横尾さんからメッセージをいただいています。

 


・先ずは全国初出場への思いを…。

3年前の中部コンクールで信長先生の「Fragments」を演奏し、金賞2位で全国を逃しました。
1位の混声合唱団名古屋大学コール・グランツェさんには1が並んでいた一方で、僕らは3やら4やらがついてのギリギリの2位。
僕も含め、当時1年生だった今の4年生は、自分たちの非力さを強く感じました。
この体験がなかったら今年の全国大会出場はなかったと思います(次の年のDe Profundisもなかなかに絶望させていただきました)。
銀賞止まりだった当団がここまで成長できたのは、同じ地区にお互いを刺激し讃えあえるライバルたちがいてくれたおかげだと思っています。

 

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グランツェさんは強敵、と書いて【とも】と読む、そんな感じでしょうか。
続いて、信州大学グリークラブさんの演奏曲は
課題曲M2「Preghiera」(Giuseppe Torre 詩、Gioachino Rossini 作曲)
自由曲:男声合唱とピアノのための「三つの時刻」(丸山薫 詩、三善晃 作曲)

三善先生の初めての男声合唱曲。
3曲目の「松よ」は5年前の課題曲にも選ばれました。

それほど長くない3曲なのですが、詩、音楽、ともに鋭く繊細な感性が、作曲から60年近く経った今でも強い印象を残します。 

 

 

・選曲に関して…。

当団では、中部コンクールが終わるとすぐ次の年の選曲会が始まります。
課題曲と自由曲で一体化した一つのステージとなることを大切にしていますので、課題曲と自由曲をいろいろと組み合わせて選曲しています。
もともと課題曲「Preghiera」は昨年、自由曲「ヒロシマにかける虹」と「祈り」というテーマで共通するという理由で選曲されました(他の候補はアッシジ全曲とか…)。
今年も同じ課題曲にしたのは、コロナ禍に突入する前にかなり練習していた積み重ねがあったことと、去年のコンクールに参加できずに卒業していった先輩たちが、もしかしたらオンステしてくれるかも…という考えからです。
自由曲の「三つの時刻」に関しては、「Preghiera」で大切にされている「何か」への思いが、一曲目「薔薇よ」にも共通しているように思えたため。
組曲全体に吹き渡る風のような雰囲気が、信州で歌う僕らにぴったりと感じたため(信大グリーの歌声は「信州に吹く爽やかな風」と称されているらしいです。きっと春先の肥料の香りの間違いです)選曲されました。
そして何より、C→Cの繋がりに惚れました。
曲間で音取りしたくないくらいです。

8月末から10/17まで練習ができなかったので、9/19に行った中部コンクール審査用音源の録音はぶっつけ本番で、正直ビビってました。
しかし運も実力のうちといいますか。
本番のホールで練習をしたいと1年前から予約していたキッセイ文化ホールで録音することができ、最高の環境で勝負することができました。
ホールに染み付いた様々な素晴らしい音楽達が味方してくれたのかもしれません。

最高の舞台で、最高の結果を残すために、気合入ってます。
岡山の地酒も楽しみです。

 

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信州大学グリークラブさんは立て看も有名!

 


横尾さん、ありがとうございました。
審査用音源の録音をされたというキッセイ文化ホールは、長野県松本文化会館がネーミングライツで変更になったとか。
書かれるように「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」などでホールに染みついた音楽が、信大グリーさんを後押ししたのかもしれませんね。

1年の空白を経て、一度は離れた仲間たちが、同じ課題曲を仲立ちとして集まってくる……。
そんな空想をしてしまいました。

 


>岡山の地酒も楽しみです。

 

個人的には「竹林」が好きです(笑)。
念願の全国大会・岡山の地で、仲間たちと良いお酒が飲めることを願っています!








11:27から23分の休憩後、ちょっとだけお久しぶりだった大学合唱団の出場です。






6.高知県・四国支部代表

高知大学合唱団

https://twitter.com/kochi31uc

(混声24名・5年ぶりの出場・第65回大会から4回目の出場)



5年前の鳥取全国大会では、パミントゥアン「De profundis」、ウカシェフスキ「Beatus vir,Sanctus Antonius」を選曲されていて。

 


学生指揮者が選んだのだったらセンス良い選曲!

伸びやかな若々しいソプラノ、彼女たちの声を聴いているだけで幸せでした。

南の声が良かった!

……という感想がありました。
団員さんからメッセージをいただいています。

 

 


こんにちは!高知大学合唱団です!
去年に引き続き、このコロナ禍で私達合唱団も思うように活動ができないことが多々ありました。
四国大会では感染状況の悪化により録音審査となり、自分達の演奏を見えない審査員・観客に届ける気持ちで臨みました。
そして、今回、全国大会の舞台で歌えることを嬉しく思います。

 

高知大学合唱団さんも録音審査だったんですね。
見えない観客から、実際に多くの観客を前にして演奏できる喜びはひとしおでしょう。

高知大学合唱団さんの演奏曲は
課題曲G3:「うたをうたうのはわすれても」(岸田衿子 詩、津田 元 作曲)
自由曲:無伴奏混声合唱のための「うたおり」より「5.戦場」(みなづきみのり 詩、松下耕 作曲)
無伴奏混声合唱のために「廃墟から」より「第三章 葬送のウムイ」(信長貴富 作曲)

作曲家は違えど、「戦争」に関連した2曲。
どういう思いで選曲をされたのでしょう?

 


今年度は課題曲にG3「うたをうたうのはわすれても」自由曲に「うたおり」より「戦場」と、「廃墟から」より「葬送のウムイ」を演奏させて頂きます。

自由曲では2つの曲が1つのテーマとなるように選曲しました。
曲調は違えど「死」という儚く繊細なイメージを織り交ぜて、高知大学らしい演奏をお届けしたいと思います。

「戦場」では戦争をテーマとしているので、戦争を経験していない私たちにとっては表現など難しいところもありましたが、そんな私達だからこそ、次の世代へと歌で繋いでいきたいと思いました。

「葬送のウムイ」の”ウムイ”という言葉は沖縄の方言で”想い”という意味です。
供養歌として、戦争を経験したであろう100歳のお年寄りをあの世へ送り出す曲です。
その思いを胸に演奏したいと思います。

全国大会の舞台で皆さまに演奏を聴いて頂けることを嬉しく思い、これまでの練習を十二分に発揮できるように頑張ります。
よろしくお願い致します。

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団員さん、ありがとうございました。

「戦場」のストップモーションで止められたような死の残酷さと、余韻。
「葬送のウムイ」の神事での伝承歌、沖縄の言葉と旋法を信長先生が昇華させた音楽の神秘性。

高知大さんは学生指揮者だと思うんですが、一昨年に四国代表だった愛媛大学さんも学生指揮者で。
当時、愛媛大さんが選んだ作品が、同じく信長先生の戦争を題材にした「夏のえぐり」。
高知大さんと同じ学生指揮者、「自分たちが選んだ」作品、深い共感を持っての演奏に、若い人の大きな可能性を感じました。

一昨年の混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ団長:髙田さんの言葉。


  「歌う」という言葉は
  「訴う」を語源としているという話は
  よく言われております。
  私たちが過去の人々の
  思想や感情に想像力を巡らせ、
  私たちなりの解釈で
  聴いてくださる皆さんに訴えかけること。
  それが私たちが歌う上での義務であり、
  この曲を表現する上での
  責務であると心得ております。

 

 

経験していないこと、それゆえに「思想や感情に想像力を巡らせ、私たちなりの解釈で聴いてくださる皆さんに訴えかけること」。
高知大さんのメッセージに繋がることだと思います。


「次の世代へと歌で繋いでいきたいと思いました。」

高知大さんの歌を聴いたみなさんが、どうか次代へ繋いでいけますように。



(明日に続きます)