観客賞スポットライト 大学ユースの部 その5

 

 

伊勢奥津(名松線)のススキ
提供:三重フォトギャラリー

 

 

<演奏中の体調不良について>

2018年の札幌全国大会で、演奏中、ある団体で一人の団員さんが貧血を起こしたようにふらつき。
隣の団員さんが腕をつかんで支え、その方を座らせ、一緒に座って寄り添い、歌い続けられたことがありました。
そんな団員さんたちの気づかいのため、演奏は止まることなく終わることができました。


↓ 詳細は2018年の当ブログ記事を読んでいただくことにして。

 

久しぶりの本番と、極度の緊張という全国大会の場。
演奏中の体調不良は、どなたにも起こり得ることかもしれません。
今一度、対応策を記しておくことにしました。

札幌の合唱団Le camaradeさんも、非常に役立つ、このようなツイートをされております。

 

「演奏中、気分が悪くなったらその場に座る」
「回復したと思っても立ち上がらない」
「気分が悪くなった団員を見かけたら、意識の確認をして、対処を決める」


繰り返しますが、演奏中に気分が悪くなる可能性はどなたにもあること。
ですから決してその方を責めるのではなく、これを機会に、ステージに立たれる全員共通の知識として、周知徹底すべき事柄なのではと考えます。

聴かれるみなさん、出場されるみなさんがお互いに気遣う、良い全国大会にしたいですね。

 

 

大学ユース部門、最後の2団体です。

 

 

 


9.愛媛県・四国支部代表

愛媛大学合唱団

https://twitter.com/ehime_chorus

(混声39名・3年ぶりの出場・第30回大会からでは31回の出場)


毎年、学生指揮者で出場される愛媛大さん。
今大会で学生指揮者は愛媛大さんだけなので応援したいですね。
3年前は課題曲にG2のシベリウス、自由曲に信長貴富「夏のえぐり」(混声合唱組曲「ねがいごと」より)を演奏され。

 

学生指揮者といっしょに曲と音楽に向かい合い
共感持って歌っていたのが凄く伝わった!


学指揮でここまでできるのがすごい。
語感が美しい。
和声もガッチリハマってる


非常に素晴らしかった。
ハーモニーは重厚だし、
詩の世界観をダイナミックに表現されていてとても良かった。

 

……と好評でした。
今年の演奏曲は?
正指揮者の山中美里佳さんからメッセージをいただきました。

 

こんにちは、愛媛大学合唱団です。
この度はこのようなメッセージを掲載して頂く機会を頂け、大変うれしく思っております。
 
今年は課題曲としてG2「Es ist verrathen」を選曲致しました。
この曲は、Robert Schumann作曲の、「もうバレてるよ」という訳題のつくドイツ語のユニークな作品です。その特徴はなんといっても、もとが4重奏である動きのある4声と、歌とは独立して動くピアノが要所で醸しだすからかいの雰囲気。多くの団員がドイツ語に馴染みがなく、発音を1つ1つ確認するところから取り組んできたこの曲ですが、コンクールでは観客の皆さんを「もうバレてるよ」とドキッとさせられる演奏をお届けしたいと思います!
自由曲の「浦島太郎」は、千原英喜作曲の御伽草子を題材にした曲です。誰もが幼少期に1度は読んだであろう「浦島太郎」のストーリーを語り・浦島・乙姫の3視点から描き出します。曲の特徴は、紙芝居のようにパッと切り替わる場面転換と女声、男声がそれぞれ歌い分ける別れのシーンの乙姫・浦島の和歌。二度と会えないことが分かっている乙姫と再会を約束する浦島の対比にもご注目下さい。演奏を通じて「浦島太郎」の物語の世界へお連れしたいと思います!
一見何のつながりもないようなこの2曲ですが、共通点は「演じる」ということです。
それぞれの曲の世界観を大切にしながら観客の皆さんに届けたいと思います。
 
3年ぶりとなる全国大会のステージ。他大学さん同様、コロナウイルスの影響は少なくなく、団員の減少により、一時は活動だけでなく存続自体も危ぶまれましたが、今年は十数名の新たな仲間を迎え歌い継ぐことができています。全国大会という大きなステージで多くの方に聞いて頂ける喜びを噛みしめつつ、観客の皆さんを曲の世界へ引き込めるような演奏ができるよう精一杯歌わせて頂きます。

四国支部大会の演奏後に撮影されたものということ。

 

山中さん、ありがとうございました。
前回もそうでしたが、学生指揮者さんが課題曲にG2を選ばれることが素晴らしいですね!
しかも「もとが4重奏である動きのある4声と、歌とは独立して動くピアノが要所で醸しだすからかいの雰囲気」と的確に音楽を掴まれている。
自由曲は千原英喜先生と、これで関学さん、Raw-Oreさん、そしてこの愛媛大さんの3団体が演奏される人気の作曲家。
千原英喜「お伽草子 混声合唱のための3つのエチュード」は兵庫県立長田高等学校音楽部さんの委嘱作品。
「エチュード」という言葉は音楽だけでは無く、演劇的な「即興劇」を示唆しているのかも?
「2.小町草子より歌よみのこころ」「3.一寸法師」と続く全3曲の1曲目が愛媛大さんが演奏される「1.浦島太郎」です。

愛媛大さん、四国支部大会の配信を聴かせていただいたのですが、高い集中力と良い意味での緊張感に、演奏へ懸けるものの大きさを強く感じました。
表現もきめ細やかで「浦島太郎」のドラマ性を見事に表わしていたと思います。
「それぞれの曲の世界観を大切にしながら観客の皆さんに届けたい」という山中さんの言葉。
学生指揮者さんと歌い手さんが一体になって繰り広げるであろう、愛媛大さんの「演じる」ステージが最高のものになることを強く願っています。

 

 

 


大学ユース部門最後の団体は全国大会常連のこちらの団体です。

 

 

 

10.福岡県・九州支部代表

九大混声合唱団

https://twitter.com/Qkon_chorus

(混声75名・6大会連続出場・第40回大会から20回目の出場)


昨年は自由曲に信長貴富「こいうた」「恋唄・空」を演奏され。

 

声が明るく、さすが九州の団体!
特にソプラノが伸びやか


恋愛の曲へ深く共感している大学生ならではの演奏。
「若者にしか歌えない歌」の魅力がありました。


ハーモニーがバランス良く纏まっていたし、
自由曲こいうたは安定した歌声の中に
若く瑞々しい恋心が表現されていて素晴らしかった。

 

……と好評でした。
今年の演奏曲は?
団員さんからメッセージをいただきました。

 

こんにちは、九大混声合唱団です!

近年は新型コロナウイルスの感染対策により、対面練習の中止をはじめ、少人数・マスク装着での合唱など、活動にも影響が出ていましたが、今年は3年ぶりに対面で行われた九州大会に出場し、全国大会の出場権をいただくことができました。
これは、音楽顧問の竹田享司先生や、いつも九混の練習を引っ張ってくれる学生指揮者やパートリーダー、そして、対面練習が行えない中でもオンラインを用いて継続的に活動を続けてくれた団員たちの努力のおかげだと思っております。

今年度は、コンクール課題曲としてG4「智慧の湖」(高橋元吉作詩 根岸宏輔作曲)、そして自由曲としては ”混声合唱とピアノのための「遠きものへー」” から「Vocalise II/海辺にて」(長田弘作詩 三宅悠太作曲)を演奏させていただきます。

課題曲に関しましては、威厳にみちた智慧の湖の輝かしさや壮大さの表現を大きなダイナミクスや言葉の処理を大切にしながら挑戦してきました。課題曲G4は公募作品の新曲のため、参考音源が無い中で練習を進めていく必要があるので曲の世界観を作るのに難航しましたが、音楽顧問の竹田先生と一緒に九混の音楽を作ってきました。

自由曲に関しましては、コロナ感染拡大により大会が開催できなかった2019年に演奏する予定だった曲でもあります。先輩方の想いを胸に、今いるメンバーならではの音楽を追求してきました。ここでは、海のような音の広がり、海になぞらえた「ことば」の果てしなさなどを、壮大にかつ繊細に表現できるよう練習してきました。そしてこの曲の最後の「人は悲しみを重荷にしてはいけない」という言葉に対して様々な考察を試みてきました。その結果を全国大会の舞台で披露し、聴いてくださる方々に感動していただけるよう努力してまいります。
当日、会場ではお客様方には私たちの「九混サウンド」を楽しんでいただければと思います。

 


ありがとうございました。
「自由曲に関しましては、コロナ感染拡大により大会が開催できなかった2019年に演奏する予定だった曲でもあります」
おぉ、名古屋大さんも昨年度の自由曲をリベンジとして選曲されることから、このコロナ禍がどれほど痛く、そして乗り越えなければいけないものと思われているか、再度の選曲から伝わるようです。
課題曲も名古屋大さんと同じG4「智慧の湖」と、音楽の違いを楽しめることでしょう。
三宅悠太先生の「Vocalise II/海辺にて」は新鮮な響き、「言葉を持たないものたちが語る言葉」を捉えたドラマティックな音楽が強い印象を残します。

「人は悲しみを重荷にしてはいけない」
アーカイブですが平成二十六年三月九日、NHK教育テレビの「こころの時代」を記したページで長田弘さんの詩「海辺にて」について本人が語られています。
「風景を生きる」

「人は悲しむことのできる生物であるが、それ以上に、悲しみを受け止めること、耐えることのできる存在でもある」
九大のみなさんが様々に考察を試みてきた結果の、津のステージ。
今なお悲しみに沈んでいる人たちの手を取る、是非そんな「海辺にて」を演奏していただきたいと思います。

 

 

 

最後に宣伝なのですが、12月18日(日)に、第59回九大混声合唱団定期演奏会を行う予定です。ライブ配信も行いますので、普段県外にお住みで聞きに来ることができない方々も視聴することができます。是非、お聴きいただければ幸いです!

 

コンクールステージにクリスマス曲、そして人気の藤嶋美穂先生「あさきよめ」と充実の演奏会ですね。
お近くの方は九州大学伊都キャンパス 椎木講堂へ。
遠方の方はライブ配信を是非!

 

 

(次回から室内合唱部門の出場団体をご紹介します)