
- 作者: 泉流星
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/29
- メディア: 単行本
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副題が「高機能自閉症」との不思議な結婚生活、
ということから分かるように
大学で言語学を修了したほどの知能を持つ女性が
結婚し、周囲への違和感や夫との不和を契機に30歳を過ぎて
医師から
「知性は高いが社会性、
コミュニケーション能力などに問題がある
“高機能広汎性発達障害”(自閉症スペクトラム障害)」
と診断され、その後の結婚生活は・・・?という内容。
「エイリアン」という題名からオリヴァー・サックスの名著
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)での
自閉症の動物学者:テンプル・グランディンさんも思い出す。
とにかく知性が高くても、決まった習慣や行動への強いこだわりや
言葉の多義的さや人間の表情を理解しにくく、
結果社会性やコミュニケーション能力に欠けるために
人と社会とうまく付き合うことが出来ない。
いわゆる究極の「空気が読めない」人である。
この本の面白いところは
「僕の妻は」と題名に書かれているけれど
著者は夫ではなく、
自閉症スペクトラム障害の妻本人。
夫の立場を借りて文章を書き、
それを「地球人」である夫が添削し、仕上げるという形になっている。
だから「自閉症スペクトラム障害」の奇妙さが充分に伝わりながらも
自閉症当人の内面もまた、
深く読み手に伝わってくるというものになっているのだ。
(以前紹介した「ぼくには数学が風景に見える」ぐらい
ぶっとんだ内容じゃないと、単なる「自分語り」では
なかなかその奇妙さが伝わりにくいのは確か)
後半は自分の障害を意識しながら
長所である興味あることへの強いこだわりや
情報収集の幅広さや深さで翻訳の仕事を取れるようになり
夫との関係も好転していく。
(もちろん上手く行かない事は多いようだが)
自身の特性を長所、短所を含めてしっかり見据え、
好奇心と前向きな姿勢を失わない著者の人格が
この本の読後感をとても良いものにしてくれている。
いわゆる「発達障害」は小学校の普通学級でも6%はいるそうだ。
私も、学力は普通以上なのに
行動がエイリアンのような同級生を何人か思い出した。
彼らは周囲から理解されず、気味悪がれていたが
「こういう人間なんだ、こういう病気なんだ」と
もし当時に知っていたら、回りの対応ももう少し違っていたろうな、と思う。
そんな後悔と、そしてこれから出会う人のために
読んでおくべき1冊かもしれない。