観客賞バックステージ 混声合唱の部 その1

 

 

 

昨日までは同声合唱部門へ出場の団体をご紹介していました。

今回から混声合唱部門の出場団体をご紹介します。
同声合唱部門が終了した12:46から13:50まで昼食休憩の後、混声合唱部門の始まりです。

全日本合唱コンクール全国大会、やはり大会の華と言えば混声合唱部門。
全14団体、昨年に続き初出場団体が無いことがこの部門の熾烈さを語っているような……。

 

今年の全国大会は新潟県新潟市!
ちなみに新潟県新潟市での全国大会、大学職場一般の部は2005年(平成17年)以来、18年振り。

 

会場は25周年を迎えた新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」。

最初の団体は、前回は大学ユース部門で出場だったこちらの団体です!

1.千葉県・関東支部代表
Coro Ponte

https://twitter.com/coroponte

(混声29名・5年ぶりの出場・第71回大会以来2回目の出場)


Coro Ponteさんは2013年創団、千葉県立船橋高等学校のOBOG合唱団。
「団名を訳すると『合唱団 橋』となり、この名前にはルーツである『船”橋”』と『卒業生と現役とを繋ぐ”架け橋”』という2つの意味がかかっています」ということ。

5年前Coro Ponteさんこと「ころぽん」さんは課題曲G4、自由曲にウィテカー特有の和音を精緻に奏でるピアニッシモ「Sleep」の後、アタッカで衝撃のラター「A Choral Fanfare」!
プログラミングの妙だけではなく、140人を越えていた前団体にも聴き劣りしない発声、それぞれの作品の個性を丁寧に演奏し、初出場にて観客賞第1位の支持を得ました。

 

ころぽんさんの今回の演奏曲は
●課題曲
G2 Les fleurs et les arbres(「Deux choeurs」から) Camille Saint-Saëns 詩曲

●自由曲
混声合唱とピアノのための組曲「粒子空間」より
「Ⅲ.無言頌」
作曲:根岸宏輔

課題曲サンサーンスに指揮者:吉田宏先生のセンスが伺えるような。
そして自由曲は昨年の課題曲「智慧の湖」の作曲家:根岸宏輔先生!
なんと今回の演奏曲含む組曲「粒子空間」はころぽんさんの委嘱作品とか。
自分たちの惚れ込んだ作品が5年ぶりの全国大会へ導き、多くの人へ知られる、素晴らしいですね。

テキスト「無言頌」香山雅代氏の詩を読むと、鳩の鳴き声、小さな足跡から煌めく星と惑星や月、自分と水の神、神代と現在、そして未来へと果てしないスケールの世界へ飛翔するイメージに魅了されます。

「智慧の湖」の鮮やかな音世界を思い出すに、今回「無言頌」で根岸先生がどんな作品を書かれたのか。
そして時を経て、ユース団体から一般団体へ成長されたころぽんさんがどんな演奏されるのか、とても楽しみです。

 


続いては言葉に凄くこだわりがある団体が!


2.福岡県・九州支部代表
混声合唱団うたうたい

https://utautai09.wixsite.com/utautai-choir

https://twitter.com/utautai_choir

(混声48名・第66回大会以来10大会連続出場)

うたうたいさん、昨年は理想の音色、雰囲気だったと賞賛された課題曲G1に、自由曲の三善晃「戦いの日日」「かどで」は言葉の意味、感情が伝わる大人の説得力がある演奏でした。

今回の演奏は
●課題曲
G1 Wenn mein Stündlein vorhanden ist(「Psalmen und Christliche Gesäng」から) Hans Leo Hassler 曲

●自由曲
無伴奏混声合唱のための「After...」より
「Ⅱ.絶望」
「Ⅳ.そのあと」
作曲:信長貴富

昨年に続き課題曲はG1!
不遜な言葉ですが、このところ急成長のうたうたいさん。
指揮者の高嶋昌二先生の、合唱の王道を進もうという意志が、このG1からも伝わってきます。

自由曲「無伴奏混声合唱のための「After..」は東日本大震災の後に発表された、谷川俊太郎氏の詩へ作曲された2016年の作品。
現実を見据えた意味での「絶望」「そのあと」。
続けて聴いてみると、凄惨な現実に直面した群衆の叫びがこだまし世界中に広がり、希望を見出そうとするかすかな声がひとつの大きな歌になっていく、そんな印象を受けます。
震災に対し芸術家として、人間として真正面から対峙する作曲家:信長先生の音楽、音響表現が伝わる優れた作品です。

昨年、同声合唱部門へ出場されたメンズ・ウィードさん。
プロフィールには指揮者:高嶋先生が書かれた文がありました。
【シェーンベルクと高嶋先生の言葉】

今回のうたうたいさん自由曲の選曲も、「歌、そして合唱が世界を変えられるか?」を聴衆へ投げかけるものと思っています。
強い願いが、私たちの希望への出発点になりますように。

 

続いて同じ九州から少しお久しぶりのあの団体が!

3.佐賀県・九州支部代表
MODOKI

https://www3.hp-ez.com/hp/modokiss/

https://twitter.com/MODOKIchorus

(混声46名・4年ぶりの出場・第50回大会以来21回目の出場)

4年前の出場時もうたうたいさんの後の出番だったMODOKIさん。
前回、課題曲G1は4声の存在感が際立ち、「祈り」が深くこめられた印象。
続くシェーンベルク「地上の平和」は何度も歌われる「Friede(平和)」がプリズムのように多彩に響き、熱いドラマを持つ演奏でした。

MODOKIさん、今回の演奏曲は
●課題曲
G2 Les fleurs et les arbres(「Deux choeurs」から) Camille Saint-Saëns 詩曲

●自由曲
Missa in Es (Cantus Missae) Op.109より
「Kyrie」
「Gloria」
作曲:Josef Gabriel Rheinberger

課題曲のサンサーンスは指揮者:山本啓之さんの「この機会を逃したらサンサーンスなんて一生歌えるかわからんからね!」という声が聞こえてきそう。
40人を超える人数でも、MODOKIさんなら軽やかなフランス的エスプリが宿っているかもしれません。
そしてラインベルガー、二重合唱のミサ!
聴くと、パレストリーナやバッハなど、合唱作品の傑作に通じたラインベルガーの、歌への深い愛情が伝わってきます。
「Kyrie」はその旋律と和音にひたるだけで満足してしまいそうですが、やはり更なる高みを目指す山本さんとMODOKIさんの音楽に期待。

8月には最後となった「軽井沢国際合唱フェスティバル」に参加され、さまざまなスタイルの作品へ深く入れ込む演奏が聴く者の心を打ったMODOKIさん。

この新潟全国、室内合唱部門で合唱団「櫻」さん、同声合唱部門でNelken Chorさん、そしてMODOKIさんがラインベルガーを選曲しています。
なかなか珍しい全国大会の「ラインベルガー選手権」、最後をGloria!と見事に飾っていただけるのでしょうか。


(※次回へ続きます)