小説「金木犀とメテオラ」

 

 

安壇美緒「金木犀とメテオラ」を読みました。


北海道の中高一貫女子校、成績優秀な少女2人。
ひとりは東京の裕福な家庭で育ちピアノはコンクール上位入賞、もうひとりは地元出身の誰もが振り返る超美少女。
2人の、友達にも明かせないそれぞれの絶望。
反目し合う2人はクライマックスの校内合唱コンクールで、伴奏者と指揮者を担う。
「世界で一番、暗い場所はどこだか知ってる?」

闇のような舞台袖から、眩しいステージへ上がった2人の得たものは。

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全288ページ、クライマックスの合唱コンクール、そのカタルシスは約10ページ。
うぅ~ん、残りの女性コミュニティゆえのギスギスはかなり辛かったです。


一瞬だけ見えた流星、北海道では自生しない金木犀など、この作品では「奇跡」が重要なテーマになっていて。
おっさんの自分は「滅多に起きないから奇跡って言うんだよ」なんて嘯いてしまうんだけど、この少女たちには奇跡こそが希望。
「人が思うよりもずっと、この世で奇跡は起こるから」
ほんのわずかな、頼りない光。
それに縋り付くように生きていく少女たちが切なく。

合唱コンクールでの演奏曲は小林秀雄「落葉松」。
その詩の美しい解釈がまた、ひとつの奇跡となって対立する2人を救うのですが、それは本文を読んでもらいましょう。





合唱を題材にして話題になった作品はできるだけ触れるようにしているんですけど。
額賀澪「ヒトリコ」

こちらは松下耕先生の「信じる」へ対する心の変化が良かったですね。

 



瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」

「本屋大賞」、そして最近は映画化もされた話題作!良い作品です。



今回の「金木犀とメテオラ」、最近の小説はみな女性作家。
合唱は女性作家にとって扱いやすい題材なのか、それともたまたまなのでしょうか?