観客賞スポットライト 同声合唱部門 最終回






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奥津渓 ©岡山県観光連盟




同声合唱部門の最終回。
今回は3団体をご紹介します。


最初は #全国大会で朝カツ推進運動 で有名(笑)。
出雲からの女声合唱団さんです!



8.島根県・中国支部代表

女声合唱団フィオーリ

https://twitter.com/chor_fiori

(女声20名・2大会連続出場・第45回大会から19回目の出場)


一昨年は自由曲に信長貴富先生へ委嘱された「そうそうと花は燃えよ」を演奏。


課題曲「その木々は緑」フレーズの緩急が絶妙。
大人の女性のチャーミングさ、魅力的なものがこの課題曲に出ていた。

「そうそうと花は燃えよ」大作にふさわしい、本当に力のこもった演奏。

8分ちょっとの演奏時間に壮大な作品世界と強いメッセージが溢れんばかりに表現され、その訴求力に心打たれました。

 

……という感想がありました。
今回の演奏曲は何でしょう?

団員さんからメッセージをいただいています。

 


こんにちは。島根県の女声合唱団フィオーリです。
今年の課題曲は「夜来香」自由曲は西村朗作曲の「永訣の朝」より「I. 永訣の朝」(以下「永訣」と略す)を選曲しました。
まずは選曲由来から。
フィオーリは平成22年の全国大会で「永訣」を一度演奏していますが、一昨年ある団体の「永訣」の名演を聴いた指揮の石橋久和先生と団員に、これはぜひうちの団でもこんな風にやってみたいという思いがあふれてきて、迷わずこの選曲となりました。
今回はピアノに平林知子先生をお迎えしての、新しい「永訣」を目標に取り組みました。
「前回もすごく練習した」(前回出場の団員発言)のですが、改めて作品の奥深さ、音楽描写の巧みさに感動しながら、平林先生の渾身の演奏に底から支えられて、素晴らしい音楽の機会を分かち合えることの喜びを痛感しています。

「夜来香」は、やはりフィオーリ(イタリア語で花の意)のイメージにしっくりくるということで選びました。
いつものアピールで恐縮ですが、10代~60代まで、ほぼ均等に分布する(比較的まれ?)女声合唱団ならではの「大人の表現」を目指して演奏いたします。

さて、コロナ禍をくぐり抜けての大会となりましたが、当団も例外なく、数か月の練習休止時期を経て、やっと少しずつ活動再開しての現在です。
中国大会も無観客の録音審査でしたが、人影のない客席を前に、どこまで表現できるのだろうかと不安を覚えながら、いざピアノの前奏が始まるや否や、なんの迷いもなく、曲の世界に入っていくことができました。
よく目の前の人に訴えるようにと言われますが、本当はその向こうにある自分の理想の音楽を目指して歌っているのかもしれないと気づかされる貴重な瞬間でした。
今回は初めての配信で、さらに全国の皆さまにも聴いていただけることに感謝して、精いっぱい演奏しますので、よろしくお願いいたします。

 

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今年7月の演奏会はフィオーリ結成35周年を記念し、信長先生の生誕50年をお祝いする作品展を久しぶりの有観客ステージで行い、喜びを分かち合いました。
近々音源公開も検討しています。

 


団員さん、ありがとうございました。

ある団体の「永訣」の名演。
いったいどこの演奏なんだ・・・。


それはそうと、10年以上経ち、新しく聴かれた演奏をきっかけに、また高みを目指すというのは良いエピソードですね。
作品は演奏されることで永遠の命を得るとはよく言われるのですが、「過去を繰り返す再演」ではなく、現代に生きる人たちが「いま」の演奏をし続けた結果の命だと思います。

宮沢賢治の妹:とし子が死へ向かう様子を描いたこの名詩に作曲者は「あまり感傷的な音楽になることは避けたいと思った」ということですが、それでも充分涙腺を刺激する作品。
名ピアニスト:平林先生とフィオーリさんによる、渾身の「新しい永訣の朝」に期待です。


さらに・・・

 

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来年は常任指揮者で音楽監督の石橋久和先生の古稀記念として“石橋久和先生やりたい放題”の演奏会を予定しています。

 

 

「やりたい放題」?!
来年のフィオーリさん&石橋先生のご活動も要チェック!ですね。







続いて「語り口のうまさ」に定評がある男声合唱団です。




9.大阪府・関西支部代表

メンズ・ウィード

https://twitter.com/MensWeed

(男声31名・3大会連続出場・第49回大会より6回目の出場)


指揮者は混声合唱部門で「混声合唱団 うたうたい」も振られる高嶋昌二先生。
淀川工科高校グリークラブOBの方々が中心の団体です。

一昨年の感想では


課題曲「物語」は優しい歌い方や語感とか、さすが「言葉の魔術師」!

自由曲「路標のうた」もちゃんと音楽の求める流れがあったのが良かったです。

表現したいことが伝わってくる音楽。
音は表現の手段ということを思い出させてくれる演奏。

 


……という感想がありました。
団員さんからメッセージをいただいています。

 


大阪府立淀川工科高校グリークラブの現役生とそのOB主体の合唱団メンズ・ウィードです。

現役高校生に寄り添いながら活動する合唱団なので、毎年1月に開催するグリークラブの定期演奏会を軸に高校生と共に活動しています。
現役高校生は、6人。
単独でのコンクール出場は出来ないため、今年もメンズ・ウィードとして現役、先生方、OB、そして外部からの仲間を加えてコンクールに出場しました。

大阪は行動制限が厳しく、長かったので、部活への制限も厳しく練習できない日々が続きました。
外部との合同練習も許可されなかったので、我々大人と声を合わせることもできませんでした。

予定されていた演奏機会も軒並み中止されて行く中、合唱連盟がなんとか合唱コンクールを開催できるように準備をしてくださったので、先行きのわからない現状ですが、参加を決めました。

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外部との合同練習も許されなかったんですか。
これは厳しい・・・。

メンズ・ウィードさんの演奏曲は
課題曲M3 Ⅰ(合唱のためのコンポジション 第6番「男声合唱のためのコンポジション」から)(間宮芳生 曲)
自由曲:「ひとりぼっち」(合唱のための6つのソング「ワクワク」より)
男声4部合唱「ワクワク」(信長貴富 曲)

コンクールへの固定観念を持っている人間としては「え?!この曲がコンクール自由曲??」と驚かれるかもしれません。

 


自由曲は、うつむきたくなるような情勢の中、少しでも前を向いて歌えるようにと思い「ワクワク」を。
そして、同じ曲集からピアノ伴奏が素敵な「ひとりぼっち」を選びました。

大会ギリギリまで合同での練習ができず、お互い不安な日々を過ごしました。
一緒に練習できる日を待ち、別々に練習を行っていました。
そして、初めて一緒に練習出来たのが大会6日前、その時の練習の楽しさは忘れられないほどでした。


 歌うたや泣けてくる
 泣けてくりゃ笑っちゃう
 ワクワク ワクワク


「ワクワク」の詞にあるように僕たちが、歌って、泣いて、笑って、ワクワク音楽ができるのは、淀工グリーの高校生達がいるからなんだとあらためて感じることができました。

そんな思いで歌った関西コンクール。
思いもしなかった代表に、幸せいっぱいです。

全国大会は各合唱団のミニコンサートの集まりだと思ってます。
メンズ・ウィードのミニコンサートを楽しんでいただければと思い、心を込めて歌います。
お聞きいただければ幸いです。

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団員さん、ありがとうございました。
「ワクワク」は東日本大震災のあとの「歌おうNIPPONプロジェクト」のために書き下ろされた作品。
2011年東日本大震災後の青森での全国大会、合唱団お江戸コラリアーずさんの記事でも取り上げましたが。

多くの人にとって「当たり前の日常」が奪われた事、
しかしそれはまた続いて行くという事実、
「当たり前」の尊さとしたたかさ…

 

「ごく当たり前の日常」というものを
普通に過ごすことができるのは、
本当はとっても幸福なことであることを
気付かされずにはいられません。


このコロナ禍と東日本大震災後の状況が重なる今、メンズ・ウィードさんの「ワクワク」が、私たちの心にどんな風に響くのか。
本来、演奏とはコンクール用やコンサート用などと分かちがたいはず。
淀川工科高校グリークラブ現役生と、いっしょに歌える喜びがあふれたメンズ・ウィードさんのミニコンサート、とても楽しみです。

 




同声合唱部門、最後の団体は長野市から初出場の女声合唱団です。




10.長野県・中部支部代表

SUONO CONBRIO

https://twitter.com/suonoconbrio

(女声14名・初出場



初出場おめでとうございます!
どのような団体なのでしょうか?
SUONO CONBRIO指揮者:鳥谷越先生よりメッセージをいただいております。

 


2016年、指揮者(長野県高校音楽教員 現在校長)の長野西高校で高校時代に合唱班同期と、教員として母校で関わった合唱班教え子たちと発足。
きっかけは、高校で合唱に関わった子たちが大人になって歌う団が長野市になかったことなど、持続可能な活動ができる女声合唱グループを立ち上げたかったことです。
ここまで地域イベントからコンクール、京都アルティ参加、イタリア演奏と、活動の幅を広げて歌う喜びで人生を謳歌してきました。
コロナ禍でも何とか練習を工夫しながら、今回念願のコンクール全国大会初出場となりました。
妙齢マダムメンバーは長野西高校時代にこの全日本コンクール全国大会を経験しています。
当時は三善晃 オデコのこいつで参加。
指揮者はピアニストでした。
そんなことも含め、セーラー服だった生徒たちが40年後に再びこの舞台を経験できることを、娘と同じ年頃の若手メンバーとともに年代を超えて噛み締めたいと思っています。


40年後!凄いですね!

ちなみにSUONO CONBRIOさんの団名の由来を尋ねると、代表の松本さんからお答えいただきました。

 


文字通りSUONO(音)CONBRIO(活き活きとした)です。
わたくしが命名したのですが、メンバーの顔ぶれからどうしても優しいとか美しいとかが思い浮かばず、まさに快活に懸命に生きる女達をイメージしました。
今では『ブリオ』で長野市内の大抵の合唱行事と飲み屋では通用します。

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松本さん、ありがとうございました。
「飲み屋では通用」「快活」!なんとなくわかるような……(笑)。


SUONO CONBRIOさんの今回の演奏曲は
課題曲F4 いたいな(「愛のとき」から)(木島 始 詩、髙嶋みどり 曲)
自由曲「O vos omnes」(Levente Gyöngyösi 曲)
女声合唱のための「山のあなた」(カール・ブッセ 詩、上田真樹 曲)

ふたたび鳥谷越先生から選曲について。

 


こんな世の中になってしまった今、オーボスオムネスに出会いました。
自分だけが神の与える苦しみに悩んでいるのか、私を励ますものすら何もない と不条理な苦しみを歌ったオーボスオムネス。
しかし、その曲だけでは苦悩のみとなり、そこで終わらすことなく、「山のずっと向こうに、幸せの理想郷がある」と語り伝えるのだ というカール・ブッセの詩に、いや、その言葉の向こうに広がるもっと大きな世界を歌うことになる と上田真樹さんがコメントしている「山のあなた」を、二曲連続して、どうしても歌いたい、そんな世界観を持って、選曲した次第です。
また課題曲を含め、三曲、全く毛色の違う選曲としました。
ここまで、さまざまな曲に取り組んできた私たちの成果として発表できればと思っています。

わが団は、歳の差を活かし、音楽のみならず、さまざまに奥行きと深みのある経験をしたいと思っています。

3月27日は第二回演奏会を長野市ホクト文化ホールにて予定しています。
宜しくお願い致します。

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2019年3月3日の第1回演奏会時に撮影されたものということ。



鳥谷越先生ありがとうございました。
神秘的な音響から迫力ある表現まで幅広いジェンジェシ「O vos omnes」と、心を癒やすどこか切ない旋律が魅力の上田先生「山のあなた」という取り合わせ。
「山のあなた」は「幸い住むとひとのいう」から「ああ、われひとと尋めゆきて 涙さしぐみかえり来ぬ」(上田敏 訳)と続きますね。
年齢を重ねた今読むと「ひとと幸せを探しに行く」ことの大事さが染みるようで。
書かれる「涙」も失望だけから湧くものでは無いのでは?などと勝手に感じたりも。

YouTubeでSUONO CONBRIOさんの北信合唱連盟ミニコンサートの演奏を聴かせていただいたのですが、どの曲も彫りの深いドラマティックな表現と構成が、心を打つものでした。
表面的ではなく、人生を懸けて音と詩の作品世界に迫ろうとする姿勢。

>音楽のみならず、さまざまに奥行きと深みのある経験をしたいと思っています。

この岡山での全国大会がSUONO CONBRIOのみなさんと聴く私たちの、奥行きと深みのある経験になりますように。




(同声合唱部門のご紹介は今回で終了。
 明後日の混声合唱部門に続きます)