鬼ヶ城(熊野市)
提供:三重フォトギャラリー
お待たせいたしました。
観客賞の座談会、大学ユースの部をお届けします。
観客賞とは…?
10年前から当ブログで始めた観客賞。
各部門の、全団体を聴かれた方の投票で決定する賞です。
この観客賞の意義を説明しますと。
音楽のプロフェッショナルたる審査員による順位、賞の決定は、それぞれ真剣に誠実に演奏へ向かわれ出された結果であり、尊重すべきだと思います。
しかし、
「傷はあったが凄く良かった!」
「コンクールに向いてない選曲はわかるけど涙があふれた!」
…などという声を多く聞いていた自分は、
「観客による投票を行ったら 演奏への新しい価値観が生まれるのではないか?」と考えました。
さらに「この団体が銅賞だったから私は投票する!」…のような判官贔屓を無くすため、投票は審査結果前に締め切っています。
生演奏、そして今回も配信で聴かれた方からツイッター、メールで投票を募りました。
ご投票していただいたみなさま、感想を送っていただいたみなさまに深く感謝いたします。
終演後、有志4人は三重駅から近い、三重グルメを推す居酒屋へ。
私、文吾が司会となって座談会の開始です。
観客賞:大学ユース部門
第5位
神奈川県・関東支部代表
湘南ユースクワイア
https://twitter.com/syc_official_
(混声41名)
文吾(以下、文)
湘南ユースさんは初出場ですね。
A 課題曲G2、指揮の岩本達明先生が
良くコントロールしていました。
文 男声はけっこう
自分の意志を出していたかと。
フレーズや力感も良かったな。
B 第一声聴いて
「THE ユース団体!」みたいな。
若々しい印象のね。
ドイツ語を高校生が演奏すると
どうしても浅くなってしまうところを
やっぱり深めに発語できて、
さらにフレッシュさもあるのが
ユース団体なんだなぁって。
C ユース団体でG2に
取り組むのが偉いな。
ドイツ語は敬遠しがちだから。
文 志が高いですよね。
若い社会人でもなかなか
手を出せないから、ドイツ語。
A そう言っているうちに
どんどんトシを取って
ラテン語しかやらない……
文BC そうそう!(苦笑)
文 ドイツ語作品を始めるなら
若いうちに!ということですかね(笑)。
自由曲:三宅悠太「立ちつくす」。
これは素晴らしかった!
一票入れたのはこの演奏があったから!
まず男声が良かったですねー。
C そう! 良かったね!
B テノールが存在感あるのに邪魔していない。
文AC まさに!
A 混声合唱で一番気になり
難しいと思うのはテノールだから。
ベースみたいに
人数いればなんとかなるわけではない。
文 (笑)。湘南ユースさんの
ベースも良かったですよ~。
A 歌い手のセンスが一番現れるパート。
そういう意味で今回のテノールは
凄く優秀で熱心で良かったですね。
文 ひとり、熱くまわりを
引っ張っている方がいましたね!
B 全体に気持ちの入り方が深いなと。
歌詞を良く読み込んでいると思いました。
文 さらに自分たちの表現なんです。
詩の世界に自分を置き
「希望は?」と実際問いかけるような。
A 三宅先生の作品はサウンド、音響を
重視しているから
演奏もそれに注力しているものが多くて。
でも、今回の湘南ユースさんは
それだけじゃない、
サウンドを越えているところに
ぐっと来ましたね。
C よく高校生が演奏するけど
音響表現を演奏するのに精一杯で……。
ちょっと年を重ねた
湘南ユースさんが演奏することで
音響だけじゃない深みが出た。
文 わかる!
強い祈りの表出に涙が誘われました。
三宅先生の作品を聴いてここまで
心を動かされたのは初めてかも。
フォルテッシモの迫力、
ピアニッシモの繊細さ。
さらにピアノと世界を作っていました。
C うん、感情表現として
素晴らしいものを持っている
団体だと思いました。
文 初出場で金賞。
今後に期待が持てる団体ですね。
ツイッター、メールでの感想です。
コロナ禍の中
良くぞオーソドックスな
合唱美を守ってくれたと
感謝したい
声の美しさ、作品に対する愛情に感動しました
一人一人の音楽の発信力が光り、でもイメージはしっかり共有されている演奏でした。
岩本先生の指揮にパワーをたくさんいただきました。
シューマン、岩本ワールド全開でお洒落にキメてきた。
三宅作品も高校のコンクールとは一味違う演奏で「作品を」しっかり聴かせてくれた。
自由曲、壮大な演奏で詩を届けられる
高校母体のユース団体なのでサウンドが非常にすっきりとしていて音色が鮮明
自由曲は高校生の定番曲とはいえあそこまで深淵な表現をされるともう脱帽するしかない
湘南ユースの立ちつくすも九大の遠きものへもよく知ってる三宅作品だけど、(高校生がよく取り上げる曲だからこそ)大学ユースならではの曲への工夫が随所に感じられた。
大人の三宅作品ってこんな音鳴るんだ、と勉強になった。
両曲とも最後は超ロングトーンで終わるわけですが、2団体とも力押しに振り切らなかったの点とても好感を持てました
課題曲、よく整い真面目な演奏。団員から溢れる音楽が良い!
自由曲、はみ出るくらいの好戦的な演奏で課題曲と対照的。
「ハーモニーの第何音が、、」みたいなみみっちい世界から逸脱した叩きつけた叫び。記憶に残る演奏。
第4位
宮城県・東北支部代表
ジュニア&ユースコーラス“Raw-Ore”
https://twitter.com/raworechorus
(混声42名)
文 課題曲「草原の別れ」、
第一声からクセの無い
かつ明るく練り上げられた声でね。
B 若々しい発声が魅力でした。
C 合唱的というよりは
声楽的な発声だなと。
文 小学校の合唱部が元団体だから
発声も長く培われたものを感じました。
A 合唱団のサウンドというものが
確立されていましたね。
つい最近ツイッターで
集まったような団体には
出せないサウンド。
ユース団体なんだけど
そこに歴史を感じてしまう。
文 うんうん。
課題曲、
これは決して批判じゃないんだけど
「またあしたね!」
みたいな明るさがあって。
A 駅で別れて、
また次の日学校で会う、くらいの。
文 それくらいの感じ。
「駆けぬけて」なんて言葉にも
意志と未来を感じさせて
彼らの等身大の表現として
好感を持ちました。
自由曲:千原英喜
「Ⅱ.新しい風のように、爽やかな星雲のように」は?
B 「譜めくりさん、
あなたが朗読するの?!」
文AB (笑)。
C 最初は譜めくりの席に座っていたけど、
男声と同じ服装をしていて。
そして課題曲が終わったら前に出て!
文 そして朗読が終わったらマスクして、
譜めくり役に戻るというね(笑)。
バリトンで朗々と響かせた方が
合唱との差異は際立ったと思うけど……。
A もちろん言葉が
聞こえづらい箇所はあったけど、
彼なりに朗読の構成を
しっかり考えていましたよ。
「この言葉はしっかり聞かせる」
という意志があり
それは本当に素晴らしいなと。
C 若い方なのにそこまでちゃんと考え、
挑んでいるというのが伝わりました。
文 そうですね、このテキストは
若い教師である宮沢賢治の言葉。
学園ドラマだったら
「爽やか宮沢先生登場!」みたいな。
だからキャラクターとしては
テノールの彼みたいな声で
合ってるんでしょうね。
B 宮沢賢治も30代で亡くなっていて
この作品にはあまり重々しい朗読は
合わないだろうから良かったかと。
さらに言うなら
集中力が切れない団体だなと思って。
どこかで気が抜けてしまいそうだけど、
この団体はずーっと集中が切れなかった。
A 曲の構成としてはシンプルで、
男声ユニゾン、女声ユニゾン、
後半はほぼホモフォニックで細かい言葉。
メロディも繰り返しが多くて普通なら
「もういいよ!」と思うところを
Bさんが言われるように集中力で
最後まで持っていったところが凄い!
ツイッター、メールの感想です。
自由曲の選曲も良く、歌声も素晴らしかったです(*´꒳`*)
特に自由曲、素晴らしい詩に素晴らしい曲。
それを真摯に歌う様に感動しました。
歌い切る思いに繋がる演奏が衝撃的
明るい・あったかい響きが好きなんだなぁ、と実感🥴
言語に関わらず語り口が丁寧で好きだったなぁ🤭
女声の響きの高さ。
とにかくよくまとまっていて無理がない。
賢治の言葉が自然に入ってきます。
歌いっぷりのよさや作品への共感が自由曲で特に伝わってきた。
朗読とヴォカリーズからの合唱。
真っ直ぐな思い、美しいハーモニー
自由曲 曲の意図とは違うかもしれませんが💦
コロナ禍で一番影響を受けたのは多分いまの大学生世代で、でも、そういうものに私たちは負けない、進んでゆくというメッセージが込められているように感じて、ボロボロ泣いてしまいました。
今日この演奏を聴けて本当に良かったです。
上手いを超えて、ジンワリと涙が出そうになった。
課題曲の繊細さと自由曲後半の言葉の畳み掛けという表現の振り幅が良かった
課題曲と自由曲で前向きな別れという一貫したテーマ性が伝わってきたように思う
さわやか。サウンドが曲に合ってる。課題曲は若干子音の立て方が大袈裟で曲調からやや逸脱してる気もする。
自由曲、とても温かな気持ちになる好演。語りが素晴らしいが歌の音量バランスがたまに難しい。合唱団の音に合った作品。
課題曲G3は高校部門などで若い世代による演奏もたくさん聴いてきましたが、多くは楽譜の音符や指示を追うことに気が取られて機械的になっていたり、表現が恣意的になっていたりと不自然な音楽に陥りがちだったように思います。
しかしRaw-Oreは彼ら自身で詩を咀嚼しきちんと表現に結び付けていたように思いますし、優しい語感のディクションも素敵でした。
自由曲は、(課題曲にも共通するのですが)詩(言葉)と音楽が良いバランスで奏でられていたのがとても好印象でした。
この曲はメッセージ性が非常に強く、詩が強い語気で矢継ぎ早に語られていくもので、これを「音楽」として聴かせるのは一般団体でも至難の業だと思います。実際、Raw-Oreの演奏を東北支部大会で聴いた時も「音楽」より「言葉」に偏っていた印象を受けましたし、そもそもこの曲はコンクール向きではないのでは…と感じざるを得ませんでした。
それが、全国大会では「音楽」の部分にも磨きがかかり、“音楽を奏でること”と“詩をを伝えること”の両者がバランスよく同居した演奏、確かな「合唱音楽」として聴かせてくれる演奏だったと感じました。
技術的な要素一つ一つに注目しても魅力がたくさん詰まった演奏でしたが、それ以上に一つの音楽の総体としてとても素晴らしいものだったと思います。